●自動運転のための重要なアイテムは「3次元地図」
今回からは、自動運転システムの技術面について、見ていきたいと思います。
自動運転をどのようにやるのかは、おそらくまだ研究者の間でしか、詳細には分かっていないと思います。皆さんから見ると、自動運転はステアリングとアクセルとブレーキが勝手に動くものだと思うでしょう。ただ、実際にどうやって車が決められたルートを走って、アクセルとブレーキとステアリングを制御しているのか、気になると思います。
まず、自動運転を行う前に、1つ非常に重要なアイテムがあります。それは、「3次元地図」と呼ばれる、アイテムないしデータになります。今、皆さんがよく使っているナビの地図は2次元地図で、これは上から見た地図になっています。対して、3次元地図とは実際に3次元の空間になっている地図のことです。
そこで、この3次元地図をどうやってつくるのかということから見てみます。
皆さんは、ストリートビューを見たことがあるでしょうか。普通の車に計測機器をたくさん載せて街中を走るのですが、画像機能やレーザー機能を使って街中を丸ごとスキャンすることができるようになります。スキャンした結果を実際にデータとして見ているのが、今出ている非常に高精細な映像になります。これは決して、ビデオを流しているわけではなく、実際にデータを見ている形になります。これを人間が見た場合、どこがビルで、どこが道路で、どこが白線なのか、そういったことが目で見て分かるくらい、高精細なものです。しかし、これは、写真やビデオではなく、データです。コンピューターグラフィックのデータに近いのですが、3次元で構成されています。
●3次元地図データへの解析情報の埋め込み
このような3次元地図のデータを使うのですが、実際に自動運転を行うときスキャンしたデータをそのまま使ってしまうと、計算的な視点ではかなり重いものになるので、自動運転をする前にできる限りの処理を行います。先ほどの3次元地図データには、そもそもどこに白線があって、どこにビルがあって、どこにレーンがあるかという、人間が目で見れば一発で分かるような情報があります。しかし、これをコンピューターに処理させようとすると、そこそこ長い時間がかかってしまいます。そこで、このデータを自動運転の車が走りながら解析するのではなく、あらかじめ解析した状態で自動運転の車に搭載する、といった方法を採っている自動運転システムが多いのではないかと思います。
映像では、そうして抽出した情報を3次元の地図データに貼りこんだものを見て頂いていますが、ここには実は2種類のレイヤーのデータが存在します。1つは今、抽出した道路に関する情報です。レーンや交差点、横断歩道の情報、あるいは細かい点でいうとポールが立っている位置や、信号なら赤青黄色それぞれの細かい位置など、そういったものが示されているような3次元の道路情報に関するデータがあります。もう1つは、道路の情報ではありません。映像には白黒で無数の点として映っていますが、構造に関する情報、つまり地形についての情報です。この地形の情報と道路の情報という2つを組み合わせて、「3次元地図データ」と呼んでいます。
この3次元地図データがないと、自動運転システムはなかなか市街地を走ることが難しいのです。なぜかといいますと、市街地を走る上で一番大事なことは、自分の位置を知ることだからです。つまり、今どこを走っているか、それを知ることが重要で、しかもどの車線の右寄りなのか左寄りなのかということも知る必要があります。それは、左寄りだったら側道の自転車に気を付けないといけませんし、右寄りだったら右車線の車に気を付けないといけないからです。そのくらいの精度をもって、自分の位置を知らないといけません。このように3次元地図データは、自分の位置を知るために非常に役に立つのです。
●車載センサーと3次元地図データを用いた位置推定
ただし、3次元地図データがあるだけでは、自分の位置が分かりません。今度はもう一つ、車側に搭載されたセンサーを使います。
位置情報を知るというと、おそらく皆さんは、GPS等を想像すると思います。しかし、GPSは残念ながら、どんなにがんばっても、例えばトンネルであったり、新宿の一部の地域のようにビルがたくさん立ち並ぶところであったりすると、大きくずれてしまうことがあります。10メートル、下手したら50メートルくらいずれることもあるのです。そうなると、自動運転はできません。自動運転の場合、誤差が常にセンチメートルという精度で自分の位置を把握しないといけないのです。
そこで、自分の位置を知るための技術として用いられるものに、「位置推定」という技術があります。これは、先ほどお見せした3...