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今も独身「貴族」と言えるのか?独身のお金事情
「独身貴族」は、「お金・時間が自由に使える独身者」を揶揄する言葉として1977年以降に広まった、と『日本語俗語辞書』には記されています。さて、この言葉、40年後の現在にも当てはまるのでしょうか。
独身率を上げるもう一つの要因として、離婚の増加もあります。平成28年度の厚生労働省の調査結果では、日本の離婚率は1.73%、2分26秒に1組が離婚している計算です(婚姻率は5%、51秒に1組成立)。
一度も結婚したことのない人、結婚はしたけれど生別・死別してしまった人を合わせ、「単身世帯」が増えています。その分布を見ると、女性60歳以上30.8%、男性35~59歳19.2%、男性35歳未満16.8%、男性60歳以上12.2%、女性35~59歳10.6%、女性35歳未満10.4%となっています。男性は全年代満遍なく、女性は60歳を超えると「一人暮らし」のケースが激増するようです。
独身というと、ついつい35歳未満男性を念頭においてしまいますが、実態はこれほど多様なのですね。
まず、収入から確認しましょう。二人以上の世帯では過去1年間の手取り収入(税引き後)は、平均値が487万円、中央値が400万円になります。同じ期間の単身世帯では、過去1年間の手取り収入(税引き後)は、平均値が269万円、中央値が225万円です。実態に近いといわれる中央値で比較すると、単身世帯の収入は二人以上世帯の56%ほど。これで「貴族」な生活は満喫できるのでしょうか。
「二人以上世帯」のプロフィールとして、世帯人数は平均3.1人、世帯主の平均年齢は57歳となっています。一方「単身世帯」のプロフィールは、平均年齢44歳、男性6割、女性4割の比率です。
もしも単純に世帯人員の人員で収入を頭割りするならば、二人以上世帯では129万円となり、単身者の57.3%程度しか確保できません。どちらに転んでも厳しいのが、現状のような気がしてきました。
金融資産の保有額では、単身者は平均値942万円、中央値32万円で、うち預貯金が47.3%をしめます。平均値と中央値に大きな差があるのは、単身者の46.4%が「金融資産ゼロ」と答えているからです。二人以上世帯ではどうかというと、金融資産の平均値は1,151万円、中央値は380万円。「金融資産ゼロ」と答えた世帯は31.2%です。
単身者の場合、金融資産1億円以上と答えた人が30人いて、平均値を釣り上げています。このような人はまさに「独身貴族」を謳歌しているのでしょうが、一方で半数は貯金ナシと二極化の実態が見えるようです。
さらに単身者の目立つ特徴は、「借入金がない・少ない」場合が多いこと。二人以上世帯では約4割が住宅ローンなどの借入金を抱えていますが、単身者で借入金のある人は15.8%、平均額も81万円と世帯持ちの1,151万円とは二桁違います。「借金がなく身軽」という点で、家庭持ちが独身者をうらやむのは、今も同じだと言えそうですね。
老後の生活を「心配である」と回答した数字を見ると、単身者が約85%、二人以上世帯でも81.5%がそう答えています。心配な理由はどちらも「十分な金融資産がない」「年金や保険が十分でない」から。さらに「生活設計」については、「現在生活設計を立てていないし、今後も立てるつもりはない」単身者は28.8%、世帯持ちは22.9%でした。
ほんのわずかな差ではありますが、「生活設計なんて」と笑い飛ばす単身者の姿勢が、世帯持ちからすると精神的な貴族性と見える可能性は否定できません。
なぜ、いつから。「独身」者たちの実態を知る
40年前と比べて、「独身」の割合は増えました。2015年の国勢調査では、50歳まで一度も結婚したことがない人の割合を示す「生涯未婚率」が、男性23.3%、女性14.1%に上り、過去最高を更新しました。1977年時点と比べると、男性は10倍、女性は3倍以上の伸びを示しています。「男性の約4人に1人が一生独身?」と、さまざまなメディアでも紹介されましたが、その生活実態はどうなのでしょう。独身率を上げるもう一つの要因として、離婚の増加もあります。平成28年度の厚生労働省の調査結果では、日本の離婚率は1.73%、2分26秒に1組が離婚している計算です(婚姻率は5%、51秒に1組成立)。
一度も結婚したことのない人、結婚はしたけれど生別・死別してしまった人を合わせ、「単身世帯」が増えています。その分布を見ると、女性60歳以上30.8%、男性35~59歳19.2%、男性35歳未満16.8%、男性60歳以上12.2%、女性35~59歳10.6%、女性35歳未満10.4%となっています。男性は全年代満遍なく、女性は60歳を超えると「一人暮らし」のケースが激増するようです。
独身というと、ついつい35歳未満男性を念頭においてしまいますが、実態はこれほど多様なのですね。
収入を一人で好きに使えるか、頭割りにするか
金融に関する啓蒙活動を行なう金融広報中央委員会(事務局は日本銀行情報サービス局内)では、毎年「家計の金融行動に関する世論調査」を実施しています。データは大きく「二人以上の世帯」と「単身世帯」に分けられているので、独身者(の中でも一人暮らしの人)のお金使いの傾向を知ることができます(単身世帯は全国2500人、二人以上の世帯は全国8000世帯のインターネット・モニターから調べたもので、調査期間はいずれも2017年6月23日~7月5日)。まず、収入から確認しましょう。二人以上の世帯では過去1年間の手取り収入(税引き後)は、平均値が487万円、中央値が400万円になります。同じ期間の単身世帯では、過去1年間の手取り収入(税引き後)は、平均値が269万円、中央値が225万円です。実態に近いといわれる中央値で比較すると、単身世帯の収入は二人以上世帯の56%ほど。これで「貴族」な生活は満喫できるのでしょうか。
「二人以上世帯」のプロフィールとして、世帯人数は平均3.1人、世帯主の平均年齢は57歳となっています。一方「単身世帯」のプロフィールは、平均年齢44歳、男性6割、女性4割の比率です。
もしも単純に世帯人員の人員で収入を頭割りするならば、二人以上世帯では129万円となり、単身者の57.3%程度しか確保できません。どちらに転んでも厳しいのが、現状のような気がしてきました。
「預貯金ゼロ」でも、それがどうした?
「家計の金融行動に関する世論調査」では、金融資産の保有額、借入金の額、家計運営の評価など、さまざまな質問を投げています。金融資産の保有額では、単身者は平均値942万円、中央値32万円で、うち預貯金が47.3%をしめます。平均値と中央値に大きな差があるのは、単身者の46.4%が「金融資産ゼロ」と答えているからです。二人以上世帯ではどうかというと、金融資産の平均値は1,151万円、中央値は380万円。「金融資産ゼロ」と答えた世帯は31.2%です。
単身者の場合、金融資産1億円以上と答えた人が30人いて、平均値を釣り上げています。このような人はまさに「独身貴族」を謳歌しているのでしょうが、一方で半数は貯金ナシと二極化の実態が見えるようです。
さらに単身者の目立つ特徴は、「借入金がない・少ない」場合が多いこと。二人以上世帯では約4割が住宅ローンなどの借入金を抱えていますが、単身者で借入金のある人は15.8%、平均額も81万円と世帯持ちの1,151万円とは二桁違います。「借金がなく身軽」という点で、家庭持ちが独身者をうらやむのは、今も同じだと言えそうですね。
老後の生活を「心配である」と回答した数字を見ると、単身者が約85%、二人以上世帯でも81.5%がそう答えています。心配な理由はどちらも「十分な金融資産がない」「年金や保険が十分でない」から。さらに「生活設計」については、「現在生活設計を立てていないし、今後も立てるつもりはない」単身者は28.8%、世帯持ちは22.9%でした。
ほんのわずかな差ではありますが、「生活設計なんて」と笑い飛ばす単身者の姿勢が、世帯持ちからすると精神的な貴族性と見える可能性は否定できません。
<参考サイト>
・知るぽると:家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]平成29年調査結果
https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/tanshin/2017/
・知るぽると:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]平成29年調査結果
https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2017/
・知るぽると:家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]平成29年調査結果
https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/tanshin/2017/
・知るぽると:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]平成29年調査結果
https://www.shiruporuto.jp/public/data/survey/yoron/futari/2017/
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