●「ニコニコ学会β交流協会」を立ち上げ、サマーキャンプを継続
ここで紹介したいのがサマーキャンプです。ニコニコ学会βでは2011年から2016年まで5年間活動してきました。大規模なシンポジウムという形で表に出る活動をし続けてきたのがこの5年間ということです。その後、2016年に組織を解散したのですが、「交流の場だけは残してほしい」という声があり、「ニコニコ学会β交流協会」という場を立ち上げました。そこで培った人のつながりを維持するため、毎年サマーキャンプだけは実施するようにしています。
サマーキャンプは2012年から毎年続けて行っているのですが、場所は主につくばです。100人弱の人が集まり、科学の未来について自分が思っていることなど、さまざまなことを発表する場になっています。
●新しい議論方法、アンカンファレンス
そこでは、「アンカンファレンス」という方式を使って議論の場を作っていますが、これがなかなか工夫されています。皆さんに知っていただきたいので、ここで細かく説明したいと思います。
まず、アンカンファレンスについて簡単に説明します。あらかじめタイムテーブルを決めないで、空白の状態のタイムテーブルを作っておく。当日の朝、集まった時点で、参加者の発案によりそのタイムテーブルを埋め、その後、そのタイムテーブルに従って議論する。こうした方法だと要約することができます。
こうすることによって、さまざまな人のアイデアが集まった形でタイムテーブルが出来上がるので、自分たちがどのようなことを議論したいかがそのタイムテーブルに反映されやすいのです。そうすることで、自分の興味に従ったタイムテーブルができるので、とても議論に参加しやすいし、モチベーションの高い議論ができます。そのことによって、おのおののセッションはとても時間は短いのですが、とても濃密な議論を行うことができ、高速に話が弾んでいくという場ができるのです。
実際にその方法論として、具体的にどのように方法で進めているかを説明します。
アンカンファレンスを説明するときによく比喩として出す話があります。例えば、シンポジウムやカンファレンスで集まって誰かと話をしていたとき、その話がとても面白く弾んだので、そのシンポジウムを聞かずにロビーで2人でずっと話し込んでしまった、ということがあるとします。実はそれがそのシンポジウムのときに一番面白い話だったということが結構あると思うのですが、なぜそのようなことが起こるかといえば、非常に少人数の中で自分が話したいことをその場で話す、特にお互いに話すということが場の中心になっているからです。
ですが、今のカンファレンスの方法は、発表があって質疑応答があって短い議論があって終わり、ということを繰り返す構造になっています。それはそれでもちろん素晴らしい成果を挙げているのですが、そうではない方法もあるのではないかということで、それが、アンカンファレンスが提唱されている背景になっています。
●具体的なアンカンファレンスの進め方
最初に何をやるかというと、参加者にポストイットを配り、そのポストイットに話したいことを書いてもらいます。「こんなことを話したい」「今こんなことを考えています」「最近これにはまっています」「こういうことを議論したいんだけども」「こういったことを教えてほしいんだけども、誰か知らないかな」など、基本的に何を書いても良いのです。
ポストイット右側に小さく名前を書いてもらって、それをどんどん壁に貼っていきます。壁に貼った後、今度はそれをタイムテーブルにしていきます。タイムテーブルにしていくときには、アイデアが近いものを並べ替えていく作業が必要になるので、ファシリテーターが何人か集まってそれを行います。
この作業は枚数が多いと結構大変ですが、分散してさまざまな人が同時にやるとスムーズにいくことが分かったので、ファシリテーターだけではなく全員が集まって、「これとこれ、近いよね」とどんどん集めていくと、だんだんとポストイットのクラスターが出来上がっていきます。そうすると、「これは議論したい人が多そうだ」ということがだんだんと分かってくるので、これはお勧めの方法です。
その後はタイムテーブル作りです。タイムテーブルのスロットは一番短くて30分で、1時間に2セッションです。これは非常にコンパクトにまとまるので私はお勧めしたいのですが、もう少し長い方がいい場合には45分のスロットにして、2セッションで1.5時間、4セッションで3時間のスロットでやることもあります。また、1時間で1セッションという方法を取ることも...