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「共創プラットフォーム」とは何か?

創造的な場を支える仕組みを研究する(1)ウェブの可視化

江渡浩一郎
国立研究開発法人産業技術総合研究所 知能システム研究部門 主任研究員
情報・テキスト
まだウェブが世に知られてなかった時代に、いち早くウェブに注目し、メディアアートとして世に知らしめたのが、国立研究開発法人産業技術総合研究所知能システム研究部門主任研究員の江渡浩一郎氏である。江渡氏の作品を観ながら、日本におけるウェブ、インターネットの普及の歴史を振り返ろう。(全10話中第1話)
≪全文≫

●ウェブが未知の時代に、メディアアートで可視化した


 産業技術総合研究所主任研究員の江渡浩一郎です。本日は「創造的な場を支える仕組みを研究する」と題しまして、これまでの研究成果や活動についてお話しします。

 はじめに略歴ですが、もともと大学時代からメディアアーティストとして活動を開始し、作品を作ってきました。その後、産業技術総合研究所に移り、創造的な場を支える仕組みを研究しています。

 まず、メディアアートについて簡単に、これまでの活動を紹介しながらお伝えします。

 メディアアートとは、「先端的な技術を用いた芸術表現」と説明することができます。今、映像でお見せしているのが「WebHopper」という作品です。これは世界地図の上でウェブブラウジングの軌跡を可視化したものです。例えば、誰かがアメリカのウェブサイトを見ていたとします。そこからリンクをたどってヨーロッパに行ったとすると、仮想的にですが、アメリカにいた人がぴょんとジャンプしてヨーロッパに行ったとも言えます。そのように仮想的なさまざまな軌跡を、トラフィックを解析することでリアルタイムに情報として変換し、世界地図上にマッピングして表示するわけです。そのような作品を1996年に作りました。



 そうしたところ、それが1997年にアルスエレクトロニカ賞を受賞し、その関係でアルスエレクトロニカセンターで、常設展示物として展示されることになりました。

 このように、「ウェブブラウジングの軌跡を表示する」とお話しすると、「これに似たものを見たがことあるけど、これのどこが芸術作品なんだろうか」といった反応が返ってくることがあるのですが、これは1996年という時代に意味があるのです。簡単にいうと、世界地図上で可視化したのは私のこの作品が初めてで、それ以前にはそのように可視化するといった事例はなかったのです。私がこの時に考えて世界地図上で可視化したのですが、さまざまな場所にウェブサーバーが散らばっていて、自分の手元のパソコンからアクセスすることができるので、地球の裏側にも本当に自分のパソコンがつながっていることを視覚化させて見せることができる、ということです。こうした点でこの作品が評価されたと思っています。


●インターネット物理モデルの制作


 その次ですが、2001年に「インターネット物理モデル」という展示物の製作に関わりました。お見せしているのは、お台場にある日本科学未来館の常設展示物として作られたものです。

 インターネットは、「パケット交換システム」という仕組みで動いています。パケット交換とは、手元にある情報がパケットという単位に区切られ、そのパケットが自分のマシンからルーターへ、ルーターからルーターへと転送されていって、目的となるホストに到達するということです。

 映像では、インターネット物理モデルはパケットが16個の玉で表現されています。先頭の8個がアドレス部でどのホストに送るかが示されています。後半の8個がデータ部で、どんな文字を送るかが示されています。お見せしている場面ではAという文字を一つ選びまして、そのAという文字をあるホストに向かって送っているという状態になります。作ったパケットが、どんどんルーターからルーターへと転送されていって目的となるホストにだんだんと近づいていき、目的となるホストに到達した瞬間が今、表示されています。そうすると、先頭のアドレス部は捨てられ、後半のデータ部だけが拾われて、後半の8個に何の文字が含まれていたのかが表示されます。これがインターネット物理モデルの原理です。

 2017年、たまたま大規模なリニューアル工事が行われて、機能が追加されたので、使いやすくなっています。これは今も日本科学未来館で展示されていますので、良かったらぜひ観に行ってください。

 このように、先ほどのWebHopperもそうですが、この時代は、インターネットとは何か、ウェブブラウジングとは何かといったように、今、手元にあるコンピューターがインターネットといって世界中につながっていることそのものが未知で、どのようなものか分からない時代だったのです。ですので、インターネットとはどのようなものか、ということを分かりやすく見せることそのものにとても意義があり、そのようなものが求められていたので、それを芸術表現として世に発表したことが認められたのです。そのことが、私がこれまでしてきた仕事の意味です。



 その技術的背景について少し説明します。これ自体は5人のチームで作ったものですが、展示物ですのでチームとしてはとても多くの人が関わっており、その中で私はコンセプト設計を行い、実装においてはソフトウエアの製作も行いまし...
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