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日本のレーダー開発技術の基礎が潜水艦によってもたらされた

若狭湾海中調査と潜水艦曼荼羅(9)ウルツブルグと曼荼羅

浦環
東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役
概要・テキスト
『幻のレーダー・ウルツブルグ』
(津田清一著、CQ出版社)
戦時下の潜水艦は、多くの人と技術をヨーロッパから日本に運んできた。ウルツブルグと呼ばれるレーダーが、潜水艦によって日本に運ばれ、その後の日本におけるレーダー開発の技術の基礎となる。浦環氏の解説は、潜水艦と人と技術の間の興味深いエピソードに焦点を当て、潜水艦曼荼羅の面白さを指摘する。(全10話中第9話)
時間:06:39
収録日:2019/03/14
追加日:2020/04/09
≪全文≫

●呂500の発見から2人のドイツ人の情報を内田氏の著書を通じて得る


 次は、シュネーヴィントとシュタインホフの話ですが、先ほど詳しく触れたので、ここでは省略します。われわれが呂500を発見したという情報は公表されていましたが、この話を教えてくれたのは、呂500のことを調べている内田弘樹氏です。この方は呂500に関するさまざまなストーリーを詳しく調べて、このような冊子を2018年12月に発表しました。

 よく調べてくれていて、そこにシュネーヴィントとシュタインホフに関わる話も、詳しく書かれていました。彼の本で勉強したので、私の知識は彼の本から得ています。インターネットでわれわれが取り組んでいることを発信すると、われわれが取り組んでいることに関心を持つ人々とつながりができて、彼らの持っている知識がまたつながっていくというサイクルがあります。良い情報社会になっていると思います。


●ウルツブルグというレーダーをめぐる日独のやりとり


 次はこのウルツブルグについて、お話ししたいと思います。ウルツブルグは、最終的には伊58や、先ほどいった伊47などの潜水艦に取り付けられる2号2型電探のひな形です。

 この本は、津田清一氏が執筆した『幻のレーダー ウルツブルグ』という本です。これは、とても興味深い本です。表紙にあるのはドイツがつくったウルツブルグですが、日本のレーダー開発史は、このウルツブルグから始まります。

 ウルツブルグは一体どのようにできたのでしょうか。1941(昭和16)年、太平洋戦争が始まる直前にさまざまな陸軍、海軍の人々がドイツを訪れ、そこでレーダーを開発しているということを知ります。それがウルツブルグです。先ほど言った山下奉文中将などの人々がドイツに行って、新兵器の技術を視察していたのです。そこで、このレーダーを導入する計画を立てました。

 図面を輸送して、生産を開始して、1943(昭和18)年にはウルツブルグを日本でつくるという導入計画が立てられました。しかし、実際には、伊30がシンガポールまで運んできたのですが、先ほど言ったように1942(昭和17)年10月13日に沈没してしまったので、この路線は頓挫しました。

 それでどうしたかというと、1941(昭和16)年にウルツブルグの情報を日本は...
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