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コロナ禍で感じたのは日本発の「命の思想」を強調する必要性

コロナ禍で問うべき「転換期の在り方」(6)日本は「命の思想」の国

情報・テキスト
道元
東洋思想の根幹には、「命」というコンセンサスがある。日本には「草木国土悉皆成仏」という言葉があるが、ことごとくみな仏、つまり命のことで、粗略にあつかうことは命を奪うことに等しいと田口氏は説く。道元のいうように、一つひとつのことに真心を込めて取り組むことが日本人の強みであり、西洋発祥のものに対して、日本流に命を吹きかけてやることが、東洋と西洋の知の融合だという。(全7話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:07:25
収録日:2020/07/22
追加日:2020/07/22
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≪全文≫

●東洋思想は命に力点を置く


田口 コロナショックによるもう一つの転換があります。今回、人間に突きつけられたのは、命の危機です。命についてこれほど考えた時期はないのではないかと思います。人と会う際にも、命の危険を考えるために、マスクをつけるなどの予防策を取っています。せっかくここまで命を身近に考えたのであれば、東洋思想との関連性についても考える必要があるでしょう。

 東洋思想の根幹には、命というコンセンサスがあります。イデオロギーや主義主張、宗教の違いは、その下位にある概念です。ですので、東洋思想においては、宗教がイスラム教キリスト教か、政治的主張が社会主義かなどの点には無頓着です。あなたのお好きなように、という世界なのです。

 東洋思想のもとでは、宗教観の違いで戦争が起きることはありません。東洋思想は、イデオロギーや宗教を乗り越えて、人間の最も重要なものとしてコンセンサスが取れるのは、命だといっているのです。命を持ち出すと、どのような宗教やイデオロギーの人でも命は大切だと答えます。ですから日本人は、東洋思想が説いている命の尊重という点を学ぶ必要があります。

 日本の生命観はどれほどのスケールがあるのかというと、それはすごいものがあります「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)」という言葉があります。草木も国土さえもことごとくみな仏なり、つまり命なのだといっているのです。

―― ことごとく仏なのですね。

田口 仏なのです。この世で命を持たないものはない、ということです。粗略にあつかうことは命を奪うことに等しいので、ひとつひとつのものを丁寧に扱わなければならないのです。


●道元禅師の全てのことに丁寧に真心を込めて取り組むという教え


田口 道元禅師は、「人間の生き方の最たるものは、一つひとつを丁寧に真心込めてやることだ」といいました。つまり、修行として毎日を暮らすことが、非常に大切なのです。われわれは命に取り囲まれて生きています。いつも命の大切さを思わなければなりません。生きとし生けるものの世話係として人間がいる、という考え方を絶対に見失ってはいけないのです。

 例えば、料理などでも、日本人は食材を無駄なく用いて、全て食べています。無駄をなくすことを、「よくもちいる」と東洋思想ではいいます。「よくもちいる」とは、漢字で書くと「利用」という字です。そこで、「もったいない」という言葉が出てくるわけです。

 命をいただくわけなので、その命を全て使い切って、「見事に生きたぞ」と魚や肉などにも伝えるという配慮を、日本人は持っているのです。こうした日本の伝統を、積極的に世界中に広めることが、アフターコロナの対策として最も重要なことです。日本発の考え方として、「命の思想」をもっと強調していくべきです。

―― 先生がおっしゃるように道元が日本人の生き方を決めた人ですね。


●西洋発祥のものに対して、日本流に命を吹きかけてやる


田口 一つ一つを丁寧に真心込めて取り組む、それが修行なのだという主張ですね。人生は全て修行なので、ご飯を食べるのも修行なのです。この意味では、外国から伝来した風習の栄養学も非常に重要です。これも必要不可欠ですが、命をいただくという日本伝統の精神や思想が、西洋流の科学と融合すると、非常に有益なものとなるのです。

―― 確かに、今の栄養学の話と道元の話は、非常に分かりやすいですね。これが西洋的思想と東洋的思想を融合させることなのですね。

田口 全てそうなのです。ものづくりや人間の暮らしでも同じことです。これから5Gの世界になって、第四次産業革命の時代となります。それはみな西洋から出てきたものです。西洋発祥のものに対して、日本流に命を吹きかけてやるべきです。これが東洋と西洋の知の融合です。もう一度、日本は「命の思想」の国だという点を意識しなければなりません。
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