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DATE/ 2018.07.12

パパの「産後うつ」が増えている理由

 イクメンはすっかり馴染みの言葉になりました。「育児に積極的に参加する男性の呼び名であり、イケメンを文字った造語です」なんてわざわざ説明をする必要はないでしょう。

 イクメンタレントやイクメンファッションも登場し、今なお冷めやらぬイクメンブームですが、実はなかには危機状態にあるイクメンがいることをご存知でしょうか。

まじめでやさしいイクメンは要注意

 最近、マタニティブルーならぬパタニティブルーやイクメンブルーとも言われるパパの「産後うつ」が問題視されています。男性が「産後うつ」だなんてにわかに信じられないかもしれませんが、これがなかなか深刻です。

 文春オンラインでは、「なぜ男の10人に1人が産後うつになるのか」という記事を報じています。記事によれば、女性と同じくらいの確率で男性も産後うつになり、真面目で優しい人ほど要注意とのこと。執筆者の医療ジャーナリスト・熊田梨恵さんは、長時間労働が社会問題化しているなかでイクメンブームを持ち上げ、根性論的に男性に育児を押しつけている政府を批判しています。

16.7%がイクメンブルーの可能性

 NHKは2016年11月に「おはよう日本」でイクメンブルーについて取り上げていました。仕事が忙しいなかで、妻からは家事や育児をもっとやってほしいと言われ、心身ともにギリギリな状態が続き、だからといって、妻に相談するわけにもいかず、苦しみを一人で抱え込んだすえにうつ状態になって、さらに休職することになってしまった男性が取り上げられました。

 番組の中で国立成育医療研究センターの竹原健二さんは、「父親になった男性のうち、子どもが生まれて3か月までの間にうつの傾向を示した人は16.7%」という調査結果を報告しています。

 また、イクメンブルーの予防法としては、苦しみを許由できるパパ友をつくることや夫婦でじっくりと話し合う時間をつくることを紹介していました。自治体による取り組み事例もあり、たとえば東京都北区では「パパ応援プロジェクト」として参加者同士のネットワーク作りを支援しています。

 ちなみに、先述したNHK「おはよう日本」の放送に対して、実は当時ネットでは賛否両論ありました。「…世の中のお母さんみんなそんなの当たり前に乗り越えてるけど。イクメン弱すぎ」という意見があった一方で、「イクメンブルー叩く人多いな…(中略)父親は本人が育児したくても社会・会社が許さないんだからストレスも溜まろうに」という意見などもありました。

イクメンブルーの予防法

 なかなか難しい問題ですが、イクメンブルーの根本的な解決は、やはり政府や会社が育児に理解ある社会を築いていくことです。しかし、いま実際に苦しんでいる人もいるわけで、社会が変わっていくのを待っていては間に合いません。

 イクメンブルーの予防として、個人でできることは、ともかく抱え込まないことです。夫婦で話し合って解決するか、それが困難であれば、第三者を頼りましょう。上記の北区の例のように自治体が支援しているケースもあります。

 男性は強がりな人が多いと言われています。もしそのせいでうつになるくらいなら、弱さを見せることはなかなか難しいことかと思いますが、大事な家族のため、そしてご自身のため、この機会に一度その強がりな性格を見直してみることも大事ですね。

<参考サイト>
・文春オンライン:なぜ男の10人に1人が「産後うつ」になるのか
http://bunshun.jp/articles/-/4247?page=3
・NHKニュース おはよう日本:広がる“イクメンブルー”
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2016/11/1130.html
・東京都北区:みんなで育児応援プロジェクト
https://www.city.kita.tokyo.jp/k-mirai/kosodate/shien/ikujioen.html
・Twitter:NHK『おはよう日本』「イクメンブルー」特集でイクメンに賛否両論
https://twitter.com/i/moments/803815576091049984
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