●第3の因子は、前向きと楽観の「なんとかなる因子」
3つ目は、「前向きと楽観の因子」、あるいは「なんとかなる因子」です。自己受容できている人は幸せと書いてありますが、自己受容とは自分の長所も短所も全てひっくるめて好きであることを指します。自己受容できていない人は、自分の短所が気に入らない、あるいは自分の長所も認めず、「自分なんて駄目だ」を思ってしまう人です。
自己受容と幸せの間の相関関係も非常に強く、特に「なんとかなる因子」との相関が高いのです。自分の苦手な部分や欠点も好きであれば、人と助け合えばなんとかなる、自分は欠点はあるけどなんとかなると思うし、実際になんとかなることも多いですよね。
具体的な例を挙げると、例えば私には気が利かないという欠点があります。「もう少しきちんとお礼をいっておけばよかった」などと思うことが多いのです。その理由を考えると、一つのことに集中しすぎてしまうということがあります。気が利かないのは欠点ですが、裏を返せば集中力が高すぎて視野が狭くなりがちなのですね。その分、気配り目配りができなくなっているのだと思います。
それでも、気が利かないことによって被る不利益は誠実に謝れば対処できます。集中力が高いことによるメリットもあるので、「みんな、気がつかなくてごめん」といえばいいと思うと、なんとかなるものです。「気が利かないからダメだ、他のことにも気をつけよう」と思ってしまうと、集中力というメリットまで弱くなってしまうではないですか。
どんな欠点にも必ず裏側があります。逆に気配りができる人は、集中力が足りないかもしれません。集中力がないことが欠点だと思っている人は、集中力が足りない代わりに、メンバーに細かな気配りすることができる優しさを持っているかもしれません。例えば、時間を守れない人もいますが、同時にとてもおおらかな人で、細かいことは気にしない人かもしれません。そういう人は、イノベーションを起こせるかもしれません。
全ての長所と短所は表裏一体なので、この前向きと楽観の因子とあるように、全て楽観的に、前向きに、ポジティブに捉えるといいのです。そうすると、楽観的になって、なんとかなるという気持ちになります。2つ目の、楽観的でポジティブという点は、このことを指しています。
●細かいことを気にして自信を失うなら、やめたほうがいい
3つ目は、細かいことを気にしすぎないことです。細かいことを気にしてもいいのです。細かいことを気にするのは、実は日本人の美徳です。自動車を造るとき、寿司や着物を作るとき、おもてなしをするとき、あらゆることをするときに、日本人は細かいことに気を配って、きちんとつくるということで、世界中で尊敬されています。これは素晴らしいことです。
これは良いことですが、細かいことを気にしすぎて、自信を失うようであればやめたほうがいいでしょう。「どうせ私なんか」というネガティブ思考に陥って、個性も、特徴も、強みもない私なんか駄目だという人がいます。しかし、そういう人も、必ずよく見れば個性も、強みも、長所もあるはずなのです。ぜひ、人の長所を見つけて、ネガティブにならずにポジティブに「なんとかなるよ」と「やってみよう」と思いながら、日々を過ごしていただければいいと思います。
●日本人の心配性は遺伝子にも規定されている
この側面は、イノベーションに関係しています。イノベーションとは、ゼロから新しいことをつくり出すことを指します。革新的イノベーションは特に、「なんとかなる因子」と強く関係しています。ハイリスク・ハイリターン、つまり成功すると大きいリターンがあるが、でも失敗する確率が高いというものです。皆さん、これに取り組みますか? 怖いですよね。だから、見送るというのは、後ろ向きで悲観的で、なんともならないということですが、そこを「なんとかなる」と思って取り組むと、イノベーションが起きて新しいものが生まれる可能性が高まるのです。ですので、このような気持ちをもう少し持つと、日本人ももっと幸せになれるのです。
実は、日本人は心配性、細かいことが気になりすぎる性格になりやすい遺伝子を持っているという、衝撃的な研究結果があります。
こちらの図の横軸には5-HTTLPRと書いてあります。これはセロトニントランスポーターSS型と呼ばれているもので、セロトニンの出にくい遺伝子を持っている人の割合を横軸に示しています。これを見ると、日本人の8割はセロトニンが出にくい遺伝子を持っています。
その結果、心配性(anxious)になります。左側には、セロトニントランスポーターSS型を持っている人の割合が、2割から3割と...