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激動の時代に横井小楠が唱えた日本の役割とは

コロナ禍で問うべき「転換期の在り方」(3)「世界の世話係」になれ

情報・テキスト
経済成長を求める動きは、伝統や歴史によって支えられたわれわれの生活を破壊しつつあり、その一つの例が新型コロナウイルスの騒動でもあると田口佳史氏は指摘する。さらに、経済優先、自国第一主義という陽の側面のみを追求する姿勢は、大国のトップに表れている。昔から他人の世話をするという考えを共有してきた日本は、世界に先駆けてその重要性を提唱していくべきである。(全7話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12:39
収録日:2020/05/21
追加日:2020/07/01
キーワード:
≪全文≫

●伝統や歴史の知恵を軽視した経済成長第一主義がもたらした災厄


田口 さらに付け加えるならば、貿易は国家の発展の主要な手段ですが、その際には相手国の国民の幸せも考えなければなりません。関係する人間双方の満足感を考えるべきなのです。ここで問題となってくるのは、地球規模の大天災の回避です。今回のコロナウイルス禍で最も問題だと思ったのは、大森林の急速な開発です。大森林をプランテーションにすることが、南北問題の解決の唯一の方法だと議論されているのですが、大森林や自然をより注意深く見ていく必要があったのです。

 現在コロナウイルスと共生する必要性が叫ばれていますが、コロナウイルスだけではなく、この世には多種多様なウイルスや細菌があるのです。さらに、猛毒を持った蚊や蟻などもいます。先人は自然と共生していて、自然をよく知っていたので、これらを封じ込めるために変に開発してはならないことを知っていました。そのため、それらのものが暮らしている地域を、触ってはならないといって、何ヵ所か地球上に残していました。鬼が出るなどのいい伝えによって、皆がそのルールを守ってきたのです。

 しかし、お金を第一に考える人々は、材木を切って売ればお金になるので、積極的に開発してしまったのです。すると、今まで封じ込めていたウイルスや細菌が、出てきてしまうのです。

 次にそうしたものが封じ込められている地域は永久凍土です。地球温暖化が進み、永久凍土が溶け出すと、多くのウイルスや細菌が出てくるといわれています。その量は、アマゾンの大森林の中に潜んでいるものの比ではないといわれています。

―― 人類の知恵で封じ込めておいたにもかかわらず、わざわざ人間が自分たちでその結界を壊して、封じ込めていたものが表に出てきているのですね。

田口 そうです。大森林が手付かずで残っている理由に注意を向けず、先人の知恵を学ぼうともしないで、お金になるのであれば切れば良いという考えは、経済成長を重視する考え方からきています。経済成長一点張りという考え方では、伝統や文化、自然との共生は軽視され、お金になるかという基準だけで判断することにつながりかねません。私が主張しているのは、経済成長は良いのだが、それは「陽」の側面でしかないので、人間の充実や革新という心の問題、精神的な部分などの「陰」の側面にも気を配って開発する必要があるということなのです。


●良識派の連帯をつくり、「地球のお世話」をしていくべき


田口 さらにこの議論の延長線上には、世界に冠たる大国のトップが最近見せる態度への懸念があります。私が考える大国のトップの最大の役割は、「地球のお世話係」です。

―― なるほど、大国のトップというのは地球のお世話係なんですね。

田口 そうなのです。大国である代わりに、地球の世話をする係、つまり会合の幹事役のような役割を務める必要があるのです。世話役を務める必要があることは、不文律として共有されていました。

 ところが、最近の大国のトップは自国第一主義です。地球の世話ばかりではなく、他国の世話もしていません。これも陽の追求ばかりに注力しているのです。陰、つまり相手を考えることを放棄している人間が大国のトップに立っている危険性も、天はわれわれ人間に知らせようとしていると思います。

―― 利他の心を持っていない人が、大国のトップなど務められないわけですよね。利他の心を持っているから、回りまわって大国にも恩恵が回ってくるという循環があるわけですね。

田口 そうなのです。この世は循環であって、自分の蒔いた種は必ず自分に返ってきます。良い種を蒔けば、良いものが返ってきます。悪い種も全部自分に返ってくることを承知しなければなりません。

 江戸時代には、このことは子どもでも知っているほどの常識でした。近代科学が進んだこの世の中に、江戸時代には子どもでも知っているようなことを、一顧だにしない世界のトップが次々と出てきています。このことを人間は反省して、地球のお世話という意味で、例えばこの森林はそのまま手付かずに置いておこうとか、ここは人間のために使っても良いなどという判断をする必要がある時代になったのです。

―― 思想と哲学は新しい知恵が求められているというわけですね。

田口 ですから、ここでわれわれが考えなければならないのは、良識派の連帯です。要するに、大国のトップが自国中心主義に走る以上、国家レベルでは地球のお世話という考えは成り立たなくなってきているのです。したがって、そのような考えを持つ人間のいわば良識派の連帯をつくり、それらの人々が地球のお世話をしていくべきです。

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