創造的な場を支える仕組みを研究する
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ニコニコ学会βの成功と共創型イノベーション
創造的な場を支える仕組みを研究する(5)成功の秘訣
江渡浩一郎(産業技術総合研究所 主任研究員/デジタルハリウッド大学大学院 特任教授)
メディアアーティストで国立研究開発法人産業技術総合研究所知能システム研究部門主任研究員の江渡浩一郎氏は、大成功に終わったニコニコ学会βから、いかにそのような成功を生み出せるのか、という方法論に取り組むようになった。それは「共創型イノベーション」と呼ばれるものである。(全10話中第5話)
時間:9分15秒
収録日:2018年4月19日
追加日:2018年11月8日
≪全文≫

●「共創型イノベーション」という取り組みが大成功


 前回お伝えしたようにニコニコ学会βの活動を続けてきましたが、その活動で得た知見をもとに今、「共創型イノベーション」と呼ばれる取り組みを行っています。

 そのことについて、簡単に説明します。ニコニコ学会βという形でカンファレンスを始めましたが、非常に多くの人が参加することができ、大成功でした。そのように成功した試みがあると、「その成功の秘訣は何か」「同じようにやるにはどうしたらいいか」という話が多く出てきます。そのことが、どうしてうまくいったのかを自分たちで見直すきっかけになり、それをもとにして、ニコニコ学会βの良さをどうすれば方法論にできるかを考えるようになりました。それが今、「共創型イノベーション」という言葉で表現しているところになっています。


●ニコニコ学会βが始まった発端とは


 では、もともとニコニコ学会βが始まったのはどのようなことが発端となったのか、お話しします。

 簡単にいいますと、ニコニコ動画を運営しているドワンゴさんとのつながりが非常に強かったことはあると思います。つまり、ニコニコ学会の背景にはニコニコ動画の考え方があり、ニコニコ動画ではユーザーが動画を作って投稿する場をずっと続けてきました。しかし、会社として、科学技術への取り組みという点に関してはまだ始めていませんでした。

 一方、われわれは科学者なので、科学者や研究者のつながりがあります。そこで、両者をうまくつなげることでお互いが持っている良さを束ね合わせるような活動として、ニコニコ学会βを作ることができるのではないかと提案し、その運営などは全て研究者側がやることによって、企業色を出すことなく、さまざまな人が参加できる場にしました。そして、メディアとしての機能、つまり放送の場やステージといったものを提供してもらい、お互いのリソースを提供することによってニコニコ学会βを作っていったのです。


●学会を作るときに考えていたのはイノベーションの対象とすること


 ニコニコ学会を作るときに考えていたことは、学会をイノベーションの対象とするということです。もともとニコニコ動画と初音ミクという、非常に流行した2つのプラットフォームがあり、それに影響を受けてニコニコ学会βを考えています。つまり、初音ミクやニコニコ動画のように愛されるプラットフ...

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