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未来の運動会プロジェクトで新しいまちづくり

創造的な場を支える仕組みを研究する(10)未来の運動会

江渡浩一郎
国立研究開発法人産業技術総合研究所 知能システム研究部門 主任研究員
情報・テキスト
「未来の運動会」という楽しそうな名前のプロジェクトが現在、進行している。この運動会は、ニコニコ学会βにおいて未来のスポーツを考えたいというところから出発しているという。メディアアーティストで国立研究開発法人産業技術総合研究所知能システム研究部門主任研究員の江渡浩一郎氏が、その内容を語る。(全10話中第10話)
≪全文≫

●共創型イノベーションの活動として注力している「未来の運動会プロジェクト」


 つくばにおける共創型イノベーションについて活動してきたのですが、今、力を入れて活動している試みとして「未来の運動会プロジェクト」があります。これは、未来の運動会をわれわれが作ってしまおう、というものです。

 これまで、ニコニコ学会βがシンポジウムをやりつつ、さまざまな人が集まる研究会を企画しようということについてお話ししてきました。その中で、「未来のスポーツについて考えたい」という集まりがあったのですが、「未来のスポーツ」と言葉にするだけでアイデアが非常に膨らみます。

 ですが、アイデアが膨らむと同時に感じたのは、着地が難しいということでした。そこで思ったのは、未来のスポーツではなく「未来の運動会」について考えようということでした。なぜかというと、スポーツの場合、「スポーツ選手がやることね」とつい思ってしまい、自分ではない誰かがやっていることだと考えてしまうのですが、運動会となると皆がやるもので、「自分がやるならどうするのだろう。どのように盛り上がるのだろう」と考えるきっかけになると思ったからです。

 ですので、あえてスポーツではなく運動会として、「未来の運動会を考えよう」ということで、運動会部という活動を立ち上げ、プロジェクトとして進めてきました。今は一般社団法人運動会協会という形で法人化し、未来の運動会プロジェクトを続けています。


●ハッカソン形式で考えるとき、大事なことはやってみること


 ムービーがあるので、まずはご覧ください。

 簡単にいうと、スポーツに関するガジェットやさまざまなものを体育館に持ち込み、それらを使ってどんな競技を実現できるかをハッカソン形式で皆で考える、というものです。

 まずアイデアソンとして、最初に道具の説明があるので、「この道具はこのような使い方ができる」ということを考え、模造紙にアイデアを書いていきます。できればスケッチがあった方がいいのですが、どんなアイデアでもいいのです。「このような競技があって、このような形が面白い」「この道具が組み合わさっていると面白い」といったアイデアの断片だけでも構いません。それを書いて床に置いていくのですが、皆がたくさん書いていくと、結果的に150枚ほど床中にアイデアのスケッチが広がります。

 そのようにしてアイデアが広がった後、参加者全員でポストイットを持ってどんどん投票していきます。例えば、「3票しかないけれども、この人のアイデアはいいな」と思うところにも貼っていったりします。そうして、票が集まったアイデアを抽出し、人気があったアイデアを考えた人に、それがどのようなアイデアかを説明してもらいます。「なるほど、それは面白い」と思うこともありますし、そうではないこともあります。また、その説明に感銘を受けて、「このアイデアはこのままの状態で実現に向けて走りましょう」ということもあります。どんなアイデアを結び付けると面白いかを考えるという点では、ファシリテーターの腕が結構必要となるのですが、そのようにしてアイデアを抽出していくのです。

 そこで、チーム構成を行うのですが、ご覧のムービーの時は4つのチームに分けられ、チームごとに競技のアイデアを考えていきます。いろいろと膨らませてもいいので、2つのアイデアを合わせて1個のアイデアにする、ということもあります。

 その後はハッカソン形式で皆で議論し、「このアイデアはどのようにすればいいかな。まずはやってみよう」と言って、まずは書いてある通りにやってみます。やってみるのはいいのですが、やってみたら意外と面白くないとか、難易度が高すぎてゲームにならないなど、さまざまなことが分かってきます。大事なことは、やってみるということです。


●アイデアを膨らませるには、多くの人が集まることが大事


 このハッカソンが実は極めて大事なのに見過ごされがちなのは、そこに複数の人が集まるということです。アイデアは、(基本的に)一人でうんうん考えたりしますし、実際、最初のフェーズでは一人で考えて模造紙に書いて置いていきます。それは大事なのですが、いったんそのアイデアを膨らませようと思ったときは、多くの人、例えば6人なり8人なりがそこに集まって実際にやってみることが大事です。競技だからゲームとして楽しめなくてはいけません。そのためには、1人で頭の中で考えても仕方がなく、2人でも足りず、例えば8人あるいは10人が実際に5対5で戦ってみると、「なるほど、こういう感触があるのか」ということが分かります。

 そこから先は、またもう一回アイデアを練ります。今度は、別のアイデアを足してみるとどうかと少し変えてみて、10人が10人、8人が8人、それぞれ考えます。いくつかの...
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