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“経済相互依存の武器化”が始まっている

国際秩序の変容~危機の予兆(2)地経学化する地政学

概要・テキスト
戦間期と現在では、関税率の上昇が類似している。戦間期はこれにより世界が保護主義に傾いた。さらに、当時はラジオが大きな役割を果たしたが、現在ではインターネット等のデジタル化により、情報操作や金融情報のコントロールによる経済制裁が容易になってきている。そこで“経済相互依存の武器化”という表現を使い、こうした事態を「地政学はますます地経学化してきている」と船橋洋一氏は語る。(全7話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:07:45
収録日:2019/09/03
追加日:2019/11/25
カテゴリー:
≪全文≫

●世界は少しずつブロック経済化している


―― 明らかに2010年代は、世界中がものすごく変わっていく時代でした。

船橋 歴史は同じようには繰り返さないですし、今から見ても「あの時(第二次世界対戦前)と今はこう似ている、当時はああだった」と読み込みすぎてもいけないんだけれど、やっぱり、過去の歴史と比較して、今の状況には怖さを感じます。

 例えば、昨今の中国に対するアメリカの関税引き上げは、積もり積もってきました。第4次とか。現在では、すでに関税は平均で21パーセントになっているのです。これは、1930年代のアメリカの関税の平均の関税率とほぼ同じか、あるいはこれを上回るぐらいになってきました。1930年代の初め頃というと、「Smoot-Hawley Tariff Act」の時代です。

 これは1000以上のものについて関税をかけるものでした。それによって、アメリカ、そして世界が一気に保護主義に行くじゃないですか。イギリスも、連邦だけの特権関税システムにしました。そこで、日本などははじかれていくわけです。

―― ブロック経済にはじかれだした、と。

船橋 世界はブロック経済に入っていくのです。現在は、それとほぼ同じようなところまで、関税が高くなっているということです。あっという間ですね、これも。

―― ほんとにそうですね。

船橋 あっという間です。

―― 決めてから、ほんと早いですね。

船橋 早い。


●デジタルによるグローバルサプライチェーンが急激に増殖


船橋 もう1つ注目すべきことがあります。あの時代には、ラジオが決定的に、今でいう一種のポピュリズムをあおりました。また、ラジオの存在によって、何10万というコミュニティが一気にできてしまったといわれています。現在では、その代わりになるものがデジタルでありネットであり、特にソーシャルネットワークです。デジタルの部分において、ネットワーク効果も含めたグローバルサプライチェーンが、ものすごい勢いで生まれてきているということです。

―― 確かにそうですね。ラジオとは比較にならないくらいの勢いです。

船橋 比較にならないほど、ですね。いろいろなデータを使ってこういうものを操作して、内面まで指導し、誘導します。朝から晩まで誰かを見て、また見られているという状況です。すでにこれらが全て、永遠に消えないような形でデータ化されていくという時代に一気に突入し...
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