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DATE/ 2021.05.17

学校を元気にする!GIGAスクール構想とICTシステム活用術

GIGAスクール構想の2つのポイント

 「GIGAスクール構想」という文部科学省の取り組みをご存知でしょうか。「GIGA」とは「Global and Innovation Gateway for All」を略語です。日本語訳すると「すべての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉」という意味。昨今のICT技術の社会への浸透にともない、また、10年ぶりの学習指導要領の改訂を受けて、パソコンやタブレットなどICT端末をちゃんと学校で活用できるようにしようという取り組みです。

 GIGAスクール構想の狙いは以下の2つのポイントに集約することができます。これは文科省のパンフレットに記されている文章です。

・1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する
・これまでの我が国の教育実践と最先端のベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す

 この2つの文章をさらに要約すると、「1人1台端末を活用して、これまでの教育をよりいっそう充実させていきましょう」というメッセージと読み取ることができます。

『学校を元気にする次世代学校ICTシステム活用術』からGIGAスクール構想を理解する

 GIGAスクール構想の内容はだいたい掴めてきたと思いますが、あらためて問いたいのは、なぜGIGAスクール構想は必要なのかということです。この「なぜ」がきちんと理解されないと、なかなか現場には浸透していかないでしょう。

 そこでぜひ読んでおきたいのが、GIGAスクール構想のガイドブックともいえる『学校を元気にする次世代学校ICTシステム活用術~情報機器を眠らせない全校体制の進め方~』(玉置崇著、EDUCOM)という、今年(2021年)4月に発刊された一冊です。この本をもとにして、ICT教育の「なぜ」について考えていきたいと思います。

 ちなみに著者の玉置崇氏は現在、岐阜聖徳学園大学の教授。愛知県公立小中学校教諭、愛知教育大学附属名古屋中学校教官、教頭、校長を務められ、また文部科学省「統合型校務支援システム導入実証研究事業委員長」「新時代の学びにおける先端技術導入実証事業委員」などを歴任した、ICT教育を熟知するこの道のプロフェッショナルです。

なぜGIGAスクール構想なのか~ICT教育後進国からの脱却に向けて~

 本書の第一章には、まさに「なぜGIGAスクール構想なのか」という見出しが立っています。それによると文科省は次のような理由を挙げています。

・学校のICT環境整備状況は脆弱かつ危機的な状況
・学校におけるICT利活用は世界から後塵を拝している状況
・子供の学校外でのICT利用は学習外に比重

 という3つの理由から学校のICT整備の必要性を訴えています。例えば2番目について補足すると、実は日本はOECD加盟国の中で学校の授業におけるデジタル機器の使用時間が最下位(2018年の調査結果より)なのです。いわば日本はICT教育の後進国になりつつあるということです。国家レベル、政府レベルで考えれば、これは確かに深刻な状況と考えるはずです。

 しかし、実際に学校に通う子供たちや保護者からすると、その深刻さはあまり身近には感じられないのではないでしょうか。これを読んで、GIGAスクール構想が必要だと腹落ちする人はどのくらいいるでしょうか。

 もともとGIGAスクール構想は2019年度から5年間かけて環境を整備する予定でした。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、オンライン学習の必要性が高まったことで、スケジュールを大幅に前倒しし、今やほとんどの小中学校で端末の導入が完了しているようです。

 5年かける予定だったプロジェクトをその半分以下の期間で思い切って完了させたわけですから、教育現場からは戸惑いの声も少なくありません。そもそも「なぜGIGAスクール構想なのか」という問いに対しても、現場では煮え切らないものを感じていたようなので、混乱もなおさらのことでしょう。

 コロナの感染状況については仕方ないとしても、「なぜGIGAスクール構想なのか」に対する問いについては伝え方次第で理解を得ることができるかもしれません。

「ますます」わかるICT教育の必要性

 そこで、玉置氏は「ますます」という言葉をキーワードにしてGIGAスクール構想の意義を解説しています。

・子供の様子がますます見えてくる
・子供の見方がますます広がる
・教師がますます学び合う
・教師がますます一つになる
・指導力がますます向上する
・学校力がますます高まる

 いかがですか。このように現場の人がわかりやすい言葉で伝えられると、ICT教育がどんなものか、その特徴をより理解しやすくなるのではないでしょうか。

「心の天気」~「誰一人取り残さない」というSDGsの考え方にも通じる~

 本書では「心の天気」という面白いアプリケーションも紹介されています。天気と同じように「はれ」「くもり」「あめ」「かみなり」の4種類のマークがあり、その日の心の調子を毎日記録していくというしくみです。

 「心の天気」はいたってシンプルなしくみですが、効果は絶大。ずっと「はれ」マークだった子が「くもり」や「あめ」に変化したとき、「あれ、どうしたんだろう」と気がつくことができます。考えてみれば、大人でさえその日の体調や気分を言葉にして発信するのはそう簡単なことではありません。ましてや子どものこと。

 先生たちにとってはそうした見えにくい情報をキャッチするための貴重なツールであり、子どもとのコミュニケーションにも役立ちます。これは「誰一人取り残さない」というSDGsの考え方にも通じるものではないでしょうか。

 子どもにとって「心の天気」を記すことは、「振り返り」という行為にあたります。「振り返り」とは学術用語では「メタ認知」とも言われています。この「メタ認知」が学習において大きな役割を担っていると言われ、実は学習指導要領でもそのことが強調されているのです。

ICTシステムを活用推進させるための8箇条

 さらに、玉置氏は学校がICTシステムを活用推進させるためのポイントを8つに絞って解説しています。

(1)まずは受け入れる
(2)発想の原点を考える
(3)これまでのことを一度忘れてみる
(4)何人かにモニタリングする
(5)価値づけることの重要性
(6)エビデンスよりエピソード
(7)面白がることが大切
(8)やってみなけりゃわからない精神を

 以上の8箇条ですが、これらは教育現場やICTシステムの導入にかぎらず、家庭やビジネスなどあらゆるシーンで活用できそうです。ちなみに、本書にはこのほか「学びの本質とは何か」など、それこそ誰が読んでも学びになるコンテンツが満載です。

 ということで、今後も“学校を元気にする”取り組みに注目していきたいと思います。

<参考文献>
・『学校を元気にする次世代学校ICTシステム活用術~情報機器を眠らせない全校体制の進め方~』(玉置崇著、EDUCOM)
https://sweb.educom.co.jp/swas/index.php?id=educomec&frame=edubook02

<参考サイト>
・玉置崇先生の研究室
https://www10.schoolweb.ne.jp/swas/index.php?id=2190001

・GIGAスクール構想 文部科学省 パンフレット
https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_1.pdf
・【最新ICT解説】 今さら聞けない「GIGAスクール構想」とは
https://project.nikkeibp.co.jp/pc/atcl/19/06/21/00003/041700215/

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