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潜水艦3艦の発見は世界各地で大きな反響を呼ぶ

若狭湾海中調査と潜水艦曼荼羅(6)調査で得た成果と反響

浦環
東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役
情報・テキスト
長期間に及ぶ調査の結果、ついに若狭湾で潜水艦が発見された!豊富な画像とともに、浦環氏が3艦の発見に至る経緯とどのように発見された潜水艦が当初目標とされた3艦に一致すると判断したのか説明する。この結果はすぐに公表され、世界各地で大きな反響を呼んだ。(全10話中第6話)
時間:10:29
収録日:2019/03/14
追加日:2020/03/19
タグ:
≪全文≫

●3艦はどこに沈んでいたのか


 それでは、次は調査の内容についてお話ししたいと思います。この図は、発見したマルチビームソナーによって得られた3艦のデータを示しています。呂68、呂500、伊121です。深田サルベージは、おそらく呂68は呂68として見つけていたのだと思います。しかし、もう1つ見つけたものを伊121として報告していますが、実際には呂500を見ていたのではないかと思います。彼らの調査報告書の中の記述を見ると、大きさはほとんど同じで、形もそれほど大きな特徴がありません。80メートルの深さでは、そう長時間潜っていられないので、十分に調査できなかったのでしょう。ただ、プロなので、ある程度外形などは調べています。

 位置的にはここが冠島で、丹後半島があり、船宿、つまり船のガレージのようなものがあり、有名な伊根町の漁港がここです。この辺りは京都府の人たちの漁場になっているようです。われわれがマルチビームソナーで調べたのがこの範囲です。およそ7~8時間、2日にわたって、この観測を続けました。

 なかなか見づらいのですが、一番南にある丸が呂68、それから真ん中にある丸が呂500、一番北にある丸が伊121です。探索範囲がこのような形をしているのには、理由があります。最初は真ん中付近を調べていて、すぐに呂500が見つかりました。ここから南下していくと、呂68を発見して、2艦沈没していることが分かりました。

 その次に、もう1艦の探索に移りました。まず南にあるかもしれないので南を調べて、それから北に向かいました。まず北東の部分を調べましたが、ここにはありませんでした。最終日に、北西部にあるに違いないと推定して、探索を進めました。このように推定しなければ、面積が広くて、探索はなかなかうまくいきません。

 最初に2艦が見つかったので、その2艦の延長線上に残りの1艦が沈没しているのではないかと考えられます。2艦の延長線上にあるとすると、等間隔で沈没しているとすれば、北西のこの辺りではないかと推測されました。ただ、この時には真ん中の沈没船が呂500であるという確証はありませんでした。一番北の沈没船は呂68ですが、真ん中が伊121であって、3艦が一直線上に並んでいると仮定すれば、呂500は南東の方角にあるかもしれない。

 この仮定の下に、南東の辺りを探索していました。しかし、真ん中の沈没船が呂500であれば、伊121は北西にあるはずです。

 実際に発見された場所はここです。最終日、4日目で相当疲れていたのですが、探索を始めてすぐこの場所で見つかったので、万歳といったところでした。


●調査の中で得た映像の詳細な解説


 これは呂500のマルチビームソナー映像です。非常にきれいに形が残っています。横倒しになっておらず、ちゃんとした形で鎮座しています。キールや、ブリッジを見ることができるので、潜水艦であることは間違いありません。

 こちらはより分かりやすい映像です。右側に潜舵(せんだ)が見えています。さらにその先は舳先です。先ほども言いましたが、この映像は80メートルの深さで撮られたので、1パーセントの解像度とすると、80センチに1個の点を取ることができます。この船の長さは約70メートルなので、横に約100個の点があります。ですので、かなり細かいところまで見ることができます。この映像では潜舵が見えていて、ブリッジの大きさから考えても、ユーボートであると推測できます。

 今のデータを横から見たように描き直したものが、こちらの映像です。

 下にあるユーボートの図面に当てはめると、ブリッジの位置が合致していて、舳先から後方部まで残っているということが分かります。

 この映像は、ROVを用いて撮影した、決定的なシーンです。左下の図面は、呉で作られたものです。先ほど述べたように、ユーボートはドイツから呉に来航しました。来航した後呉で、この船はどのように使えるか、この船の技術をどのように利用すれば良いか、などを調べました。その際の図面によれば、右側にムアリングホールという部位が見て取れますが、それがこちらの映像に映っています。

 先ほどの写真を見ると、伊121と呂68が並んでいますが、舳先の形がそれぞれ違います。ムアリングホールが付いているのは、ユーボート、呂500だけです。

もちろん全く異なる潜水艦、例えばア...
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