映像で考えるエチオピア
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エチオピア正教会から邪教とされる憑依儀礼「ザール」
映像で考えるエチオピア(3)宗教儀礼「ザール」とは何か
川瀬慈(国立民族学博物館学術資源研究開発センター教授/総合研究大学院大学教授 /映像人類学者)
エチオピアの人々は実際に、どのように宗教を信仰しているのだろうか。国立民族学博物館人類基礎理論研究部准教授の川瀬慈氏は、エチオピア北部の「ザール」と呼ばれる憑依儀礼に着目する。霊媒者が精霊と人々のコミュニケーションを仲介し、独特の言語、音楽を用いて儀礼がなされるというのだ。映像を観ながら、その実態について川瀬氏の解説を聴こう。(全5話中第3話)
時間:15分59秒
収録日:2018年7月13日
追加日:2018年12月9日
≪全文≫

●「ザール」と呼ばれる儀礼がエチオピア北部に存在する


 エチオピアでは、キリスト教、イスラムが主要な宗教ですが、祖先崇拝、あるいは自然に霊が宿ると捉えるアニミズムなど、さまざまな在来宗教と信仰の形態が確認されています。その中でも精霊と人のコミュニケーションを仲介する霊媒者が、エチオピア地域社会の政治経済、社会の中で重要な役割を果たすケースも報告されています。

 エチオピア北部には「ザール」と呼ばれる儀礼があります。このザールは、北アフリカ、東アフリカから中近東に広く分布する憑依儀礼です。エチオピア北部はこの憑依儀礼の中心地として知られています。このザールという儀礼においては、「コレ」と呼ばれる精霊が憑依の媒体となる女性に憑依するとされています。憑依の媒体は、アラビア語起源の語で、馬を意味する「ファラス」という言葉を使い表現されます。すなわち精霊が霊媒を乗りこなし、彼あるいは彼女の口を通して人々へメッセージを与えると理解されるのです。

 ザールは儀礼の依頼者の要請によって開催される場合と、宗教に関わる祝祭日に開催される場合があります。依頼者の要請によってこのザールが開催される目的には、病気の治癒や、人間関係の改善、あるいは学業の成績の向上であるとか、失くしたものを探すなどの目的が挙げられます。宗教に関わる祝祭日には、代表的なものにエチオピア正教会の聖人をたたえる日などが挙げられます。これらの祝祭日とザールの開催が、なぜ関連するのかは定かではありませんが、エチオピアの霊媒たちの言説によれば、精霊の好むマメであるとか、あるいはお香であるとか、地酒などが、こういった祝祭日においてはたくさん各家庭に集まりやすいから、そういったものを求めて精霊たちがやってくるといわれています。


●エチオピア正教会は「ザール」を邪教とするが、参加する修道士もいる


 一方で、エチオピア北部の代表的な宗教である、エチオピア正教会はこのザールを邪教と認識しています。私が調査を行っているエチオピアの古都ゴンダールのある修道士は、このようにザールの起源伝承を語ります。

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