テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.01.26

たばこ1箱の値段の変遷…これから一体どうなる?

 「1月13日はピースの日」って、ご存じでしたか? 現役たばこの中で最長の歴史を持つピースは、1946年のこの日に発売されました。現在のピースや1箱1500円のピース・クラシックにも踏襲されているシンボルの「オリーブをくわえた金の鳩」は、1951年レイモンド・ローウィによってデザインされ、売上をほぼ6倍も伸ばしたという逸話のあるもの。そんな戦後のたばこの価格事情と、これからの動向を調べてみました。

たばこの値段は、今どうなっている?

 では、たばこは今、どんなものがいくらで売られているのでしょう。売上トップ3はセブンスター(460円)、メビウス・ワン・100's・ボックス(440円)、メビウス・スーパーライト(440円)。この3つは2012年度から毎年トップ3となっています。

 「メビウス」ファミリーは、2013年2月まで「マイルドセブン」の名だったもの。2017年現在では38種にも細分化されています。主な違いであるニコチン(タール)量は、メビウスの0.8mg(10mg)からメビウス・ワンの0.1mg(1mg)まで。同じ銘柄とは思えないバラエティで上位を占めています。

 続いては、旧3級品のわかば(290円)、エコー(280円)がトップ5入り。大幅値上げの2010年以来、売上を伸ばしており、2016年6月に外装が見直され値上げも実施されました。

 アメリカからの輸入品目では、マールボロ・ファミリー(460円)、ケント・ファミリー(410~420円)、ウィンストン・ファミリー(420円)などが人気。化学薬品不使用で「100%無添加」をうたうナチュラルアメリカンスピリット・ファミリー(480円)は、2015年にJTが米国以外での事業権を買収したことでも注目されます。

 その他、20位以内に入っていない国産銘柄は、ピース(230円~1150円)、ホープ(230円)、ピアニッシモ(230円~490円)、ハイライト(420円)、しんせい(280円)、ゴールデンバット(260円)など。沖縄県のみで発売されているのはウルマ(290円)、バイオレット(280円)が返還以来の銘柄です。

セブンスターは1箱100円から460円へ

 主な銘柄の価格変遷を見ると、以下の通り。

<銘柄:1959年・1970年・2009年・2016年>
ホープ:40円・50円・150円・230年(10本)
ピース:40円・50円・150円・230円(10本)
セブンスター:-・100円・300円・460円
ハイライト:-・80円・290円・420円

 セブンスターは1969年に定価100円で発売されましたが、その後は物価上昇により、1975年に150円、1980年に180円、1983年に200円、1986年に220円になりました。

 これ以後の値上げは、税の影響によるものです。まず、1997年には消費税5%を受けて230円に。翌年以降はたばこ税の増税により上昇が続きます。1998年250円、2003年280円、2006年300円、2010年440円。そして2014年度には消費税が5%から8%になったことを受け、460円の価格となっているのです。

 最近の値上げ攻勢の激しさを物語るのは、より古い銘柄。1959年から2009年までの50年間で3倍強のホープやピースの場合、それからわずか7年で1.5倍増になっています。1960年に発売されたハイライトは、70円から50年近くかけて約4倍、その後の7年で1.5倍弱。あわせて6倍近くの高値になったのです。

「たばこを吸う人」は、例外的少数なのか?

 JTが調査している全国たばこ喫煙者率調査を見ると、2016年の喫煙率は19.3%(男性29.7%、女性9.7%)。成人男性の場合、現在でも約1500万人がたばこを吸っている勘定になります。年齢別ピークは男女とも40歳代で、30歳代から50歳代の働き盛り、ないしストレス世代が、たばこの売上を支えているということでしょう。

 調査が始まったのは1965年ですが、日本の喫煙者率がピークだったのは1966(昭和41)年。男性83.7%、女性18.0%がたばこを嗜んでいました。それ以降は年々減少が続き、男性の喫煙者率が50%を割ったのは2002(平成14)年のことです。

これからどうなる、たばこの値段

 2016年4月に値上げがあったのですが、この時はメビウスが10円値上げ、わかば・エコー、ゴールデンバットなどが30円~50円値上げされています。たばこの値段が上がっていく(税率が高くなる)のは世界的な流れですから、今後も続くと予想されます。

 一方、消費税10%への引き上げが2019年10月に延期されたことを受けて、当初予定されていた、たばこ税の増税は見送りとなりました。もし仮に増税が行われ、1本あたり3円(1箱で60円)引き上げとなると、年間4500億円前後の税収増が見込めるとのこと。2016年秋、自民党からたばこ税増税によって一箱1000円以上に引き上げるよう申し入れがあったそうですが、2020年の東京五輪に向けて、全国2000万の喫煙派の肩身はより狭く、懐はより厳しくなりそうな見通しです。

<参考サイト>
・JTウェブサイト
https://www.jti.co.jp/index.html
・公益財団法人 健康・体力づくり事業財団(最新たばこ情報より)
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
・一般社団法人 日本たばこ協会(上位20銘柄推移)
http://www.tioj.or.jp/data/pdf/160422_03.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(3)電力の部分最適と全体最適

サステナブルな電力の供給と消費が求められる現代社会。太陽光発電のように電力の生産拠点が多元化する中で、それぞれの電力需給と国全体の電力需給のバランス調整が喫緊の課題となっている。実はヨーロッパなどの「再エネ比率...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/04/27
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

イーロン・マスクと対立…ChatGPT大ブームまでの紆余曲折

イーロン・マスクと対立…ChatGPT大ブームまでの紆余曲折

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(2)ChatGPT開発秘話

仕事をはじめさまざまな生活シーンで多様な役割をこなすチャットボットとなった「ChatGPT」。OpenAIが公開したこのサービスが世界中を驚かせるまでには、その創業に携わったサム・アルトマンとイーロン・マスクの対立など紆余曲...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/26
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
4

運も実力のうち!?小早川の寝返りを生んだ黒田長政の好運

運も実力のうち!?小早川の寝返りを生んだ黒田長政の好運

運と歴史~人は運で決まるか(2)運に恵まれるにはどうすればいいか

普通の人間の「運」については、どう考えればいいのだろうか。例えば、日本において消費文化が花開いた江戸時代、11代将軍・徳川家斉の治世には、庶民が「運がめぐってこない」ことを皮肉った狂詩があった。運には「めぐりあわ...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/04/25
山内昌之
東京大学名誉教授
5

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
釘貫亨
名古屋大学名誉教授