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野生の研究者との共創の場「ニコニコ学会β」

創造的な場を支える仕組みを研究する(3)ニコニコ学会β

江渡浩一郎
産業技術総合研究所 主任研究員/デジタルハリウッド大学大学院 特任教授
概要・テキスト
人気アイドルのまなざしを忠実に再現した「ゆきりんロボット」や、高さ4メートルの装着するロボット「スケルトニクス」など、これら独創的な研究の数々は、「ニコニコ学会β」で発表されたものである。ニコニコ学会βは2011年より活動を開始したが、どんな活動をしているのか。メディアアーティストで国立研究開発法人産業技術総合研究所知能システム研究部門主任研究員の江渡浩一郎氏が、立ち上げた背景とともに語る。(全10話中第3話)
≪全文≫

●5年間限定で行った「ニコニコ学会β」の活動


 ということで、共創に関する理論をずっと考え続けてきまして、『パターン、Wiki、XP~時を超えた創造の原則~』(技術評論社)という本を2009年に出版しました。その後、2011年から「ニコニコ学会β」という活動を開始します。

 「ユーザー参加型研究の場」と書いてありますが、ニコニコ学会のニコニコはまさしくニコニコ動画のニコニコで、そのニコニコ動画を運営しているドワンゴさんとコラボレーションし、ニコニコ動画で研究を発表している面白い研究をしている人たち(「野生の研究者」とわれわれは呼んでいますが)とプロの研究者が参加してお互いに情報交換ができる場があるといいだろうと考え、ニコニコ学会βという団体を立ち上げました。設立当初から「5年間限定の取り組みとする」と宣言して2011年から活動を開始し、2016年に活動を終了しています。

 そのニコニコ学会βが具体的にどのようなことをやってきたかというと、主に年に2回シンポジウムを行ってきました。それぞれ非常に大規模なもので、数万人から10万人の視聴者を集めて生放送しました。それ以外にも、研究会を開催したり、サマーキャンプを実施したり、また本を出版したりといった活動を続けてきました。


●「ニコファーレ」という生放送に最適化された空間で学会をやりたい


 これは「ニコファーレ」という場所の写真ですが、六本木にあり、ドワンゴさんが持っている非常に変わったライブハウスです。何が変わっているかというと、壁が全部LEDディスプレイなのです。登壇者の裏側にディスプレイがあってそれが見えるというのは当たり前ですが、登壇者の裏側だけではなく、横の壁、観客席の奥にある裏側、天井も全てLEDディスプレイになっており、そこに画像や動画を投影すると非常に没入感のある、そして包まれている感覚が味わえる空間になるのです。

 また、この場所はニコニコ生放送に最適化された空間になっています。ここでニコニコ生放送をしながらライブを行い、ネットの向こう側の何万人もの視聴者がコメントを打つと、そのコメントが壁を流れるのです。ですので、講演会場には100数人ほどしか入れないのですが、例えばネットの向こう側で10万人ほど...
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