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DATE/ 2017.07.06

自衛隊「自衛艦隊司令官」から学ぶ意思決定プロセス

 仕事でもプライベートでも、非常に重大な意思決定を迫られた経験をお持ちの方も多いでしょう。意思決定プロセスにおいて欠かせない要因とは?状況分析はどのように行っていくのが適切か?シビアな意思決定について、第49代海上自衛隊自衛艦隊司令官・山下万喜(かずき)氏のお話から学びます。

ミッドウェー海戦の敗因を検証する

 山下氏が例に挙げたのは、第二次世界大戦におけるミッドウェー海戦です。この時の日本海軍の敗因は、連合艦隊指揮官・南雲忠一の「攻撃機が装備していた魚雷を降ろし、爆弾に換装する」という判断にあったと、山下氏は言います。

 なぜ、南雲長官は誤った判断を下し、ミッドウェー海戦で大敗を喫することとなったのか。その敗因を分析するために、山下氏は日本連合艦隊の使命の確認、アメリカ・日本軍それぞれの方策の見積もり、そして方策の比較検討のうえ成されるべき意思決定、とプロセスをふんでいきます。

使命を確認し、敵・味方双方の方策を見積もる

 まず、山下氏は大本営海軍部が指令長官・南雲に出した命令から、作戦遂行の前提となる連合艦隊の使命を確認します。それは「陸軍が実施する攻略作戦を支援援護する」「敵艦隊を捕捉撃滅する」という2つの任務でした。

 ここで、山下氏は日本軍、アメリカ軍それぞれの方策を見積もります。日本軍の方策は、次の2つ。

1.攻撃機の魚雷を爆弾に換装する
2.魚雷をそのままにして、第一次攻撃隊が戻った後、第二次攻撃を実施

 一方のアメリカ軍の方策として考えられるのは、以下の2つ。

3.ミッドウェー基地の航空機による反撃
4.機動部隊による攻撃

 次に、1・2の日本軍の方策と3・4のアメリカ軍の方策を一つずつ対抗させ、得られる結果を想定します。

 3の敵が基地の航空兵力で反撃してくる場合、1の爆弾に換装の方策をとることで、倍の攻撃機で敵の基地を攻撃することができます。4の敵機動部隊が出現した場合、1の方策では魚雷がないため、敵に対抗できないこととなります。

 では、日本軍が2の魚雷を選択した場合はどうなるでしょう。敵が航空兵力で反撃してきたら、日本の第一次攻撃隊を繰り返し出撃させることで対応ができます。4の敵の機動部隊が攻撃してきた場合も、魚雷の攻撃機で直ちに対応が可能ということになります。

方策の比較検討を経て意思決定へ

 いよいよ、意思決定につながるステップである方策の比較検討に入ります。山下氏は魚雷を爆弾に換装するか否かについて、スィータビリティー(方策がどの程度役に立つか)・フィージビリティー(実施できるか)・アクセプタビリティー(実施の際に生じる負担や損失に耐えられるか)の3点から検討します。

 スィータビリティーにおいては、爆弾換装は、敵基地攻撃には効果的だが、敵艦隊撃滅には対応不可。魚雷はいずれにも対応可能。フィージビリティーについては、爆弾、魚雷のいずれも実施可能であるが、爆弾換装の場合は佐合が煩雑になる。アクセプタビリティーにおいては、爆弾に換装すると、敵機動部隊出現に対応できないというリスクが生じる。

 以上のようなプロセスを経て、山下氏は「魚雷のままにするのが最善の方策」という判断を下しました。

なぜ、南雲長官は判断を誤ったのか?

 しかし、実際には南雲長官は爆弾に換装すると決断し、大敗という結果を招きました。指揮官として客観的に状況を分析し意思決定プロセスを運んだはずなのに、なぜこのような判断を下してしまったのか?

 山下氏は、敗因の根本には正確な情報の欠如があったと結論します。南雲長官は、敵機動部隊に関する十分な情報を得られないまま、付近にはいないと判断して魚雷から爆弾への換装を命令したのです。このとき、日本軍が適正な情報を収拾したうえで、意思決定に運んでいれば、その後の日本戦史は変わっていたかもしれません。

 私たちも人生のいつ、どこで、重大な決定を迫られるか分かりません。自衛隊艦隊司令官仕込みの意思決定プロセスの運び方を、ぜひ参考になさってください。
(10MTV編集部)

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