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DATE/ 2023.02.03

「プレミアムフライデー」はその後どうなった?

 みなさんは「プレミアムフライデー」という言葉を覚えていますか? 毎月最終金曜日は早めに仕事を切り上げてプライベートの時間を増やす、ライフスタイル改革のために始まったキャンペーンですが、「そういえばそんなものもあったね」と思う方も多いのではないでしょうか。2017年に始まったプレミアムフライデーは、いまどうなっているのでしょうか。

そもそもどんなキャンペーンだったのか

 プレミアムフライデーは経済産業省と経団連など官民が連携して、2017年2月24日にスタートしたキャンペーンです。毎月最終金曜日は15時に仕事を切り上げ、そのあとのプライベートの時間を充実させて個人消費の底上げをはかろうとはじまったものでした。

 飲食店や百貨店はこの動きに連動し、開店時間を早めたり、早く仕事を切り上げた人が楽しめる期間限定のカフェを展開したり、セールを実施するなど盛り上がりを見せ、多くの売り上げが見込まれることを期待しました。しかし、思惑通りにはいかなかったのです。

 その理由は、キャンペーンがスタートしても企業での導入が伸び悩んだこと。2年が経った2019年時点でプレミアムフライデーを導入した企業はなんと全体の約1割程度。ただでさえ忙しい月末の週の最終日に、早く仕事を切り上げることは難しいと判断する会社がほとんどだったのです。その結果、初めは話題となったプレミアムフライデーも下火になっていき、現在もキャンペーンは続いていますが、キャンペーンの存在自体忘れられているのが現状となっているのです。

引き続き導入している企業も

 プレミアムフライデー公式HPなどの更新も止まってしまっていて、今や形骸化してしまったプレミアムフライデーですが、キャンペーン自体が終了しているわけではありません。携帯電話大手のソフトバンクでは現在もプレミアムフライデーを呼びかけ、年次有給休暇の推奨取得日、または早めの終業を呼びかけています。月末金曜日にこだわらず、それぞれの業務に合わせて別日の利用も合わせて推奨し、多い時では1万2000人が利用する制度となっているようです。

メリットにも目を向けたい

 多くの人は「プレミアムフライデーは失敗に終わった」と思ってしまうかもしれません。しかし、プレミアムフライデーが導入された2017年よりも、仕事とオフの時間をどうバランスをとっていくのかは重要視されるようになったのではないでしょうか。実際、プレミアムフライデーを導入しているソフトバンクでも上司が積極的に制度を利用することで、部下も働き方を見直す良い機会になったというという声もありました。

 プレミアムフライデーは必ず月末金曜日でなければいけないとは明記されておらず、柔軟に日付をずらすことができます。働く時と休む時のメリハリをきちんとつける、そうした習慣を作るきっかけとして、プレミアムフライデーの制度が当たり前のように活用される社会になっていくと良いですね。
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小原雅博
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