●この30年間で他国はどのように発展してきたのか
では、どのように対策していけば良いのか、というのが次の課題です。1980年代は日本の時代でした。アメリカのシリコンバレーには、インテルなどさまざまな会社がありましたが、どの会社も日本の半導体に勝てませんでした。日本の製品の品質は断然良かったのです。
結局、インテルなどは方針を転換してデザインに特化しました。その方向で努力を続けるうちに、アメリカに外国人がたくさん入ってきました。例えばイーロン・マスクという人がいますが、彼は南アフリカの出身です。アップル創業者のスティーブ・ジョブスは、父親がシリア人です。彼らはアメリカ社会にとって、異質の人々です。彼らが、アメリカだけではなく、世界を相手にしてビジネスに打ち込みました。グーグルであれば、世界中に最高の情報を提供することを目指しています。フェイスブック創業者のザッカーバーグはアメリカ人ですが、世界中皆を友人としてつなぐという信念を持っています。アップルは世界最高のマシンをつくるといっています。全ての目標が世界にあるのです。そうした企業が起こした変化は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と呼ばれています。
対して、最初、中国はコピー、つまり「まねる」だったと思いますが、そのうちに「まねぶ」になり、今では「まなぶ」になり、さらには追い越すになっています。ファーウェイなどは完全に追い越しています。今、中国はBATHと呼ばれる、バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの企業が急速に発展しています。アメリカではGAFA、つまりグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルです。これに最近もう一つNが入ってきました。これは、ネットフリックスです。これからは放送から映画まで全て、ネットフリックスが提供するようになるでしょう。
そこから見ると、日本はもう3周遅れくらいに、大きく離されました。そのようなパラダイムチェンジがなければ、追いついていけません。人材も育てていません。例えばシリコンバレーはどうしてあれほど発展できたかというと、スタンフォード大学が果たした役割が大きいのです。スタンフォード大学は組織的に人材育成を行いました。ですから、日本も学べば同様にできないことはないはずです。
実はインドがこれから発展してくると思います。インドに、バンガロールという都市があります。
最初は下請けでしたが、急速に実力を身につけ、ついにスタートアップなどで、アメリカを追い抜く企業が出てきました。今、バンガロールでITに従事する人は100万人といわれています。しかもインドの国民は、平均年齢が25歳なのです。終戦直後の日本も、そういった社会だったので高度成長しました。これからすごいことが起きるはずです。
日本も少しずつ力を注ぎ始めています。デジタル・トランスフォーメーションに対して自民党が動き出して、先兵として走り出したのが、伊藤達也氏です。このように日本でも有能な人がいるので、これから変わっていくかもしれません。
●ヨーロッパ型の増税と社会保障の拡大で財政破綻のない国へ
一方で、財政問題は大変な問題です。放置しておくと、財政破綻から経済破綻が起きかねません。私は、『日本経済 瀕死の病はこう治せ!』いう本を幻冬舎から出しましたが、次のような提案をしたいと思います。
日本はもはや若くて高度成長する国ではありません。そのような時代は数十年前に終わりました。今ではヨーロッパの北欧諸国と同じような成熟国です。そうであれば、そうした国々のようなやり方もあるのです。それは何か。一つの方法としては、例えば消費税を2、3パーセント一度に上げると、多くの人が驚いて駆け込み需要などが発生しますが、20パーセントになるまで毎年1パーセント必ず上げるようにすれば良いのです。「消費税は20パーセントまで毎年上がるものだ」と思えば、それに合わせて、進学やお稽古事、あるいは結婚の予定を立てることができるでしょう。
現段階で、借金が約1200兆円あります。消費税をこれから20パーセントまで上げていくと仮定しましょう。今10パーセントなので、あと10年ですよね。この20パーセントを20年続けると、1200兆円の税収になります。だから消費税だけで財政赤字はカバーできるのです。
ただ、国民は増税を嫌うので、一人も認めないでしょう。ですので、あと20年かけて生まれてから死ぬまでの社会保障を、今の3倍ほど改善する必要があります。この改革は、千数百兆円かければできます。すると、国家百年の計といいますが、50年の計で、日本は完全に生まれてから死ぬまで安心で、財政破綻もない国になることができます。
命懸けで国民に問えば納得してもらえるのではないでしょうか。ヨーロッパ諸国は、そのように変化している...