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真田幸村と木村重成の最期の逸話にみる「武辺の道」

戦国合戦の真実(6)武士が自らの「首」に込めた思い

中村彰彦
作家
概要・テキスト
木村重成
勝てば生き長らえるだけでなく、恩賞によって一国一城の主になれる可能性もあるのが合戦。しかし同時に、相手に討ち取られ、首実検の場に自らの首をさらすことになるかもしれないのも合戦である。そこで出陣前に香を焚くという。そこには、たとえ首になろうとも美学をつらぬく武士の心得がある。(全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:40
収録日:2019/11/06
追加日:2020/01/12
≪全文≫

●戦場での手柄の証となる「首」


中村 今度は戦争の終わり方をお話ししましょう。

 日本の場合は、何千キロも向こうで勝負を決するということがありませんでしたので、兵站線をどのようにつくるかについては、あまり発達しませんでした。悪しき習慣ではありますが、現地調達主義で、自分たちが持っていった食料が足りなくなったら、その辺りに乗り込んで、全部略奪して、それを食べ物にする。ついでに女性も略奪して、自分の奥さんにするケースもありますが、売り払うことも多い。ですから上﨟(じょうろう)を売りに出しているから「女郎(じょろう)屋」といわれるわけです。

―― 身分の高い人たち(女性)のことですね。

中村 上﨟、つまり高級な奥女中さんたちがかどわかされて、身を売ることになる。それで「じょうろう」が訛って「じょろう」になるのですね。一方、男はだいたい殺されるか、奴隷身分に落とされる。そういう悲劇がいろいろなところで起こっているわけです。

 戦が終わるときには、誰が、どのような手柄を立てたのか、今、企業が人事査定を行うようにしっかりと査定する。

 では、どういう査定をするのか。まず、討ち取った際、必ず首を斬って、主にお見せして、評価を受けなくてはいけません。ですから、戦場で敵と渡り合って、首尾よく相手を討ち止めたときのために、必ず侍はスイカが入るくらいの首袋を何袋か持っているわけです。首袋は腰に付けるので、腰のあたりに血がついて大変なことになります。そして、陣地へ引き揚げて取り出す頃には、汚れきっていますから、きれいに洗う。戦に行くときは頭に鉢巻を締めて、烏帽子を被って、その上に兜をしますので、髷を結っていたら邪魔になってしようがない。そこで、いわゆる「大童(おおわらわ)」という、ざんばら状態にします。そのため、討ち取られた敵の首も当然同じ恰好になっているので、きちんと汚れや血の気を拭ってやって、髷を結んでやるのです。

 平家時代から高級な武士たちは、化粧をする。シミを隠す化粧、あるいは公家と同じようにお歯黒をする。いい恰好に結ってやって、お歯黒をさせると、無名の首でも有名な人、大物を討ち取ったように見えて、自分の査定が上がる可能性があるのです。


●平家以来の優にやさしき“もののふ”の心がけ


中村 その首を首桶という桶にちゃんと入れる。首実検をするのにも時間がかか...
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