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富士通やファナックを生んだ古河グループ4人のキーマン
「世界を席巻していく力のある日本企業としてどこを思い浮かべるか」。こう質問を投げかけるのはMICG代表取締役の大上二三雄氏です。数々の企業改革に従事してきた大上氏自身の答えは、ソフトバンクでも楽天でもなく、富士通やファナックを生んだ古河グループでした。
かつ、親よりも子、子よりも孫、孫よりもひ孫、と代を重ねるごとに、より大きく元気に新しいビジネスをつくり出しているところが、日本企業らしい発展の仕方なのだと大上氏は評価します。この形こそが日本の企業・産業のあり方。つまり、個人が独立してベンチャー企業を起こす、人が企業をつくるアメリカスタイルとは異なり、独自の企業生態系の中で発展する日本ならではのものなのです。
まず、大上氏が取り上げたのは、富士通の通信部門の技術責任者だった尾見半左右氏です。尾見氏は当時、日本電気、沖電気とともに電電ファミリーと呼ばれ、電電公社の羽の下で安泰に事業を営んでいた富士通の中で、いち早く新ビジネスの方向性を見いだし、3C、つまりコミュニケーション、コンピューター、コントロールの概念を打ち出しました。敗戦の悔しさを原動力に、優れた富士通の技術を生かせる3つのCに着目したのです。
結果、富士通はコンピュータービジネスで大きく花開きますが、大上氏は、そのまま通信事業に入れ込んでしまっていたら、富士通の事業は停滞しただろうと言います。
社長自ら体当たりで勉強しているということが、富士通がそれほどまでにコンピューターとコントロール事業に力を注いでいくのだ、というメッセージになり、企業を急成長させました。大上氏は岡田氏のガッツを讃えつつ、当時の経営者には自ら戦略を描き、自ら動いて会社の将来に賭ける気持ちが、当然のごとく備わっていたのだと述懐します。
稲葉氏は苦汁をなめながらも、社長や経営陣に徹底的に鍛えられ、ガチガチの技術者から、儲かるビジネスでない限り商品ではないと考える、まさに経営者にふさわしい人物に変貌を遂げたそうです。技術畑一筋から、営業、財務など広範囲をマネージする経営者へ。稲葉氏は努力と柔軟性で、名物経営者としてその名を刻むこととなります。
10年かけて人を育てたら、リスクを恐れずさらなる飛躍を目指す。この器量のおかげで、ファナックは1972年に独立。その後、富士通がITバブル崩壊で危機を迎えた時、ファナックの株売却が富士通を支えたことをご存知の方も多いでしょう。ファナックは10年の赤字をじっと見守ってくれた富士通に、立派な親孝行を果たしたわけです。
経営トップにも中で働く人々にもダイナミズムがあった古河グループ。その歴史には、時代や分野を問わず範としたい日本の企業のあり方が凝縮されているようです。
日本独自の企業生態系を示す古河グループ
古河グループは、明治時代に古河機械金属、古河電気工業を創業。以来、富士電機、富士通、ファナックと5代にわたって新しいイノベーションを次々と生みだしてきました。5社いずれもが今も現役で元気な企業であるという点で、特筆に値すると言っていいでしょう。かつ、親よりも子、子よりも孫、孫よりもひ孫、と代を重ねるごとに、より大きく元気に新しいビジネスをつくり出しているところが、日本企業らしい発展の仕方なのだと大上氏は評価します。この形こそが日本の企業・産業のあり方。つまり、個人が独立してベンチャー企業を起こす、人が企業をつくるアメリカスタイルとは異なり、独自の企業生態系の中で発展する日本ならではのものなのです。
尾見半左右(おみはんぞう)の先見の明
グループの中でも、大上氏は富士通の素晴らしさ、そしてそこから分社化して優良企業に成長したファナックに着目し、この企業発展のプロセスに欠かせない4人のキーマンについて語ります。まず、大上氏が取り上げたのは、富士通の通信部門の技術責任者だった尾見半左右氏です。尾見氏は当時、日本電気、沖電気とともに電電ファミリーと呼ばれ、電電公社の羽の下で安泰に事業を営んでいた富士通の中で、いち早く新ビジネスの方向性を見いだし、3C、つまりコミュニケーション、コンピューター、コントロールの概念を打ち出しました。敗戦の悔しさを原動力に、優れた富士通の技術を生かせる3つのCに着目したのです。
結果、富士通はコンピュータービジネスで大きく花開きますが、大上氏は、そのまま通信事業に入れ込んでしまっていたら、富士通の事業は停滞しただろうと言います。
岡田完二郎のガッツ
2番目のキーマンは1959年に富士通社長に就任した岡田完二郎氏です。富士通の成長を見込んで社長に請われた岡田氏は当時、68歳。文系出身として経営者のキャリアを持つ岡田氏は、ここからその頃の最新技術であった半導体とトランジスタについて徹底的に勉強を開始しました。その勉強ぶりたるや、毎朝4時起きで2時間専門の本を読む、分からないことは、社内の研究者、若い社員にどんどん聞く、といった、なりふり構わぬ徹底したものだったそうです。社長自ら体当たりで勉強しているということが、富士通がそれほどまでにコンピューターとコントロール事業に力を注いでいくのだ、というメッセージになり、企業を急成長させました。大上氏は岡田氏のガッツを讃えつつ、当時の経営者には自ら戦略を描き、自ら動いて会社の将来に賭ける気持ちが、当然のごとく備わっていたのだと述懐します。
稲葉清右衛門の柔軟性
そして、3人目のキーマンとなるのが、富士通の計算制御部(ファナックの前身)の事業部長であった稲葉清右衛門氏。この部門はコントロールビジネスを手がけるべく、岡田社長のもと1959年に立ち上がったのですが、最初の10年間はずっと赤字だったとか。赤字を出し続ける部門は当然、社内で問題とされましたが、富士通は将来ものになるビジネスであるからと、この10年間を耐えました。稲葉氏は苦汁をなめながらも、社長や経営陣に徹底的に鍛えられ、ガチガチの技術者から、儲かるビジネスでない限り商品ではないと考える、まさに経営者にふさわしい人物に変貌を遂げたそうです。技術畑一筋から、営業、財務など広範囲をマネージする経営者へ。稲葉氏は努力と柔軟性で、名物経営者としてその名を刻むこととなります。
高羅芳光の器量
最後に大上氏が挙げたキーマンの名は、高羅芳光氏。富士通からのファナック分社化に尽力しました。ファナック分社化については、既に富士通会長であった岡田氏は猛反対をしました。しかし、社長であった高羅氏が、「コンピュータービジネスとコントロールビジネスはシナジーがないのだから、稲葉に自由にやらせた方がいい」と決断。岡田会長を出し抜いてまで、ファナックの分社化を推し進めました。10年かけて人を育てたら、リスクを恐れずさらなる飛躍を目指す。この器量のおかげで、ファナックは1972年に独立。その後、富士通がITバブル崩壊で危機を迎えた時、ファナックの株売却が富士通を支えたことをご存知の方も多いでしょう。ファナックは10年の赤字をじっと見守ってくれた富士通に、立派な親孝行を果たしたわけです。
経営トップにも中で働く人々にもダイナミズムがあった古河グループ。その歴史には、時代や分野を問わず範としたい日本の企業のあり方が凝縮されているようです。
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