テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

全員がハッピーになる質疑応答システム

創造的な場を支える仕組みを研究する(7)質疑応答の変革

江渡浩一郎
産業技術総合研究所 主任研究員/慶應義塾大学SFC 特別招聘教授
情報・テキスト
メディアアーティストで国立研究開発法人産業技術総合研究所知能システム研究部門主任研究員の江渡浩一郎氏が次の活動として紹介するのは、「つくば横の会」である。そこでは、 質疑応答において、今までになかった工夫が施されているという。いったいそれは、どんな工夫なのか。(全10話中第7話)
時間:08:24
収録日:2018/04/19
追加日:2018/11/10
≪全文≫

●「つくば横の会」の発足と、研究所をこえたつながりの構築


 次に、つくばにおいてどのような活動をしているかについてご説明したいと思います。つくばでは、「つくば横の会」を設け、つくばの面白い研究者の横のつながりを作る活動をしています。

 もともと、「つくば横の会」は割とシンプルな考え方で作られて、2015年からこの会を開催しています。2015年6月にあった第1回では、10数名の研究者が横のつながりを作る目的で集まりました。

 登壇者の共通点は極めて簡単で、ニコニコ学会βに登壇したことがあるか、もしくはそこに関係していた人です。ニコニコ学会βは5年間活動してきたので、人のつながりが増えていきました。その中に、つくばで働いていたり、つくばに関係のある人もたくさんいましたので、そういった人たちに、もう一回つくばで集まって横のつながりを作ろうというコンセプトで連絡を取りました。ですので、研究所もばらばらなら、研究の役割もばらばらですが、ニコニコ学会βのようなものに興味があり参加したいという人に来てもらって、5分ずつ短くプレゼンして議論をする場を作りました。

 その後、さまざまな形で交流するのですが、異なる研究所に一人でも知り合いがいると、その研究所で何か気になることがある、あるいは話を聞いてみたいことがあるなら、そこで話を聞くことができる、そのようなつながりを期待してこの場を作ったのです。

 以上が第1回ですが、第2回ではこんなに人が増えてしまいました。30人以上いますが、これは聴衆を交えてではなく、全員登壇者です。登壇者だけで30人以上、ディスカッション担当も加えると40人以上です。それらが全員、登壇者となる半日セッションのイベントにしました。

 人数がたくさんになってしまったのは、いろいろな人に声を掛けたら全員からOKが出てしまったからですが、実に多様な人が集まりました。特に重要だったのは、第1回は研究者が中心となって集まった場ですが、この時(第2回)はそれ以外に、つくばの民間企業、例えばつくばで「自分の技術シードをもとにスタートアップを立ち上げました」というベンチャー企業の人や、それにお金を付ける立場であるVC(ベンチャーキャピタル)の人など、シーズをもとにしてスタートアップを作ることを体験した人にも来ていただき、話をしてもらいました。そういう形で、つくばから生まれるイノベーションについて議論する場を作ってきました。これが2016年のことです。

 「常陽新聞」というつくばのローカル新聞があるのですが、そこで記事にしていただきました。


●ポストイットの導入による質疑応答の新たな方法


 ここで、どのような形でこの議論の場を作ったのかを紹介します。

 「つくば横の会」は、単純に登壇してもらって議論をするという、非常にシンプルで普通のカンファレンス方式を採用したのですが、気になったのは質疑応答です。通常であれば、発表してもらった後、ディスカッションをして質疑応答で終わるという構成です。しかし、非常に時間がタイトでしたので、それをうまくまとめるための仕組みがあるといいですし、質疑応答を今までになかった工夫をすれば、インタラクティブに、かつ聴衆にとっても満足度の高い方式にできるのではないか、と常々考えていました。そこで、ポストイットを使った議論の仕組みの導入を提案しました。

 その方法を細かくご説明したいと思います。「ポストイットディスカッション」と名付けていますが、まず来場者全員にポストイットとペンを配って着席してもらいます。その後、発表をして、ディスカッションで議論している最中に、「これを疑問に思った」とか、「これがいいと思った」など、感想でもコメントでもどちらでもいいのですが、そのことを2種類の色のポストイットを使って答えてもらいます。「面白かったです」とか、「この辺に感動しました」といった感想は緑にして、「答えてほしいこと」など質問はピンクにしました。

 そこで、例えば「何々さんへ、何とかと言っていましたが、これはどう思いますか」と書いてもらい、その右側に名前も挙げてもらいます。書き終わった後、質問であれば、その場で手を挙げるのですが、アサインしていた質問回収係が3人ほど走っていき、それを回収します。随時リアルタイムに回収し、前にいる質問選択係に渡します。そうして、集まったポストイットを分類していくのですが、質問には「何々さんへ」と書いてあるので、登壇者ごとに用意されたボードに分類していきます。

 実は分類していく人の役目が結構重要で、「この質問は重要だ」と思ったものは上の方に、「そうではない」と思ったものは下の方に分類していき、大体集まり終えたと思...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。