●「烏合の衆によるご都合主義」の民主主義
執行 ここで一つだけ思い出したのですが、民主主義を最初に主張して作った人の1人に、ソロンというギリシャ人がいます。ペリクレスと同じ時代のアテネの政治家で、民主主義政治を敷いた最も有名な人の1人です。この人の言葉に「人間のためだと言う人を決して信じてはならない」という言葉があります。ソロンの「断片集」45番に出てくる言葉で、我々は人間だから人間のためだということを信じてはならない、つまり「手前味噌」ということです。自分たちが人間なのだから、「人間のため」と言う人を決して信用してはならないと。
―― それは深いですね。
執行 これを僕が一番重要視しているのは、民主主義政治という手法を作り出した最初の1人であるギリシャのアテネのソロンが言っているからです。ソロンは、ギリシャの七賢人の1人です。
―― これは凄いですね。「我々は人間なのだから、人間のことを思わなければいけないと言う人たちに従ってはならない」。
執行 そうすると、最初の人(ソロン)は英知でそう言っているわけです。ところが、今の人は、みんな人間のためにやっています。言葉としては「ヒューマニズム」です。つまり、民主主義を生み出したギリシャの哲学者や政治家、ペリクレスやソロンのレベルから言えば、今の人は全部、嘘だということです。嘘でなくても、少なくとも手前味噌です。「人間のため」というヒューマニズムが出たときは、中心に神がいたわけです。神の命令こそが絶対でした。その中で人間の意見がどうかという話です。
もう一つ、神から一段下がった状態が「絶対王制」です。王様がいて、王様の上に神がいる。議会政治ができたときは、庶民が議会を作りました。王様の命令に対して、庶民が議会で「それはやり過ぎだ」とか「それは横暴だ」とか、ちょっとした自由を求めるのがクロムウェルらの言う英国議会政治です。しかし、今は国王がいません。国王がいないということは、命令者がいないということです。命令者がいないところでは、実は民主主義は作動しないのです。
命令者がいないところで作動している民主主義とは、要は烏合の衆による、自分たちのご都合主義です。悪いですが、今の選挙はそうなっています。これはある意味では、もう政治ではありません。
国王がいるなら、まだわかります。議会とは本来、国王に対する対抗...