トルコ軍ロシア機撃墜問題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
クルド自治国家容認は必至、国際対立の敗者はトルコ
トルコ軍ロシア機撃墜問題(3)戦略的利益はあったのか
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
トルコ軍によるロシア機撃墜は世界をあっと言わせたが、この事件においてトルコは間違いなく敗者ということになると歴史学者・山内昌之氏は語る。それはいったいどういうことなのか。ロシア、米欧諸国の反応なども踏まえながら、今回トルコがとった戦略について分析する。(全4話中第3話目)
時間:8分41秒
収録日:2015年12月2日
追加日:2015年12月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●北シリアで真っ向対決するトルコとクルド

 
 皆さん、こんにちは。引き続き前回、前々回から受けまして、現在進行中のロシアとトルコの危機についてお話ししてみたいと思います。

 いずれにしましても、トルコ側にとって民族問題、すなわち自らの兄弟民族であるトルクメン人が北シリアにいるということ、それに対してアサド政権の軍隊が攻撃を加え、そこにロシア軍、ロシア人の軍事顧問もいて指導していること、こうした事態は誠に面白くないものがありました。そうかといって、トルクメン人を庇護、保護するということが21世紀の新しい露土戦争の引き金になるというのは、全体としてトルコの利益にとって合理的な選択とは言えません。

 PYD、すなわちシリアの民主連合党というクルド人の政党、団体は、トルクメン人やアラブ人といった人たちを、内戦期のうちに北シリアから追い払ってしまいたい、あるいは少なくとも強制的な住民交換によって、北シリアに純粋なクルド国家を、自治であれ独立であれ、建設しようとしているのです。これは、同じ北シリアに、トルコ人がスンナ派系のアラブ人やトルクメン人たちを中心とした国家をいずれつくろうというのと、真っ向から対立する考えです。


●米英はフランスの現実主義的な選択肢に追随する以外ない


 さて、今回のトルコのこうした行動について、アメリカやヨーロッパ、米欧の同盟国、あるいはNATOは、基本的にトルコの立場を支持すると言いながら、実は大変困惑しているというのが現実です。そもそも彼らにとってトルクメン人とは何か、あるいはトルクメン人の利益について少しも関心を持たないし、そうした民族の存在さえ知らなかったというのが事実ではないでしょうか。NATO、とりわけアメリカはトルコの今回の強硬な措置について困惑しているのです。

 全体として、この前、イスラム国の行ったパリ同時多発テロでの大虐殺を機会に、フランスは、シリア戦争の処理、シリア問題の解決に向けてロシアやイランとすでに手を打ち、反IS、イスラム国反対の連合を組むことになったのは、すでに新聞でも伝えられている通りです。テレビを通しても、部分的にご存知の方は多いかと思います。

 しかも、フランスがこれまで正面から戦ってきた、また、政権としての正当性がないと主張してきたアサド大統領が暫定政権、あるいは過渡期にしばらく権力に残る...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
プーチンのロシア―その思想と戦略―(1)プーチン政治の特徴
ロシア皇帝のように悪者を叱る人…プーチンの思想と歴史観
山添博史
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
紛争が絶えない世界~私たちは何ができるか(1)「戦争の世紀」から再び戦争の時代へ
再び戦争の時代へ――私たちは何を考え、どう動くべきか
小原雅博
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
「満洲」から考える日本とアジア(10)戦後の「五族」の運命
「五族協和」の真実と満洲国崩壊後の五族の悲劇…満洲人、朝鮮人、露人、蒙古人、漢人らの戦後悲史を直視せよ
宮脇淳子
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる
トップアスリートが実践する「自分の高め方」とは…まず集中のスイッチを入れる方法は?
為末大
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(4)認知症と共生社会の実現に向けた対策
その物忘れ、認知症かも…加齢による物忘れとの違いと一番大事なこと
小川純人
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
大国主神に学ぶ日本人の生き方(8)求婚の歌と縁結びの力
大国主神が詠んだ歌…『古事記』の歌の意味と縁結びの力
鎌田東二
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
『源氏物語』を味わう(3)形容詞からの楽しみ方
美しい形容詞の使い分け…『源氏物語』の表現を味わう
林望