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DATE/ 2017.03.31

自分が「老害」と言われないようにする為には?

 近年よく耳にするようになった「老害」という言葉。新聞などのメディアでもしばしば話題となっているこの「老害」は、たとえば人の話に聞く耳を持たず「これだから若い者はダメだ」と言わんばかりの言動や、自分はまだまだ現役だと若い人の活躍をじゃまするような、高齢者による悪影響のことの総称です。

 突然怒りだしたり、クレーマーのような言いがかりをつけてくる高齢者からの被害も「老害」と言われていますが、この老害、組織の中で増加していくと、会社や社会を巻き込んだ大きな問題となる可能性も。今回はそんな「老害」を増やさないために対策に乗り出した企業の取り組みや、また自分自身が「老害」とならないために出来ること、そんな老害対策のヒントをご紹介します。

「老害」この言葉が浸透した背景とは。

 「老害」は数年前まであまり耳慣れない言葉でしたが、ここ2、3年の間に老人の理不尽な言動に対する被害報告も増え、社会に浸透していきました。最近生まれた新出語かと思いきや、すでに2008年に第六版が出版された広辞苑にも「ろうがい【老害】<老人による害の意>硬直した考え方の高齢者が指導的立場を占め、組織の活力が失われること。」と記載されています。

 この言葉が浸透してきた背景には老人の増加、少子高齢化社会の進行があります。なかでも2013年4月に施行された再雇用制度により、希望者には定年後も65歳までの再雇用を企業に義務付ける法律ができ、昔なら引退して老人と呼ばれていた人たちが組織に多く残るようになったことの影響も大きいでしょう。

 本来は、平均寿命が延び、まだまだ元気と働き続けることができるのは良いことです。しかし、一方で制度の制定から4年、高齢者が組織に多く残ることにより新入社員採用を見送ったり、ポストを高齢者に奪われた若手社員の不満など、企業の新陳代謝が滞りがちだという声もあります。そんな様々な軋轢が顕著になってきたことが「老害」という言葉や概念が定着した、大きな原因のひとつとも言えるのではないでしょうか。

企業の発想の転換が「老害」を防止する?

 今後ますます高齢者が増えることを鑑みて、高齢者の能力を活かす人事や、老害を生まないための対策に乗り出している企業も増えています。

 なかでも今注目されているのが「リバースメンタリング」という制度。これは新人に先輩社員が指導係(メンター)としてつく「メンタリング」の逆で、若手社員が上司や高齢の社員のメンターとなり助言や教育をするシステムのこと。一例を上げれば、ITに弱い高齢の社員が、デジタルな仕事を若い社員に任せるのではなく、教わることで能力をアップしようという取り組み。それにより、高齢の社員だけでなく、若手社員にも責任感が生まれ、組織としての活性化にも繋がるという考え方です。それなりの地位や肩書きを持つ/持っていた人は、今さら誰かに「教えてくれ」と頭を下げるのは簡単なことではありません。しかし制度があれば無視するわけにもいかず、新しいことを覚えたり出来ることが増え、喜びややり甲斐を感じるようにもなれるそう。立場を越えて若手社員とコミュニケーションすることは、パワハラ的な要素も含む「老害」を減らすことにも効果的だといいます。

 また、再雇用後はやる気を失い、まるで給料泥棒のような高齢社員たちも「老害」だと言われていますが、そもそも1度「定年した」という意識がやる気の喪失になるのではという意見も。それなら再雇用ではなく、定年自体を変えてしまおうという企業も。65歳定年制を取り入れることで、通常の社員として、60歳を越えても頑張ろうと士気を高めることに繋がると考えられています。

 どちらも、組織につきものの上下関係や定年制度に対して発想の転換をすることで、老害を防ぐだけでなく、高齢社員がいきいきと働ける環境作りをしています。組織全体を円滑にすることにも繋がっていきそうです。

「老害」と言われないために、今から意識したいこと。

 こんな企業の老害対策から、私たちが50代、60代となったときに自分自身が「老害」とならないための方法が少し見えてきます。

・年齢や立場の違う人とのコミュニケーションを増やす。
・新しいこと、知らなかったことに挑戦する。
・過去の実績や経験よりも、今の自分にできることを探す。
・自分を客観的に見つめる機会を作る。
・忌憚のない意見を言ってくれる人間関係を作る。

 まだまだ若いから自分には関係ない、と思うかも知れませんが、多くの「老害」は自分の老いを客観視できないところから始まるとも言われています。このようなことを時々意識しながら生活することで、体だけでなく心も健康な老いを迎えたいものですね。
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授