●沖縄問題を考える上で理解しなければいけないこと
みなさん、こんにちは。島田でございます。今日はみなさんと一緒に沖縄の問題を考えてみたいと思います。
沖縄はこのところずっとニュースをにぎわせておりますが、私たちの耳に、目に飛び込んでくるのは、普天間基地を移転するという話です。
ところが、これは17年も前に日本政府がアメリカ政府と合意をした話なのに一向に動かない。それでアメリカは非常にいらだって、防衛戦略を立てにくいということで、ワシントンもかなり日本には疑念を持ち始めている。
日本の中では、今時の安倍政権がなんとか早く17年前の約束を実現したいということで動いているのですが、沖縄の人たちがもう手を振り上げて下ろさない、辺野古への移転は許さないと、こういうことになっているわけです。
そこでみなさんは、一体どうなっているのかとお考えだと思います。この話、実は沖縄という地域が日本の中で歴史的にどんな扱いをされてきたのか、どんな役割を果たしてきたのかということをある程度分かっていないと、今の動きはまったく分からないと思うのです。
それから、アメリカはもう少しで堪忍袋の緒が切れそうになっているのですが、これもやはりもう少し広い視野でアメリカが太平洋で戦後ずっとどのような役割を果たそうとしてきたかということを理解しないと分からない。その中で、沖縄には嘉手納空軍基地という大きな基地があるのですが、これは成田空港の4倍の広さを持っています。実はアメリカ空軍の世界最大の基地なのです。なぜそんなものをアメリカが沖縄に置いているのかということの意味を、大げさに言うとその世界史的な意味を分かっていないと、なんのことだか分からない。おそらく沖縄の過去の歴史、日本における沖縄の扱い方の歴史、あるいはアメリカの太平洋国家としての、まさに今この瞬間でもそうなのですが、そういうものがどういう意味を持っているのかということを分からないと、今日、普天間基地の移転ということに象徴される、沖縄問題の入り組んだ、こんがらがった糸の塊のようになったものは分からないわけです。今日はみなさんとご一緒に、それが全部分かるように少し整理をしてみたいと思います。この私の講義に1時間ぐらいお付き合いいただけたら、「そうだったのか」「よく分かった」ということになっていただきたいと思います。
●普天間基地移転問題の発端はアメリカ兵の事件
それでは、まず糸を解きほぐし始めましょう。
この普天間基地の移転というのは一体どういうことだったのかと言うと、今から17年前に起きた沖縄での事件がありました。それは、沖縄というのは細長いさつまいものような形の島ですけれども、その真ん中あたりの西海岸に、金の武士で金武と書いて沖縄読みでは金武町(キンチョウ)というのですが、そこにキャンプ・ハンセンという非常に大きな海兵隊の基地があり、そこの町で12歳の少女が3人のアメリカ兵にレイプされてしまったのです。
沖縄の人たちは、いたいけな少女ですから、そんなことになったとわかるとお嫁にも行けないし、大変なのでしばらく伏せておこうと思ったのですが、沖縄の人たちの間にその話がもれて、「けしからん」「これはとんでもない」ということで、だんだん大きな騒ぎになり、10万人集会というものも行われるようになりました。
●沖縄県民を落胆させた村山政権
時の政権は村山政権という、社会党の党首だった方が総理大臣になっていました。村山さんという人は反基地闘争の旗手だった人で、「基地をなくせ」と叫んでいるその人が首相になっているわけですから、その中でいたいけな少女がレイプされたので、沖縄の人たちは当然、村山さんがこれを受け止めて、アメリカ軍に強烈な交渉をしてくれるだろうと思い首相官邸に押しかけました。しかし村山さんは会ってくれないのです。河野さんという自民党の方が、社会党と自民党の連合政権で重要な位置におられたのですけれども、この人もなかなか会ってくれないということで、沖縄県民はもう大変落胆をして帰ってきました。
村山さんは社会党の党首ですけれども、社会党は長い間、「自衛隊は憲法違反の存在である」「あんなものはない方がいいのだ」という言い方をしていたのです。
ところが、社会党と自民党の連合政権ができてうれしかったのでしょう。国会で、「よろしいですか、みなさん、自衛隊は合憲です」と言ったのです。村山さんというのは大変眉毛の長いいい人で、卓袱台でも前に置いて煙草でもやっていたらいいおじさんなのですが、総理大臣の器ではない。もうおろおろしてしまったのです。
●アメリカの謝罪の背後にある世界戦略と沖縄の関係
それで沖縄ではどんどん騒ぎが大きくなりまして、20万人集会というものをやりました。...