●二回の世界大戦とユーボートの歴史
今回は、2018年の6月に行った若狭湾に沈むユーボートの調査のお話と、ユーボートにまつわるさまざまな技術的なお話をしたいと思います。
われわれのターゲットは呂500という名前の潜水艦になった、ユーボートのU-511という潜水艦です。この潜水艦は若狭湾に沈んでいます。前回の伊58と同じように、戦争中には破壊されませんでした。戦後、1946年4月に若狭湾で3艦の日本海軍の潜水艦が海没処分されましたが、そのうちの1艦が呂500、ユーボートU-511です。処分された場所は分かっていませんでしたが、われわれがそれを探し出したというわけです。
「ユーボート」という言葉はドイツ語です。ドイツの潜水艦を世界的に一般にはユーボートといいますが、ドイツ語では「Unterseeboot(ウンターゼーボート)」といい、「潜ることのできるボート、軍艦、水の下の船」という意味です。一般名詞なので、ドイツ語ではユーボートという言葉はいわゆる潜水艦を指していますが、ドイツ以外でユーボートといえばドイツの潜水艦を指します。
ユーボートがつくられたのは第一次世界大戦中で、ドイツはユーボートによって非常に大きな戦果を挙げました。第一次世界大戦中に300隻が建造されて、撃沈した船は5,300隻にも上ります。これによって、イギリスは窮地に陥りました。その後、第二次世界大戦中にはユーボートは1,100隻つくられて、商船3,000隻、空母2隻、戦艦2隻を撃沈しています。華々しい成果を挙げているわけですね。
第一次世界大戦中に、ユーボートは一体何をしていたのでしょうか。イギリスとドイツが戦っていたのですが、イギリスは日本と同じように島国なので、戦争を維持するためには補給をする必要があります。例えばオーストラリアや、アフリカ、アメリカから物資が送られてきますが、その補給線を破壊していたのです。これを通商破壊といいます。簡単にいえば、兵糧攻めです。
第一次世界大戦が始まった時に、兵糧攻めの道具としてユーボートは非常に大きな成果を挙げました。加えて、ドイツは無差別に撃沈していました。商船も見つければ魚雷を発射して、沈めていました。
無差別攻撃を行うと宣言をしたことによって、アメリカが第一次世界大戦に参戦します。つまり、荷物を運んでいる民間船を...