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免疫力UPにがん予防、味噌の力とは?
日本人の死因トップの座に定着してしまった感のあるがんですが、最近、ある日本の伝統食品ががん予防に非常に有効であると注目を浴びているのです。実は、どの家庭の台所にも必ずある「味噌」が免疫力を高め、がんの予防に効果があること、その他の点でも非常に健康によい食品であることが、医学的に証明されているのです。
こうした味噌の力を昔の日本人は科学的には知らずとも、十二分に感じてはいたのでしょう。なんと奈良時代から味噌は優れた保存料、美味しい調味料として存在していたというのですから驚きです。
加えて、広島大学原爆放射線医科学研究所の名誉教授・渡邊敦光氏は、味噌が体内に入った放射能を減らす効果を持つことを明らかにし、さらなる研究を進めています。まさに味噌は美味しい「薬」になり得るのですね。
味噌のこのような効果は、もちろん「発酵」の力によるもの。味噌だけでなく、納豆に漬物、お酢などの発酵食品を日常的に無理なく摂取できるところに和食の魅力、底力があるといってもよいでしょう。近年、「飲む点滴」と注目されている甘酒も伝統の発酵食品ですね。
ちなみに、料理研究家の土井善治氏は伝統的な「一汁三菜」を現代の食スタイルに合わせた「一汁一菜」を提案しています。この場合の汁物はもちろん味噌汁。トマトやかぼちゃといった緑黄色野菜、ベーコンやソーセージなども自在に入れた「菜」を兼ねた具だくさん味噌汁にしましょう、ということです。このスタイルなら「一汁三菜なんて、毎日、三つのおかずを作るのは無理」という方も、無理なく続けることができるでしょう。こうして野菜も肉も、和洋いずれの食材も、おおらかに受け入れてまとめあげるのも、味噌の魅力かもしれません。
病気は治療よりもまず予防からと言います。おいしくて効果てきめんの味噌の力を、もっと気軽に取り入れてみませんか。
日本人の活力源・味噌の歴史は奈良時代から
食文化評論家として発酵商品をこよなく愛する東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏によれば、味噌はもともと肉食の習慣のない日本人の食生活を長いこと支えてきました。味噌の原料は優れたたんぱく質である大豆。その大豆たんぱくが麹菌により分解されアミノ酸になります。アミノ酸は体内で活力源になりますから、一日の活動の前に朝一椀の味噌汁を飲むという日本人の典型的な食スタイルは非常に理にかなっていたわけです。こうした味噌の力を昔の日本人は科学的には知らずとも、十二分に感じてはいたのでしょう。なんと奈良時代から味噌は優れた保存料、美味しい調味料として存在していたというのですから驚きです。
すぐれた免疫力効果で消化器系のがん予防に有効
さらに近年では、味噌が持つ医学的効果に関するさまざまな研究が行われています。たとえば、国立がん研究センターの免疫学の権威である故・平山雄氏は、味噌汁を毎日飲んでいる人は、消化器系のがん、特に胃がんや食道がんにかかる割合が低いことを突きとめました。味噌が免疫力アップに大きく貢献しているのです。この研究はその後、各大学医学部でも引き継がれ実証されています。加えて、広島大学原爆放射線医科学研究所の名誉教授・渡邊敦光氏は、味噌が体内に入った放射能を減らす効果を持つことを明らかにし、さらなる研究を進めています。まさに味噌は美味しい「薬」になり得るのですね。
味噌は減塩にも配慮したすぐれた発酵食品
味噌が体にいいことは分かっているけれど塩分が気になる、という方も多いでしょう。ひと頃、「和食はヘルシーだけれど塩分が多い」と言われ、その塩分過多の張本人としてやり玉に挙げられたのが味噌汁でした。しかし、今は減塩に対する意識が浸透しており、必要以上にしょっぱい味噌汁にしないようにという健康指導も、各自治体で行われているようです。何より、味噌自体が減塩で作られているので、小泉氏は「免疫力をアップするためにも、どんどん味噌汁を飲むといい」と熱弁をふるっています。味噌のこのような効果は、もちろん「発酵」の力によるもの。味噌だけでなく、納豆に漬物、お酢などの発酵食品を日常的に無理なく摂取できるところに和食の魅力、底力があるといってもよいでしょう。近年、「飲む点滴」と注目されている甘酒も伝統の発酵食品ですね。
ライフスタイルに合った「一汁」を食卓の真ん中に!
2013年12月に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。小泉氏はそのための国の委員だったそうですが、小泉氏によると、そもそも和食は「一汁三菜」を基本の形としているといいます。ごはんと一椀の汁物に三つのおかずで和食の基本は成り立っているということです。三菜のうち一つは「香の物(漬物)」とされますから、汁物を味噌汁にすれば自ずと発酵食品でいろどられた豊かで健康にもいい献立になるということです。ちなみに、料理研究家の土井善治氏は伝統的な「一汁三菜」を現代の食スタイルに合わせた「一汁一菜」を提案しています。この場合の汁物はもちろん味噌汁。トマトやかぼちゃといった緑黄色野菜、ベーコンやソーセージなども自在に入れた「菜」を兼ねた具だくさん味噌汁にしましょう、ということです。このスタイルなら「一汁三菜なんて、毎日、三つのおかずを作るのは無理」という方も、無理なく続けることができるでしょう。こうして野菜も肉も、和洋いずれの食材も、おおらかに受け入れてまとめあげるのも、味噌の魅力かもしれません。
病気は治療よりもまず予防からと言います。おいしくて効果てきめんの味噌の力を、もっと気軽に取り入れてみませんか。
<参考文献>
『一汁一菜でよいという提案』(土井善晴著、グラフィック社)
『一汁一菜でよいという提案』(土井善晴著、グラフィック社)
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