トルコ軍ロシア機撃墜問題
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クルド自治国家容認は必至、国際対立の敗者はトルコ
トルコ軍ロシア機撃墜問題(3)戦略的利益はあったのか
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
トルコ軍によるロシア機撃墜は世界をあっと言わせたが、この事件においてトルコは間違いなく敗者ということになると歴史学者・山内昌之氏は語る。それはいったいどういうことなのか。ロシア、米欧諸国の反応なども踏まえながら、今回トルコがとった戦略について分析する。(全4話中第3話目)
時間:8分41秒
収録日:2015年12月2日
追加日:2015年12月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●北シリアで真っ向対決するトルコとクルド

 
 皆さん、こんにちは。引き続き前回、前々回から受けまして、現在進行中のロシアとトルコの危機についてお話ししてみたいと思います。

 いずれにしましても、トルコ側にとって民族問題、すなわち自らの兄弟民族であるトルクメン人が北シリアにいるということ、それに対してアサド政権の軍隊が攻撃を加え、そこにロシア軍、ロシア人の軍事顧問もいて指導していること、こうした事態は誠に面白くないものがありました。そうかといって、トルクメン人を庇護、保護するということが21世紀の新しい露土戦争の引き金になるというのは、全体としてトルコの利益にとって合理的な選択とは言えません。

 PYD、すなわちシリアの民主連合党というクルド人の政党、団体は、トルクメン人やアラブ人といった人たちを、内戦期のうちに北シリアから追い払ってしまいたい、あるいは少なくとも強制的な住民交換によって、北シリアに純粋なクルド国家を、自治であれ独立であれ、建設しようとしているのです。これは、同じ北シリアに、トルコ人がスンナ派系のアラブ人やトルクメン人たちを中心とした国家をいずれつくろうというのと、真っ向から対立する考えです。


●米英はフランスの現実主義的な選択肢に追随する以外ない


 さて、今回のトルコのこうした行動について、アメリカやヨーロッパ、米欧の同盟国、あるいはNATOは、基本的にトルコの立場を支持すると言いながら、実は大変困惑しているというのが現実です。そもそも彼らにとってトルクメン人とは何か、あるいはトルクメン人の利益について少しも関心を持たないし、そうした民族の存在さえ知らなかったというのが事実ではないでしょうか。NATO、とりわけアメリカはトルコの今回の強硬な措置について困惑しているのです。

 全体として、この前、イスラム国の行ったパリ同時多発テロでの大虐殺を機会に、フランスは、シリア戦争の処理、シリア問題の解決に向けてロシアやイランとすでに手を打ち、反IS、イスラム国反対の連合を組むことになったのは、すでに新聞でも伝えられている通りです。テレビを通しても、部分的にご存知の方は多いかと思います。

 しかも、フランスがこれまで正面から戦ってきた、また、政権としての正当性がないと主張してきたアサド大統領が暫定政権、あるいは過渡期にしばらく権力に残る...

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