日露戦争後、ロシアが日本に渡した満洲利権の租借期限は短いものであり、日本は巨額の投資を行なった「満洲」の権益確保に奔走せざるをえなくなる。しかも、辛亥革命によって中華民国が成立する中で、日本は条約の再締結を迫られた。第一次世界大戦でドイツに勝利してドイツの中国権益を手にした日本は、満洲の利権とそのドイツの利権の確保のため、中華民国へ「21カ条の要求」を行なう。しかし実はその「要求」という言葉も、中国側から頼まれて用いたものだった。それを後から中国側に暴露され、日本に批判の目が集まる形に仕向けられてしまうのだ。当時の日本外交は、善意や理想主義に突き動かされつつ、それを突き通す力が不足するという、政治的判断の拙さを露呈していた。挙句に、各国の思惑や国際情勢に翻弄されていくのである。第6話では、当時の日本が直面した現実と混迷に焦点を当て、後世の視点から安易に歴史を批判することの是非を問い直す。(全10話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●辛勝の日露戦争で得た満洲に全力投球する日本の真面目さ
―― 日露戦争の結果、かなり脆弱な満洲のいわゆるロシアが持っていた権益、1923年で切れる租借権。(つまり)遼東半島の租借権と(※1898年の露清条約で、ロシアが清国から得ていた旅順・大連の租借権が25年間で1923年が期限。南満洲鉄道は36年後の1934年に清国が有償で買い戻せて、80年後には無償返還する規定になっていた)……。
宮脇 だいたい「租借権」ですからね。それで買い戻せるようになっているけれど、「どうせ清朝に金などないし」などと、ロシアもものすごい荒っぽいことをしていたから、そもそもが。
だいたい、他人の国に鉄道を敷くということ自体がそもそも。
―― そうですね。
宮脇 でも、満洲だけではなくて、南方のほうはイギリスとかフランスとかドイツとか、みんな勝手に鉄道を敷いていたわけですよ。「お前ら、金無いだろうが」と。
―― そうですよね。あちらこちらで鉄道利権にはイギリスも含めて入ってきますからね。
宮脇 はい。当時のアジアは全部そうで、これは当時の習性で、でも日本は渋沢栄一さんが朝鮮半島に鉄道を敷いたから。
―― そうですね。
宮脇 でも、それはインフラを作ってやっている(ということで)、今から思えば、「他人の国に」とか言われるけれど、全部(日本が投資を)「していること」なのです。
だから、私は満洲のことで言いたいのは、「日本がこれした、あれした」というけれど、「確かにしたよ」と。でも、「その時に、では中国がどうだったかとか、アメリカが何をしたとか、比較して」と思うわけです。
―― そうですね。
宮脇 日本がしたことだけを挙げて、「こんなに悪かった、あんなに悪かった」というけれど、「他はもっとすごくない?」と。(そこは)現代と比較するなと(言いたい)。今から遡って批判するのは易しいけれど、当時になってみたら、何が一番良かったかとか、比較の対象を同じ時代の違う土地にするとか、それによって見方が全然違ってくると思います。
―― そうですね。その時、その状況に直面した日本人なり、満洲人なり、漢人なり、朝鮮人なりがどう判断をしたのかと。
宮脇 どうすれば良かったのかと。だから、(日本は)日露戦争にまず勝つと思ってなくて、辛勝、なんとか勝ったと。
そこで、ア...