●米軍情報と他の情報の食い違い
まず米軍情報を見てみましょう。この米軍情報は伊58を調べる際にも用いていました。そこにリストがあって、OFF MAIZURUで3艦沈めましたと書かれています。伊121、呂68、呂500です。ここに緯度と経度が書かれています。
それが先ほどの地図のこの位置です。伊58の経験だと、米軍の位置データはわりと正確でした。
ですので、これも正確ではないかと最初は思っていました。しかし、深田サルベージがここに2艦あると言ったので、食い違いが生じています。
米軍情報によると、同じ場所に3艦沈めています。また緯度と経度を見ると、非常にきりの良い数字になっているので、これはかなり怪しいと思いました。それでも、よりどころになる情報はこれしかありません。さらに、米軍情報では1946年5月7日に処分したと書いてあります。しかし、日本の『潜水艦史』によれば、1946年4月30日に処分したと書いてあり、食い違っています。以上のことから、この情報はかなり怪しいと考えられます。
●マルチビームソナーを用いた調査方法
以上のことに基づいて、調査を行います。前回の伊58の際には、日本テレビとウィンディーネットワークが調べた海底の地形図があって、潜水艦の位置はもう分かっていたので、潜水艦の種類を確定するのが目的でした。
しかし、今回の場合は、2艦は深田サルベージの情報がありますが、もう1艦の情報がないので、探さなくてはならない。どこをどう探すか。もちろんこれかもしれませんが。これは場所が分かっているので、探す必要はないです。ROVを潜らせて、前回と同じように、これが何であるかを見に行けば良いのです。
どうやって探すかというと、このマルチビームソナーを使って、つまり伊58でウィンディーネットワークや日本テレビがやったような、海底のマップをつくって潜水艦を探すことがまず重要です。その道具はこれです。ウィンディーネットワークが持っている道具ですが、SONIC 2024という道具を使えば、掃除機で掃除をするように、海底の細かい地形図を作ることができます。もし海底に潜水艦があれば、この道具で発見することができます。
しかし、この情報が正しくなければ、この広い若狭湾をずっと調べるのには相当時間がかかります。私たちは2018年6月に第1次調査を行いましたが、その際には、とにかく時間をかけて探せるところは全部探して、探し出そうという目標を立てました。なぜなら、もう1艦がどこにあるかが分からないので、探すのに時間を食ってしまうわけです。何かを見つけた場合には、それが何であるか調べるためにも、別の道具を準備しなければならないので、第1次調査ではどこに潜水艦があるのか調査することに専念しました。
一方、40年前に深田サルベージが調査した際には、このようなマルチビームソナーはなかったので、魚群探知機のような、シングルビームソナーで調べていました。それを用いて、延々潜水艦がありそうな場所を調べていたわけです。とても大変な作業です。われわれは近代機器を用いるので、作業としては楽になりました。昔、深田サルベージがこのように調査をしていた際は、さぞかし大変だったろうと思います。記録にもそのように書いてあります。
これはマルチビームソナーで調べた呂500です。この呂500がこのように見えたら、次にROVを使って調べました。この際には、いであが持っているSeeROVERという、中型から小型に近いROVを用いました。重さは72キロで、手で下ろすことができます。つまり、近くに寄ってビデオ撮影ができるわけですね。それによって、これが何なのか分かります。
●生放送を通じて潜水艦発見の喜びを視聴者と分かち合う
マルチビームソナーで調査する際には漁船を借りる必要があるので、越前町漁業組合の船を借りました。そこにインターネット衛星きずなのアンテナを付けて衛星通信をして、ドワンゴのニコニコ生放送を通じて全国にリアルタイムで放送したというわけです。ニコニコ生放送のここのコメントは、ちょうど「これがユーボートだ」と言ったときに来たものです。「やった」という反応が見られて、とてもうれしかったです。
ここに「ロン」と書いてあるのは、潜水艦を見つけたときに何と言おうかとあらかじめ取り決めていたのです。アメリカ人は「ビンゴ」と言いますが、戦争に関係して、人の生き死にに関わる以上、「ビンゴ」は失礼なので、船の上で考えて「ロ...