社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
必ずハマる!『言語沼』の世界と言語の不思議な魅力
近年、若い世代の間で、奥深い趣味にのめり込むことを「沼に落ちる」と表現することが流行っています。趣味を沼地に例え、底なし沼に落ちるようにハマってしまい、あまりに好きすぎて抜け出せなくなるという状態を表現しているのです。
そんな言葉が表現するように、ズブズブと、ある“沼”にハマってしまったお二人がいます。YouTubeとpodcastで「ゆる言語学ラジオ」を配信している水野太貴さんと、堀元見さんです。お二人が“沼ってしまった”のは、ラジオのタイトルにもある通り、ずばり「言語」。今回ご紹介するのは、“言語沼”にどっぷりハマってしまったお二人の共著『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』(あさ出版)です。
本書のスタイルも、ラジオのように対談形式となっています。話し手の水野さんが、言葉に関する質問を堀元さんに投げかけ、堀元さんが素人なりに考えた言語の解釈や、ひらめきを面白おかしく返して行きます。言語学というと、理論的で小難しく感じる方が少なくないかもしれませんが、お二人の対話はまるでお笑いコンビのコントのように軽快。するすると、目から文字を飲み込むように、言語の不思議な魅力や、明日から人に話したくなるようなマメ知識が頭に入って来る構成になっています。
日本語には、二つの語が結合して一つの語を作るとき、二つめの語の語頭の清音が濁音に変わる【連濁】という現象があります。【日(ひ)】に【傘(かさ)】で【日傘(ひがさ)】、【山(やま)】に【川】で【やまがわ】といった形です。
一方、【カエル】に【ドク】がつくと【ドクガエル】となりますが、【トカゲ】に【ドク】がついても【ドクドカゲ】にはなりません。また、こんな生き物はいませんが、【チワワ】に【ドク】がついたとしても【ドクヂワワ】にはならなさそう……。
では、どういうルールがここにあるのでしょうか。
水野さんからのこの問いに、堀元さんは頭をひねりつつ「かわいければ濁音にならない」と、面白おかしく返事をします。さて、みなさんもどう考えるでしょうか。
答えは、二つめの語に濁音がすでにある場合は濁らない、そして外来語にも適用されないというもの。母国語話者であるからこそ、「なるほど」と感心するよりも、「そんなルールがあったのか!」と驚く気持ちのほうが強いかもしれませんね。
〈「聞かれたら答えは分かるんだけど、そのメカニズムがなぜかわからない」。こんな不思議な現象は、日常生活のなかでそう滅多にお目にかかれない。ところが言語に目を向けると、一事が万事こんなことばっかりなのである。〉
わたしたちは言語を用い、自分の考えをまとめ、気持ちを言葉にして伝えようとする生き物です。それは呼吸をするようなもので、いちいち「肺を膨らませて……横隔膜を下げて……」と考えないのと同じように、ほとんど無意識に言葉が話せるように作られています。
本書のなかでは、まだ言語習得のおぼつかない2、3歳の子どもたちが、オノマトペを理解し、その音から感じる動作イメージを持っているという研究結果が紹介されています。言葉の意味を理解する前から、感覚として言語が備わっていく様子は、言葉が人間にとって欠かせないものだと感じさせられるものでした。それほどまでに当たり前のもの、すぐ側にあるものだからこそ、言語には人を“沼”に落とし、抜け出せなくなってしまう魅力に満ちているのかもしれません。
水野さんは、本書で紹介した事例について、「これはまだまだ沼の浅瀬である」と述べています。ということは、言語の沼はとっても深そうなので、ますますハマってしまいそうです。ということで、まずは、本書を片手に“沼”の縁で足だけでも浸かってみてはいかがでしょうか。そして、お二人のラジオを聴いてみるのもいいかもしれません。気づけばどっぷり頭の先まで、言語の沼に浸かってしまうかもしれませんね。
そんな言葉が表現するように、ズブズブと、ある“沼”にハマってしまったお二人がいます。YouTubeとpodcastで「ゆる言語学ラジオ」を配信している水野太貴さんと、堀元見さんです。お二人が“沼ってしまった”のは、ラジオのタイトルにもある通り、ずばり「言語」。今回ご紹介するのは、“言語沼”にどっぷりハマってしまったお二人の共著『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』(あさ出版)です。
軽妙な二人のトークが言語沼への道を開く
幼い頃から言葉に興味を持っていた水野さんは、その半生を言語沼で過ごしたというほど、言語大好き人間だそうです。名古屋大学では言語学を専攻し、現在は出版社で編集者として勤務する傍ら、言語をテーマにした「ゆる言語学ラジオ」の配信を開始しました。このラジオの聞き手となったのが、水野さんの友人で作家の堀元さんです。“言語学素人”であったはずの堀元さんは、沼の底から熱心に語りかけてくる水野さんの熱にあてられ、すっかり自身も言語沼の住人になってしまったのだとか。本書のスタイルも、ラジオのように対談形式となっています。話し手の水野さんが、言葉に関する質問を堀元さんに投げかけ、堀元さんが素人なりに考えた言語の解釈や、ひらめきを面白おかしく返して行きます。言語学というと、理論的で小難しく感じる方が少なくないかもしれませんが、お二人の対話はまるでお笑いコンビのコントのように軽快。するすると、目から文字を飲み込むように、言語の不思議な魅力や、明日から人に話したくなるようなマメ知識が頭に入って来る構成になっています。
なんてことない日本語のメカニズム、あなたは答えられますか
とはいえ、言語のマメ知識といってもピンと来ない方もいるかもしれません。まずは一つ、本書のプロローグで、水野さんが投げかける日本語の事例を紹介してみましょう。日本語には、二つの語が結合して一つの語を作るとき、二つめの語の語頭の清音が濁音に変わる【連濁】という現象があります。【日(ひ)】に【傘(かさ)】で【日傘(ひがさ)】、【山(やま)】に【川】で【やまがわ】といった形です。
一方、【カエル】に【ドク】がつくと【ドクガエル】となりますが、【トカゲ】に【ドク】がついても【ドクドカゲ】にはなりません。また、こんな生き物はいませんが、【チワワ】に【ドク】がついたとしても【ドクヂワワ】にはならなさそう……。
では、どういうルールがここにあるのでしょうか。
水野さんからのこの問いに、堀元さんは頭をひねりつつ「かわいければ濁音にならない」と、面白おかしく返事をします。さて、みなさんもどう考えるでしょうか。
答えは、二つめの語に濁音がすでにある場合は濁らない、そして外来語にも適用されないというもの。母国語話者であるからこそ、「なるほど」と感心するよりも、「そんなルールがあったのか!」と驚く気持ちのほうが強いかもしれませんね。
当たり前のものだからこそハマると深い言語沼
話し手を務めている水野さんは、本書のなかで次のように語っています。〈「聞かれたら答えは分かるんだけど、そのメカニズムがなぜかわからない」。こんな不思議な現象は、日常生活のなかでそう滅多にお目にかかれない。ところが言語に目を向けると、一事が万事こんなことばっかりなのである。〉
わたしたちは言語を用い、自分の考えをまとめ、気持ちを言葉にして伝えようとする生き物です。それは呼吸をするようなもので、いちいち「肺を膨らませて……横隔膜を下げて……」と考えないのと同じように、ほとんど無意識に言葉が話せるように作られています。
本書のなかでは、まだ言語習得のおぼつかない2、3歳の子どもたちが、オノマトペを理解し、その音から感じる動作イメージを持っているという研究結果が紹介されています。言葉の意味を理解する前から、感覚として言語が備わっていく様子は、言葉が人間にとって欠かせないものだと感じさせられるものでした。それほどまでに当たり前のもの、すぐ側にあるものだからこそ、言語には人を“沼”に落とし、抜け出せなくなってしまう魅力に満ちているのかもしれません。
言語沼の浅瀬から深みへの誘い
水野さんは本書を作るきっかけを、「言語の面白さを伝える本が作りたい」という気持ちだったと言います。怪獣の名前に濁点が多い理由、「あいうえお」の順番の理由、生物と無生物の違いがニュアンスに違いをもたらすなど、パラパラと眺めるだけでも知的好奇心が大いに刺激され、本を開いた側からお二人の軽妙なトークが聞こえ出てくるようです。そして、文字だけの声でも、言語が好きでたまらないという想いがひしひしと伝わってくるのです。水野さんは、本書で紹介した事例について、「これはまだまだ沼の浅瀬である」と述べています。ということは、言語の沼はとっても深そうなので、ますますハマってしまいそうです。ということで、まずは、本書を片手に“沼”の縁で足だけでも浸かってみてはいかがでしょうか。そして、お二人のラジオを聴いてみるのもいいかもしれません。気づけばどっぷり頭の先まで、言語の沼に浸かってしまうかもしれませんね。
<参考文献>
『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』(堀元見著、水野太貴著、あさ出版)
http://www.asa21.com/book/b607897.html
<参考サイト>
堀元見氏のツイッター
Twitter:https://twitter.com/kenhori2
水野太貴氏氏のツイッター
Twitter:https://twitter.com/yuru_mizuno
ゆる言語学ラジオ
https://yurugengo.com/
『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』(堀元見著、水野太貴著、あさ出版)
http://www.asa21.com/book/b607897.html
<参考サイト>
堀元見氏のツイッター
Twitter:https://twitter.com/kenhori2
水野太貴氏氏のツイッター
Twitter:https://twitter.com/yuru_mizuno
ゆる言語学ラジオ
https://yurugengo.com/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
外交とは何か――著書のあとがきに込めたメッセージ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05
2交代制と3交代制、どちらが問題?…有効な夜勤対策は
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(6)夜勤問題と仮眠対策
睡眠のリズムに大きな影響を及ぼすシフトワーク。医療業界などそうした働き方をせざるを得ない職場では、夜勤問題などもあり、2交代制と3交代制、どちらにも問題がある。そうしたシフトワークの影響を減らすためにどのような工...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/09/06
著者が語る!『『江戸名所図会』と浮世絵で歩く東京』
編集部ラジオ2025(19)堀口茉純先生の「講義録」発刊!
テンミニッツ・アカデミーで6回のシリーズ講義として続いてきた、堀口茉純先生の《『江戸名所図会』で歩く東京》が、遂に講義録として発刊されました。今回の編集部ラジオでは、著者の堀口茉純先生にお越しいただき、この書籍の...
収録日:2025/08/19
追加日:2025/09/03
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/08/31