社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.01.04

野村総研が発表!20年後にロボット・AIで代替される可能性の高い職業100選

 「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」。このほど野村総合研究所が発表したリリースは衝撃的な内容だった。国内の601種類の職業について人工知能やロボットで代替される確率を試算したところ、10~20年後には約半数の労働人口が就く職業において、ロボット等が取って代わる可能性が高い(「可能性が高い」=66%以上)のだという。

 レポートでは代替可能性が高い職業、低い職業がそれぞれ100種紹介されている。前者は自動車組立工、ビル清掃員、ホテル客室係、タクシー運転者など自動化される可能性が高いもの、後者はひとくくりにすることはできないが例示されているのは映画監督、医療従事者全般、経営コンサルタント、教員など。創造性を活かしたり、他者とコミュニケーションをとったうえで問題解決や教育を行う職業はロボットに代替されにくいとしている。

 野村総研のレポートに共同研究者として名前を連ねているオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が2013年に発表したレポート「コンピュータ化の影響を受けやすい未来の職業」は、代替されにくい仕事をランキング形式で発表。最も自動化されにくいのはレクリエーションセラピスト(遊びを通した心理療法を行う専門家)、2位は第一線のメカニック・修理工、3位は緊急事態の管理者。3位は抽象的な職業だが、どれもやはり高い専門性であったり、対人のコミュニケーションを元にした仕事と言えるだろう。

 代替可能性が高い職業についている人にとってみれば気持ちが沈んでしまうような内容だが、逆に考えると自動化できない価値を持てば強みになる。車の自動運転が主流になってくればタクシー運転手は将来減るかもしれないが、そこで淘汰されるのは「運転するだけ」というタイプ。観光案内ができる、オーダーに応じて地元の名店を紹介できるなど「一芸」を持つことでタクシーはただの移動手段ではなくなる。

 他の職業も同様だが、誰がやっても同じ結果にしかならない仕事は真っ先に自動化の対象となるだろう。置き換えできない価値を持つことで、ロボットには出せない味が出てくるというものだ。また、今回の野村総研のレポートは技術的に代替可能かどうかという調査であり、実際に代替されるかどうかは労働需給を含めた社会環境要因の影響も大きい、としている。

 見方を変えるとロボット等で代替可能な仕事が増えるというニュースはネガティブな面ばかりでなく、ポジティブな面もある。ファナック、安川電機などロボット産業に強みを持つ日本企業にとってみれば、今後マーケットが拡大していく可能性が高いだろう。

 遠くない未来にやってくる自動化の波。その波に飲まれない自分なりの価値を今から磨いておけば、きっと役立つ時が訪れるだろう。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
2

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?

「何回説明しても伝わらない」「こちらの意図とまったく違うように理解されてしまった」……。そんなことは、日常茶飯事です。しかしだからといって、相手を責めるのは大間違いでは? いやむしろ、わが身を振り返って考えないと...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/13
3

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム

初めて会った人なのになぜか好意を抱いてしまうことがある。だが、なぜそうした衝動が生じるのかは疑問である。デカルトが友人シャニュに宛てた「愛についての書簡」から話を起こし、愛をめぐる精神と身体の関係について論じる...
収録日:2018/09/27
追加日:2019/03/31
津崎良典
筑波大学人文社会系 教授
4

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解

アメリカの大転換はトランプ政権以前に起こっていた。1980~1990年代、情報機器と金融手法の発達、それに伴う法問題の煩雑化により、アメリカは「ラストベルト化」に向かう変貌を果たしていた。そこにトランプの誤解の背景があ...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/11
5

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制

「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどうい...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/09
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授