テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.11.03

繰り返されるバブル崩壊!次のバブルを予測するための4つの条件

 一般的に、バブルは珍しいものだと思われているが、決してそうではない。IMFのレポートによれば、世界では1970年から2007年までに124の不良債権による銀行危機が発生している。そのほぼすべてにバブルが絡んでいると考えられる。平均すれば、世界で年に3~4回はバブルが起きている計算になる。

 バブルは、むしろ頻繁に起こっているのだ。いまもアメリカや中国でバブルが崩壊するのではないかと危惧されているが、十分にありえることだ。なぜ、バブルはこれほど繰り返されるのだろうか?

賢い人も、バブルに踊る

 バブルには大きく、「他力本願型バブル」「惚れ込み型バブル」の2種類がある。他力本願型バブルは、まだ他の人がこの株を買うだろうから、さらに値上がりするだろうと多くの人が考えるバブルだ。

 惚れ込み型バブルは、多くの投資家が、投資対象のすばらしさに惚れ込んだ結果、発生するバブルだ。たとえば、1980年代後半~1990年頃の日本の平成バブルでは、日本人だけでなく欧米でも日本が一番だと考えていたし、2000年のアメリカのITバブルでは、投資家の多くがITは夢の技術だと信じて疑わなかった。

 特に問題なのは惚れ込み型バブルで、政府も含めたほとんど全員が、自分は合理的に動いていると考え、バブルの最中にバブルだと気がつかないのである。賢い人たちもバブルだとわからないからこそ、バブルは起こってしまうのだ。

実は、静かに崩壊するバブルが多い

 もう一つ、あまり知られていないバブルの特徴は、あるとき、理由なく崩壊するケースが多いことだ。2007年のリーマン・ショックではリーマン・ブラザーズの破綻というわかりやすいきっかけがあったが、日本の平成バブルやアメリカのITバブルは、崩壊のはじまりに大きな事件があったわけではない。大きく膨らみすぎた結果、自ら弾けるように崩壊したのだ。

 音もなく静かに、ゆっくりと崩れていくバブルも多い。平成バブルが典型的で、株価は1989年末にピークを迎えたあと、緩やかに下落していった。その後、景気のピークは1991年2月に迎えている。つまり、多くの日本人は、1990年にかなり株価が下がったにもかかわらず、1991年になるまでバブルが崩壊したと気づいていなかったのだ。

 その証拠に、バブル崩壊後の1992年頃、そろそろ株価が下げ止まるだろうと考え、不動産を買った投資家が少なくなかったという。いまから考えれば愚かな判断にしか思えないが、彼らは当時、依然として日本経済に「惚れ込んで」おり、さらに経済が低迷していくとは予想していなかったのだ。こうした特徴は、バブルの一般的なイメージとはかなり違う。バブルの渦中に、バブルを正確に捉えるのは至難の業なのだ。

「4つの条件」が揃うと、危ない

 では、バブルを予測する方法が何もないかといえば、そういうわけではない。塚崎公義氏は『なぜ、バブルは繰り返されるか?』のなかで、次の4条件が揃ったときは危険だから、投資を控えたほうがよいと述べている。

(1)(株価が)高すぎると考える人々を説得するような、それらしい理屈があり、それが広く信じられている

(2)全員参加型である(ふだん株をしない人も含めて、多くが投資している)

(3)資産価格が高騰し、景気も悪くないのに、一般的な物価は安定しているので、金融が比較的緩和されている

(4)国内と海外の温度差が目立ってくる

 もちろん注意は必要だが、今後の日本でバブルが起こる可能性は低いと考えられる。少子高齢化が進む日本で、経済が成長するという理屈がなかなか成り立たないからだ。それより怖いのは、アメリカ・中国・東南アジアなどのバブル崩壊だ。日本経済が大きく影響を受ける可能性がある。十分に気をつけておいて損はないだろう。

<参考文献>
・『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(塚崎公義/祥伝社)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機

混迷を極める現代社会にあって、「学び」の意義はどこにあるのだろうか。次世代にどのような望みをわれわれが与えることができるのか。社会全体の運営を、いかに正しい知識と方針で進めていけるのか。一人ひとりの人生において...
収録日:2025/06/19
追加日:2025/08/13
納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授
2

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(4)社会的時差ボケとメンタルヘルス

社会的時差ボケは、特に若年層にその影響が大きい。それはメンタルヘルスの悪化にもつながり、彼らの幸福度を低下させるため、ウェルビーイングの危機ともいうべき事態を招くことになる。ではどうすればいいのか。欧米で注目さ...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/23
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長
3

健康経営×DEIの効用――経営理念が充実すると業績がよくなる

健康経営×DEIの効用――経営理念が充実すると業績がよくなる

DEIの重要性と企業経営(3)健康経営でDEIを推進する

どのようにすればDEIを実現していけるのか。一つのヒントとなるのが「健康経営」である。はたして健康経営を目指している企業にとって、DEIの視点を取り入れることが企業利益につながるのか。また、従業員のウェルビーイングと...
収録日:2025/05/22
追加日:2025/08/22
山本勲
慶應義塾大学商学部教授
4

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性

トランプ大統領は同盟国の役割を軽視し、むしろ「もっと使うべき手段だ」と考えているようである。そのようななかで、ヨーロッパ諸国も大きく軍事費を増やし、「負担のシフト」ともいうべき事態が起きている。そのなかでアジア...
収録日:2025/06/23
追加日:2025/08/21
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授