社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
タコは犬よりも賢い?その驚きの知能とは
犬と同程度の脳神経細胞を持つタコ
過去の話ではありますが、スペインが初の優勝を飾った2010年のFIFAワールドカップ南アフリカ大会、この試合結果の予想を見事的中させたタコがいたことを覚えていますか。そのタコとは、ドイツのシーライフ水族館で飼育されていたパウルくん。スペイン優勝だけでなく、ドイツ戦の勝敗予想も100%的中させて話題になりましたよね。パウルくんは勝敗予想に使用された国旗を識別していたと考えられており、タコに予言能力があるかは不明ながら、高い知能があることはわかっています。実はタコには約5億個もの神経細胞が備わっていて、これは犬と同程度(ご参考までに、人間は約1千億個)。無脊椎動物の中では最も賢いといわれます。
ただし、だからといって犬と同じような賢さを示すわけでもないのが興味深いところ。タコは無脊椎動物の頭足類に分類され、犬や人間が分類される脊椎動物の哺乳類とはまったく違う生物です。からだのつくりが大きく異なっており、タコの脳はクルミほどの大きさしかないため、神経細胞も3分の1程度しか割り振られていません。3分の2の神経細胞は、8本の腕に割り振られているのです。つまり腕それぞれに小さな脳があり、本来の脳はそのまとめ役といえるでしょう。
人間は脳に指令を集約しているため、左右の手で違う作業をするのは難しいですが、タコは腕それぞれが指令を出せるので、食料となる貝を割りながら別の獲物を探ることも普通にできるのです。
こんなこともできるタコ
高い知能と複雑な神経系を持つタコは、このほかにも多くの驚きの行動を取ります。それはどんなものか、見てみましょう。道具を使って身を守る:貝やココナツの殻などの陰に隠れて、外敵から身を守ります。ときには、この“盾”を持って移動することもあります。道具を使うといえば、サルの仲間が食料を得るために木の枝などを使うことが知られていますが、道具を防具として役立てる動物はとても珍しいです。
閉じこめられても脱出する:ビンの中に閉じこめられても、腕を駆使してフタを開け、脱出します。自分が“閉じこめられている”状況を理解できるので、水族館の広い水槽に入れられても逃げ出してしまいます。しかも、誰も見ていないかきちんと確認してから脱走するそうです。
人間の顔を識別する:個体を識別する能力があり、人間の顔も見分けられます。同じ服を着たふたりの人間を使った実験で、ひとりにずっと食料を与えさせ、もうひとりにずっといやがらせをさせたところ、いやがらせをする人間にだけ水を吹きかけて威嚇するようになったのです。
家を装飾する:石や貝殻など、実用性のないもので住居を飾り立てます。さらに、その住居は何世代にもわたって受け継がれることもあるとか。タコそれぞれにセンスがあるらしく、実用性がなくても気に入った“宝物”をコレクションとして溜めこむこともあります。
このほかにもタコは鏡に映った自分を自分と認識する「鏡像自己認知能力」があり、夢を見るとも報告されています。
なぜタコの神経細胞はここまで発達したのか
実は、鏡像自己認知能力は人間のほかにチンパンジーやイルカなど、わずかな脊椎動物にしか備わっていない高度な知能です。その点からタコは哺乳類に匹敵する賢さを持っており、部分的には犬より賢いともいえます。その一方で寿命が2年ほどしかなく、神経系が発達した生物にしては短命な点も特徴です。本来、発達した神経系は複雑な社会生活を営むために必要とされますが、タコは短命なこともあり、さほど複雑で活発な社会を構築することはありません。それなのになぜ、こんなに高い知能を発揮できるほどの神経細胞を持つのかはまだ解明されていませんが、タコのからだのつくりに関係しているのではないかと考えられています。
まずなんといっても、タコの腕は8本もあるため、ひとつの脳にコントロールを任せると制御不能になる可能性が高いです。そこでそれぞれの腕にも“脳”を置いて独自の指示を出せるようにした結果、神経系が複雑になったと推測できます。
またタコは体表の色や質感を自在に変化させる擬態能力に優れ、砂のようにも金属のようにも見せられるほか、筋肉をでこぼこの形状にして岩のように見せることもできます。この複雑な能力を操るために、神経系が発達したという推測もあります。
人間では意思疎通が難しいタコですが、こっそり脱走したり家を飾ったりするところには親近感が持てますよね。将来、タコと会話できる技術が開発されたら、哺乳類よりも気が合う仲間になってくれるかもしれません。
<参考サイト>
・ダイヤモンド・オンライン タコは驚くほど賢い!知性の秘密はイヌ並みの神経細胞にあり
https://diamond.jp/articles/-/189309
・カラパイア ただものじゃない。タコのハイスペックさがわかる22の事実
http://karapaia.com/archives/52179869.html
・日本気象協会 海の賢者、タコの知性と能力がすごすぎる!8月8日は「タコの日」
https://tenki.jp/suppl/kous4/2020/08/08/29938.html
・ダイヤモンド・オンライン タコは驚くほど賢い!知性の秘密はイヌ並みの神経細胞にあり
https://diamond.jp/articles/-/189309
・カラパイア ただものじゃない。タコのハイスペックさがわかる22の事実
http://karapaia.com/archives/52179869.html
・日本気象協会 海の賢者、タコの知性と能力がすごすぎる!8月8日は「タコの日」
https://tenki.jp/suppl/kous4/2020/08/08/29938.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,700本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
平和のための「国家連合」。このアイデアの源はサン=ピエールなのだが、現在ではカントの著作『永遠平和のために』が起源だともてはやされることが多い。その理由としては、「なぜ国家連合が必要なのか」「そもそもなぜ平和が...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/22
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
2025年8月、米露、米ウクライナ、EUの首脳会談が相次いで実現した。その成果だが、中でもロシアにとって大成功と呼べるものになった。ディール至上主義のトランプ政権を手玉に取ったロシアが狙う「ベルト要塞」とは何か。事実上...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/12/21
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
「逆境とは何に逆らうことなのか」「人はそもそも逆境でしか思考しないのではないか」――哲学者鼎談のテーマは「逆境に対峙する哲学」だったが、冒頭からまさに根源的な問いが続いていく。ヨーロッパ近世、ヨーロッパ現代、日本...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/19
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
日進月歩の進化を遂げている生成AIは、私たちの生活や仕事の欠かせないパートナーになりつつある。企業における生成AI技術の利用に焦点をあてる今シリーズ。まずは世界的な生成AIの導入事情から、日本の現在地を確認しよう。(...
収録日:2024/11/05
追加日:2024/12/24


