●サウジ女性の未来の強化を目指すビジョンとその障害
皆さん、ご機嫌いかがですか。今日は前回に引き続き、サウジアラビアの「ビジョン2030」について、女性問題を中心に触れてみたいと思います。
アメリカは、女性の労働参加率を高めるよう、サウジアラビアに常に求めてきました。ご案内の方も多いと思いますが、サウジアラビアでは女性が自動車を運転することも認められていません。
「ビジョン2030」では、現在22パーセントほどといわれている女性の労働参加率を30パーセントまで高めると公約しています。この「ビジョン」は従来のサウジアラビアの公式見解の枠をかなり超えて、サウジアラビアの女性が国家の大きな財産であることをはっきり認め、「大学卒の50パーセント以上が女性である以上、彼女たちの高度なスキルや才能を発揮できる場所が必要だ」と公言しています。
この点では、サウジアラビアのライバルで、敵性国家といってもいいイランの方がはるかに女性進出の度合いが高く、女性の管理者が男性の上に立つ例も多く見られますが、サウジではそういうことはありません。
こうした点において、MbS(サウジアラビアのモハメッド・ビン・サルマン副皇太子)が女性の登用や社会進出に関心を示すのは誠に結構なことですが、実はこれにはかなりの障害もあります。その一つは、サウジアラビアの宗派で国教ともいうべきワッハーブ派が厳しく女性の隔離を制度化し、差別してきた歴史と伝統を持っているからです。
●サウジが民主党ヒラリー陣営に保険をかけた?
歴史や伝統と決別できるかどうかはなかなか難しい点ですが、女性の未来の強化は社会発展や経済の活性化につながるという「ビジョン2030」の言い方自体は、正しいものがあります。
この「ビジョン2030」はサウジアラビアの内政改革だけではなく、アメリカとの失われた信頼関係の回復や関係修復にも役立つ可能性を持つものとなりました。現実にMbSは、この「ビジョン2030」を携えて訪米し、6月17日にバラク・オバマ大統領と会談しています。この時、サンフランシスコのある企業に130億サウジ・リアル(約3600億円)の巨額な投資を約束したといわれています。
また、後から否定されましたが、ヒラリー・クリントン大統領候補の陣営に対して選挙活動資金の20パーセントを負担している...