約1兆6,000億円でスピリッツ事業の大手・ビーム社を買収したサントリー。だが、よく知られているように、ビーム社を買収後、先頭に立って統合を推し進めた新浪剛史氏は、サントリー出身でないばかりか、出身業界も違う。会社の統合、とくに海外の会社との統合においては、お互いの社風・文化の摺り合わせが必須だが、生え抜きではない新浪氏はいかに臨んだのだろうか。お互いの価値を足して、最大のプラスを生むために、いかなる工夫をしていったのだろうか。(全7話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之10MTVオピニオン論説主幹)
サントリー流「海外M&A」成功術
企業文化の違いを越え、いかに価値を創造するか
サントリー流「海外M&A」成功術(2)成果を生む改革
経営ビジネス
時間:13分14秒
収録日:2019年3月25日
追加日:2019年8月8日
収録日:2019年3月25日
追加日:2019年8月8日
≪全文≫
●お客さまとの「接点」にこだわるサントリーイズム
神藏 当時、マットCEOは何歳でしたか。
新浪 今度56歳か57歳になりますから、当時は51歳か52歳ではないでしょうか。それで、上述の彼の言ったことは、私は東京でも聞いていなかったので、「そうなんだ、彼に任せたんだ」と思いました。この約1兆6,000億円もした会社が、その人間に託されていいのだろうかと思いましたが、その人が私たちの考え方にマッチしていれば、それでいいのではないかとも思いました。そう考えて、週1回ほどのペースでテレビ会議で話をして、彼がどのようなことを考えているのかを理解しようと思いました。
彼も無礼な男ではありません。私が何を考えているか、株主として伝えたことについても、彼はやらなければいけないことを当然理解していました。縷々(るる)、考えていることをいろいろ聞いて、擦り合せをしました。一方で、私自身も社長就任当初は、サントリーという会社について全て知っているわけではありませんでしたし、いろいろな人と会って勉強するのにも時間を要しました。
神藏 確かに、新浪さんのキャリアは、三菱商事、ローソンからサントリーですから、全然違う業界に移られました。商社、流通からメーカーに変えたわけですよね。
新浪 そうですね。その時に、1週間に1時間から1時間半、佐治信忠会長との時間を必ず設けていただくことにしました。それが私の入社の条件でしたから。佐治会長からは「新浪さん、それは当たり前だよ」と言われましたが、いまだに続いています。私の海外出張がない限りは、1週間に1回必ず会って、いろいろな話をしています。そういうコミュニケーションの良さは、私にとって非常にありがたいことですが、当時、マットCEOとのやりとりなど、起こっていることをつぶさに伝えると、「やはりビームは、私たちサントリーのものやろ」「社長、そこはおかしい」と、認識が違うのです。
私もいろいろと勉強していくと、これはまずいなと気づきました。アメリカには、昔の禁酒法以来のスリーティアシステムといって、お酒をつくった人はディストリビューターに売らなければならず、ディストリビューターが小売りに売るということになっており、製造側が小売りにインフルエンスしたらいけないことになっています。しかし、小売りの現場を見に行ってもいいですし、現場でいろいろな話をしてもいいので...
●お客さまとの「接点」にこだわるサントリーイズム
神藏 当時、マットCEOは何歳でしたか。
新浪 今度56歳か57歳になりますから、当時は51歳か52歳ではないでしょうか。それで、上述の彼の言ったことは、私は東京でも聞いていなかったので、「そうなんだ、彼に任せたんだ」と思いました。この約1兆6,000億円もした会社が、その人間に託されていいのだろうかと思いましたが、その人が私たちの考え方にマッチしていれば、それでいいのではないかとも思いました。そう考えて、週1回ほどのペースでテレビ会議で話をして、彼がどのようなことを考えているのかを理解しようと思いました。
彼も無礼な男ではありません。私が何を考えているか、株主として伝えたことについても、彼はやらなければいけないことを当然理解していました。縷々(るる)、考えていることをいろいろ聞いて、擦り合せをしました。一方で、私自身も社長就任当初は、サントリーという会社について全て知っているわけではありませんでしたし、いろいろな人と会って勉強するのにも時間を要しました。
神藏 確かに、新浪さんのキャリアは、三菱商事、ローソンからサントリーですから、全然違う業界に移られました。商社、流通からメーカーに変えたわけですよね。
新浪 そうですね。その時に、1週間に1時間から1時間半、佐治信忠会長との時間を必ず設けていただくことにしました。それが私の入社の条件でしたから。佐治会長からは「新浪さん、それは当たり前だよ」と言われましたが、いまだに続いています。私の海外出張がない限りは、1週間に1回必ず会って、いろいろな話をしています。そういうコミュニケーションの良さは、私にとって非常にありがたいことですが、当時、マットCEOとのやりとりなど、起こっていることをつぶさに伝えると、「やはりビームは、私たちサントリーのものやろ」「社長、そこはおかしい」と、認識が違うのです。
私もいろいろと勉強していくと、これはまずいなと気づきました。アメリカには、昔の禁酒法以来のスリーティアシステムといって、お酒をつくった人はディストリビューターに売らなければならず、ディストリビューターが小売りに売るということになっており、製造側が小売りにインフルエンスしたらいけないことになっています。しかし、小売りの現場を見に行ってもいいですし、現場でいろいろな話をしてもいいので...
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