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タバコの最大のリスクは「ガン」ではなく「活性酸素」
とっておきの禁煙法-「体の錆び」について知る
東京都が2017年9月、飲食店や公共施設などの屋内での喫煙を原則禁止とする条例を発表しました。今や飲食店の分煙、禁煙措置は珍しいことではなく、飛行機も全面禁煙が主流、オフィスでも喫煙室以外でのタバコはご法度というところが多いのではないでしょうか。とは言え、健康のために何度もタバコを止めようとはしてもうまくいかず、「趣味は禁煙」と開き直る人も大勢いそうですね。今回は、そんな「分かっちゃいるけど止められない」方たちのために、順天堂大学医学部大学院医学研究科教授・堀江重郎氏による、とっておきの禁煙法をお伝えします。といっても、特殊な薬や器具を使うのではなく、「体の錆び」について学ぼうというものです。
諸悪の根源は活性酸素
私たちが呼吸によって取り入れる酸素は化学的に反応性が低いのですが、反応性の高い「活性酸素」というものがあり、これが体内で発生すると、非常にやっかいなのです。反応性が高いというのは、体の中のタンパク質やDNA、脂肪といった分子、細胞を損傷して錆びさせてしまうということ。たとえば、DNA異常は細胞のがん化に深く関係しています。このような活性酸素が悪さを働くことを「酸化ストレス」といいます。この活性酸素は、食事をしてエネルギーを作り出すときに、同時に発生しているのですが、人の体は、その活性酸素をちゃんと分解する仕組みを生まれながらに持っています。赤ちゃんなどは瞬時にこの活性酸素を分解してしまうそうですが、悲しいことに加齢とともにこの分解速度はだんだんと落ちてきてしまいます。結果、体内に蓄積した活性酸素が、体を徐々に錆びつかせていくわけです。
喫煙で酸化ストレスが増える
この活性酸素による酸化ストレスが増える原因は、加齢のほかに、高血糖、肥満、高血圧、メンタル面のストレス、(男性の場合は)男性ホルモンの減少、などいくつかあるのですが、これらのどれよりも活性酸素を増やしてしまうのが喫煙だ、と堀江氏は言います。活性酸素による酸化ストレスが、肺などの臓器だけでなく血管や脳神経をボロボロと錆びで侵していく様子を思い浮かべてみてください。そうです。タバコを吸うことで脳神経が錆びて、うつや認知症になりやすくなるとも言われているのです。やみくもに「タバコは健康の害になるので、禁煙しましょう」と言われるより、「タバコを吸うと活性酸素が大量に発生して、体を中から錆びつかせてしまう」とイメージする方が、よほど禁煙効果はあるのではないでしょうか。
体の錆びを増やさないために
十分に「体の錆び」の恐さを認識したら、次に酸化ストレスを減らす方法も学んでおきましょう。一つは小食を心がけること。過度なダイエット、食事制限はよくありませんが、やはり昔からよく言われる「腹八分目」が、酸化ストレス防止にも効果的なようです。堀江氏によれば、アルコールの分解酵素には活性酸素を分解する働きのあるものもあるそうで、適度にお酒を飲める人なら、この酵素による効果も期待できるとのこと。けれども、過度な飲酒は逆に酸化ストレスの原因にもなるので、くれぐれも飲み過ぎに注意してください。酸化ストレスを抑えるもう一つの方法は、抗酸化力のある食べ物を多く摂取すること。抗酸化力のある食べ物の代表格は果物や野菜です。バナナやリンゴ、みかんなどビタミン、ミネラルの豊富な季節の果物に、カボチャ、ニンジンといった、見るからに栄養のありそうな緑黄色野菜だけでなく、キャベツ、ダイコン、ハクサイなどの淡色野菜も抗酸化力が豊富です。おもしろいのは、鳥ガ好んで食べるブルーベリーなどベリー類もよいということ。鳥は小さな体で羽を動かし空を飛ぶわけですから、その分のエネルギーとともに莫大な活性酸素を発生させています。鳥は本能的に自分の体を守る方法を知っているのですね。
こうしてみると、特別な食材を摂る必要はなく、要はバランスのよい食事をほどほどにすればよいようです。自然の恵みにも目をむけて、無理なく錆びない体を手に入れてください。なお、こうした食事をしてさえいれば、タバコをいくら吸っても構わないということではないので、その点は誤解のなきように。
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