●アメリカ合衆国はプロテスタント信仰から生まれた
―― 少しは自由があってもいいのでしょうか。
執行 あくまで「少し」です。最初のプロテスタントは、非常に厳しいものでした。このことは独立したときのアメリカ社会からわかります。当時のアメリカは、プロテスタント社会でした。たとえば(ナサニエル・)ホーソーンの『緋文字』などといった文学がありますが、みんなが本当の神の掟で生きている様子が描かれていて、読めばそのすごさや大変さがわかります。しかし、アメリカを生んだのもプロテスタントですから。われわれが民主主義の基本としているのはアメリカ文明ですが、アメリカ合衆国を生んだのはプロテスタント信仰であり、独立運動もプロテスタントが起こしたものですから。
―― 確かにそうですね。
執行 アメリカが独立した頃は、ご存じのように、ものすごいプロテスタントの社会でした。これは歴史記録においても、文学においても全部そうです。
―― 英国国教会から離脱した人たちが来たわけですからね。
執行 そうです。離脱してプロテスタント信仰に生きていた人間です。英国でクロムウェルがピューリタン革命を起こしたものの、やがて英国国教会に負け、プロテスタント信仰を守るためにピューリタンがアメリカに移民したわけです。そして、しばらくして独立戦争をしてアメリカを作りました。
だからハーバード大学を中心にアメリカのアイビーリーグと呼ばれる大学は、全部プロテスタントの教派の大学です。日本人が思う学問ではないわけです。
―― 確かにそうですね。
執行 プロテスタントの信仰を研究するためにプロテスタントの各宗派がそれぞれ大学を作ったのです。
―― 確かに今でもハーバードは宗教、哲学、歴史、これらがすべての中の上位概念に来ますよね。
執行 今はだいぶ世俗化しましたが、19世紀まではプロテスタントの学理を学ぶのがアイビーリーグ8校の主力で、そのくらい大変だったのです。民主主義を作ったアメリカでさえ、アメリカはプロテスタントが作ったということを忘れてしまった。アメリカ人が忘れていますから、日本人も忘れてしまったのです。では、プロテスタントとは何かというと「聖書のとおりに生きる」ということです。
―― 聖書のとおり。
執行 プロテスタントはそうです。ものすごく厳しい。ヨーロッパにあったカトリックは神様の代理人...