●ウェブが未知の時代に、メディアアートで可視化した
産業技術総合研究所主任研究員の江渡浩一郎です。本日は「創造的な場を支える仕組みを研究する」と題しまして、これまでの研究成果や活動についてお話しします。
はじめに略歴ですが、もともと大学時代からメディアアーティストとして活動を開始し、作品を作ってきました。その後、産業技術総合研究所に移り、創造的な場を支える仕組みを研究しています。
まず、メディアアートについて簡単に、これまでの活動を紹介しながらお伝えします。
メディアアートとは、「先端的な技術を用いた芸術表現」と説明することができます。今、映像でお見せしているのが「WebHopper」という作品です。これは世界地図の上でウェブブラウジングの軌跡を可視化したものです。例えば、誰かがアメリカのウェブサイトを見ていたとします。そこからリンクをたどってヨーロッパに行ったとすると、仮想的にですが、アメリカにいた人がぴょんとジャンプしてヨーロッパに行ったとも言えます。そのように仮想的なさまざまな軌跡を、トラフィックを解析することでリアルタイムに情報として変換し、世界地図上にマッピングして表示するわけです。そのような作品を1996年に作りました。
そうしたところ、それが1997年にアルスエレクトロニカ賞を受賞し、その関係でアルスエレクトロニカセンターで、常設展示物として展示されることになりました。
このように、「ウェブブラウジングの軌跡を表示する」とお話しすると、「これに似たものを見たがことあるけど、これのどこが芸術作品なんだろうか」といった反応が返ってくることがあるのですが、これは1996年という時代に意味があるのです。簡単にいうと、世界地図上で可視化したのは私のこの作品が初めてで、それ以前にはそのように可視化するといった事例はなかったのです。私がこの時に考えて世界地図上で可視化したのですが、さまざまな場所にウェブサーバーが散らばっていて、自分の手元のパソコンからアクセスすることができるので、地球の裏側にも本当に自分のパソコンがつながっていることを視覚化させて見せることができる、ということです。こうした点でこの作品が評価されたと思っています。
●インターネット物理モデルの制作
その次ですが、2001年に「インターネット物...