「近代日本をつくった男、渋沢栄一」の素顔
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
渋沢栄一が生涯変えなかった肩書は「養育院院長」
「近代日本をつくった男、渋沢栄一」の素顔(4)養老院院長と護民官意識
「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一だが、実は福祉の世界でも日本の近代を切り拓いた功績者でもあった。高齢者福祉の嚆矢となった「養育院院長」として生涯を尽くした彼の胸にあったのは、とにかく困った人を何とかしたいという「護民官意識」である。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分20秒
収録日:2019年4月24日
追加日:2021年2月17日
≪全文≫

●経済活動を支えたヒューマニズム


── その静岡でつくった商法会所ですが。

童門 はい。

── その商法会所もそうですし、今の第一銀行もそうですけれども、渋沢としては、要するにお金をうまく回していくことで、資金に困っているが力のある人にお金を融通して、彼らが事業を起こして儲けるようになってくれば、それが返ってくるし、利子も返ってくる。経済のまさに中核にあるような機能で、本来、資本主義の社会ではこれこそ非常に重要な機能だと思いますが、フランスで見てきたこれをそのままやったわけですね。

童門 そうです。

── ある意味では、自分自身がお金がなくて助けられたことを、日本でもう一回やろうと。

童門 おっしゃる通りです。自分が、困った立場、どうしようか苦しむ立場に置かれたから、むしろその経験を一つの武器として生かして、日本に持ち込んで、同じような思いをする人を救わなきゃいけないという。ヒューマニズムでしょうね。

 その後の渋沢さんは、最初にお話したように、あなたが今言われたような趣旨で企業を立ち上げることはもう大賛成で、企業によって国ではやれないいろんな補完事業がありますよね。今でいうガード(警備)の仕事とか、昔の逓信省などがやるような、流通(物流)の仕事。これらは今はもう全く民間で機能しているでしょ。だから、そういうことじゃないかな。政府がやらなきゃいけないんだけれども、まだやれない、あるいは永遠に金の関係でやれない事業を、民間がやってくれるなら大いにそれを応援しようということかなと。

 そうして、500だか600だか、会社を立ち上げるわけです。その中には、うまくいかなかったものもあるかとも思うんですけどね。ただ、そのために渋沢さん、責任を負って、必ずその株を自分でも買っています。だからその保証はしているんですね。


●生涯で唯一変わらなかった肩書「養育院院長」


童門 渋沢さんは、名刺の肩書が始終変わります。

── はい。

童門 だけど、変わらないで、ずっと残っていた肩書が1つありましてね。それが「養育院院長」という肩書なんです。

── 養育院というと、孤児の福祉施設でしょうか。

童門 いえ、老人(年寄り)で身寄りのない人を収容するんですね。それから、今言われた孤児院も同時につくるんですよ。それもいきさつがあります。江戸時代、徳川八代将軍・吉宗は割合に民...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤