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必見!『すごすぎる絵画の図鑑』が解き明かす名画のひみつ
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ルーベンス、フェルメール、葛飾北斎、モネ、マネ、ピカソ、ゴッホなどなど、名画を描いたとされる画家はたくさんいます。ではその何が優れているのでしょうか。また、そうした名画のどこを見れば、それがわかるのでしょうか。
もちろん知識などなくとも、「これが本物か」と思いながらその絵を見るだけでおそらく圧倒されるでしょう。それでも十分かもしれませんが、見るべきポイントを頭においておくと、さらに楽しめるのではないでしょうか。ということで、今回紹介する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(青い日記帳著、川瀬佑介監修、KADOKAWA)は、そんな名画の秘密や美術作品を楽しむヒントが詰まっている一冊です。
著者の「青い日記帳」とは、Tak(たけ)こと中村剛士氏が主宰する美術ブログです。青い日記帳は長年続く美術ブログで、Tak氏は1年に300以上の展覧会に足を運んでここでレビューを行っているそうです。著書はほかに『いちばんやさしい美術鑑賞』(ちくま新書)、『失われたアートの謎を解く』(ちくま新書)、監修として『カフェのある美術館 素敵な時間をたのしむ』(世界文化社)などがあります。
さて、名画とは何なのでしょうか。絵がきれいかどうか、上手かどうかということも関係あるかもしれませんが、名画の本質はそれとは別のところにあるのではないでしょうか。ではさっそく本書で紹介されている絵画から、どこにその本質があるのか、つまりどこに名画の魅力が隠れているのか、そのヒントを探ってみましょう。
ダ・ヴィンチの死後、フランス王に買い取られ、途中盗難にあったりしながらも現在ではルーブル美術館内に設けられた「モナ・リザの間(国家の間)」に飾られています。この絵画に施されたテクニックとしては、大きく3つがあります。一つは「スフマート」という技法。これはイタリア語で「ぼんやりした」という意味で、輪郭線を描かずに絵具を何度も重ねることで立体感や影を表します。これにより、人間らしい柔らかさがでているとのこと。
二つ目は「空気遠近法」です。景色は遠景ほど青みがかって見えますが、これを再現して遠近感を出す方法です。モナ・リザでの背景にもこの技法が使われていますが、実は左右がつながっていないことで異世界感を醸し出しています。
三つ目は「四分の三面観」、つまり3/4だけ正面を向くポーズで描かれていることで、神秘的な雰囲気になっています。同時代以降のさまざまな画家がこの作品を真似ています。
これらの優れた技法に加えて、モデルや背景のミステリーが絡み、現在まで人々の興味を惹きつける続ける一枚となっているのです。
この作品のインパクトは何といっても構図です。波が思い切り高くなった瞬間、船が飲み込まれそうな一瞬を捉えていますが、この背景に富士山が静かに立っています。この構図では「動と静」「近景と遠景」という二つの対比が一枚の絵の中に描かれ、観るものに迫ってきます。こういった点でたいへん興味深い一枚です。
『富嶽三十六景』では他にも多くの富士山が描かれています。例えば「尾州不二見原」では、職人が丸い桶を作っている最中ですが、この桶の丸い形が額縁となって、奥に三角形の富士山が小さく見えています。また「凱風快晴」では朝日に赤く染まった大きな富士山の背景に、白い雲が浮かぶ青い空があります。大胆な構図と対比が美しい一枚です。こういった大胆な構図を味わうことが葛飾北斎の見どころの一つといえます。
その作品の中でも『ひまわり』はもっとも有名なシリーズで、全部で7作品あります。暗い色調の作品が多い中で、この作品は幸せな気持ちを表すように明るい色合いで描かれています。精神を病んで光あふれる南仏に移住したのち、共同生活する予定の画家を待ちながら幸せな気持ちで描かれた作品がこの作品群とのことです。
一枚の中では15本のひまわりが描かれています。その後、共同生活はうまくいかず、自身の耳を切り落とす事件を起こしてしまうなど、非常につらい状況に至る前に描かれたということを知ると、複雑な気持ちになります。この7枚のうちの一枚は、日本のSOMPO美術館にあります。1987年のオークションにて約58億円で落札されましたが、当時としては史上最高額でした。
Tak氏は「はじめに」において、名画とはその時代にあって「もっとも新しい」ことだと言います。誰も知らなかった方法やテーマで世の中を驚かせた作品が「名画」とのこと。本書は見開きもしくは4ページごと一つの作品、あるいは一人の画家が取り上げられています。興味をもったところをパッと開いて読むだけでも楽しめますし、発色のいい紙が使われていることもあり、解説をもとにじっと掲載されている絵を眺めるだけでも「これか!」という発見が訪れます。美術館に足を運ぶ前、一度本書を読んでみてください。これまでと違う、新しい絵画の見方、楽しみ方と出会える、ワクワクの一冊です。
もちろん知識などなくとも、「これが本物か」と思いながらその絵を見るだけでおそらく圧倒されるでしょう。それでも十分かもしれませんが、見るべきポイントを頭においておくと、さらに楽しめるのではないでしょうか。ということで、今回紹介する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(青い日記帳著、川瀬佑介監修、KADOKAWA)は、そんな名画の秘密や美術作品を楽しむヒントが詰まっている一冊です。
著者の「青い日記帳」とは、Tak(たけ)こと中村剛士氏が主宰する美術ブログです。青い日記帳は長年続く美術ブログで、Tak氏は1年に300以上の展覧会に足を運んでここでレビューを行っているそうです。著書はほかに『いちばんやさしい美術鑑賞』(ちくま新書)、『失われたアートの謎を解く』(ちくま新書)、監修として『カフェのある美術館 素敵な時間をたのしむ』(世界文化社)などがあります。
さて、名画とは何なのでしょうか。絵がきれいかどうか、上手かどうかということも関係あるかもしれませんが、名画の本質はそれとは別のところにあるのではないでしょうか。ではさっそく本書で紹介されている絵画から、どこにその本質があるのか、つまりどこに名画の魅力が隠れているのか、そのヒントを探ってみましょう。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ」
最初に取り上げられているのは、レオナル・ド・ダヴィンチの「モナ・リザ(別名:ラ・ジョコンダ)」、世界一有名といってもいい絵画です。中央に描かれた女性は頭に薄いベールをかけ、穏やかな顔をして少しだけ体をこちらに傾けています。ダ・ヴィンチは死ぬまでこの絵を手放さなかったそうです。この絵のモデルについては、現在までの間にさまざまな議論が起こり、人々の想像をかきたててきました。ダ・ヴィンチの死後、フランス王に買い取られ、途中盗難にあったりしながらも現在ではルーブル美術館内に設けられた「モナ・リザの間(国家の間)」に飾られています。この絵画に施されたテクニックとしては、大きく3つがあります。一つは「スフマート」という技法。これはイタリア語で「ぼんやりした」という意味で、輪郭線を描かずに絵具を何度も重ねることで立体感や影を表します。これにより、人間らしい柔らかさがでているとのこと。
二つ目は「空気遠近法」です。景色は遠景ほど青みがかって見えますが、これを再現して遠近感を出す方法です。モナ・リザでの背景にもこの技法が使われていますが、実は左右がつながっていないことで異世界感を醸し出しています。
三つ目は「四分の三面観」、つまり3/4だけ正面を向くポーズで描かれていることで、神秘的な雰囲気になっています。同時代以降のさまざまな画家がこの作品を真似ています。
これらの優れた技法に加えて、モデルや背景のミステリーが絡み、現在まで人々の興味を惹きつける続ける一枚となっているのです。
葛飾北斎「神奈川沖浪裏」
日本に目を移せば、葛飾北斎の作品群があります。葛飾北斎といえば、デフォルメされた波の絵を思い浮かべる人は多いでしょう。絵の名前は「神奈川沖浪裏」、これは浮世絵『富嶽三十六景』シリーズの一枚です。海外では「The Great Wave」と呼ばれています。この作品のインパクトは何といっても構図です。波が思い切り高くなった瞬間、船が飲み込まれそうな一瞬を捉えていますが、この背景に富士山が静かに立っています。この構図では「動と静」「近景と遠景」という二つの対比が一枚の絵の中に描かれ、観るものに迫ってきます。こういった点でたいへん興味深い一枚です。
『富嶽三十六景』では他にも多くの富士山が描かれています。例えば「尾州不二見原」では、職人が丸い桶を作っている最中ですが、この桶の丸い形が額縁となって、奥に三角形の富士山が小さく見えています。また「凱風快晴」では朝日に赤く染まった大きな富士山の背景に、白い雲が浮かぶ青い空があります。大胆な構図と対比が美しい一枚です。こういった大胆な構図を味わうことが葛飾北斎の見どころの一つといえます。
ゴッホ「ひまわり」
フィンセント・ファン・ゴッホは日本でも大人気の画家ですが、有名になったのはその死後です。有名になった理由の一つはそのドラマチックな人生にあります。失恋して生涯独身、職を転々として画家となり、精神を病んでしまいます。ゴッホは気性が激しかったことで、波瀾万丈の人生となりました。その作品の中でも『ひまわり』はもっとも有名なシリーズで、全部で7作品あります。暗い色調の作品が多い中で、この作品は幸せな気持ちを表すように明るい色合いで描かれています。精神を病んで光あふれる南仏に移住したのち、共同生活する予定の画家を待ちながら幸せな気持ちで描かれた作品がこの作品群とのことです。
一枚の中では15本のひまわりが描かれています。その後、共同生活はうまくいかず、自身の耳を切り落とす事件を起こしてしまうなど、非常につらい状況に至る前に描かれたということを知ると、複雑な気持ちになります。この7枚のうちの一枚は、日本のSOMPO美術館にあります。1987年のオークションにて約58億円で落札されましたが、当時としては史上最高額でした。
名画とはその時代にあって「もっとも新しい」こと
ここに挙げたポイントは、技法、ミステリー、構図、作家の人生といったところでした。他にもいろいろな作品が紹介されていますが、それらの魅力を堪能するためにも、中世以降の宗教画から、20世紀の抽象表現主義といったところまでの絵画史の流れを知っておきたいところ。この点について、本書では後半にわかりやすい年表とともに解説しています。さらに「宗教画の目的はなにか」「絵の価値はどのように決まるのか」「歴史的な贋作」など、興味深い視点からも作品が取り上げられます。Tak氏は「はじめに」において、名画とはその時代にあって「もっとも新しい」ことだと言います。誰も知らなかった方法やテーマで世の中を驚かせた作品が「名画」とのこと。本書は見開きもしくは4ページごと一つの作品、あるいは一人の画家が取り上げられています。興味をもったところをパッと開いて読むだけでも楽しめますし、発色のいい紙が使われていることもあり、解説をもとにじっと掲載されている絵を眺めるだけでも「これか!」という発見が訪れます。美術館に足を運ぶ前、一度本書を読んでみてください。これまでと違う、新しい絵画の見方、楽しみ方と出会える、ワクワクの一冊です。
<参考文献>
『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(青い日記帳著、川瀬佑介監修、KADOKAWA)
https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322306001357/
<参考サイト>
青い日記帳Webサイト
https://bluediary2.jugem.jp/
Tak(たけ)氏のX(旧Twitter)
https://twitter.com/taktwi
『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(青い日記帳著、川瀬佑介監修、KADOKAWA)
https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322306001357/
<参考サイト>
青い日記帳Webサイト
https://bluediary2.jugem.jp/
Tak(たけ)氏のX(旧Twitter)
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