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グローバル・リーダーにとって必須の「三つの条件」

ゴーン改革の反省とグローバル経営の教訓(8)リーダーの条件

西川廣人
日産自動車株式会社 元代表執行役社長兼CEO
情報・テキスト
日本における外国人のグローバル人材としての要件とは何だろう。そうした人材を育てるために必要な3か条を西川氏が語る。一方で、植民地経営をしたことがある国のビジネスマンと、そうでない国のビジネスマンとでは、自ずと経営のやり方が違ってくる部分もあるのだろうか。そして、そのような歴史・文化背景までを考えたとき、日本企業は、グローバル・リーダーとして、どのような人材を求めるべきなのだろうか。(全9話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:07:53
収録日:2020/11/10
追加日:2021/06/21
≪全文≫

●「超一流の人材」を迎えるためのフォーメーション


―― 日本における外国人のグローバル人材としての要件として、どんなことが考えられるでしょうか。たとえば日産には(パトリック・)ペラタ氏のように一級品のフランス人が来られましたね。

西川 要するに、先ほど言ったようなトップ層の構成がなぜ重要かというと、グローバルな会社を経営する以上は、それなりの一級品が来なくてはいけないからです。

―― そうでしょうね。

西川 その一級品の人たち、これはアメリカ人であろうがフランス人であろうが、中国人やスペイン人やメキシコ人であろうが、やはりできれば超一流、悪くても一流の人材を持ってこられるような場でなくてはいけない。そこにはもちろん処遇というのもあるわけですけれども、処遇だけではなく、仕事をしていくフォーメーションが重要です。

 「ここは日本人が日本のやり方で仕切っているので、あなたはこうやってください」ということでは、絶対に二流しか来ません。

 日本の会社だから、当然日本で上場しているし、日本流のことをやってもらうのだけれども、経営としてはこういう結果を出してもらわなければいけない。そのためにこんなフォーメーションでやる。あなたも当然、主体性をもってやるのだけれども、そのときに「アメリカではこうだったから、こうやるぞ」ということでは駄目です、と。

 要するにこの組織、ここの事業とお客様の層を相手にして仕事をするときに、どうすればいいのかということを真剣に悩んでくれ。悩んだ結果、みんなそれぞれの仕事のしかた、それぞれの見方があると思う。これらを尊重しながら、日産流の仕事のしかたを苦労して編み出していく。そういう仕事をここでやるという覚悟があるのだったら来てくれ、と。そういうことでしょうね、きっと。

―― それは分かりやすいですね、本当にそうです。

西川 結果論で見ると、当時ルノーから来た人材は、ルノーで仕事をしているよりも日産の再生をやったほうが舞台が大きいですから、そういう意味では、ルノーのなかでピカピカの若手が来たということだと思うのですね。だから、相当レベルが高かったです。

―― 40代前半でナンバー2になった彼(パトリック・ペラタ氏)などはすごいわけですよね。ピカピカでした。

西川 彼も今は年を取りましたけれど、いまだに自動車業界を語らせたらピカイチのアナリストです。かつ、人間としても信頼できます。ああいう人間と仕事ができたということは、私にとっても大きな啓発をされた要因の一つでもあります。私は彼には言いませんけれども、彼のいいところは学びたいと思っています。それくらいの人たちがお互いをリスペクトしてやっていると、強いグローバル・チームができるのです。


●グローバルオペレーションができるリーダーに求められること


 要するに、(リーダーをつくっていく上では)3つのことがあります。(1)クロスファンクションは非常に大事である。(2)できるだけ早くビジネスを回す経験をするべきで、失敗も成功もする。これに加えて、さっきから資質として言っている部分として、(3)リーダーとしての強さとエンパシーというか、違いを認めて相手をリスペクトするという両方を兼ね備えた人材になるということですね。そういうことだと思います。

―― これも結果から見てのことですけれども、やはり植民地を束ねていた大英帝国なりフランスなりの人たちのやりかたのほうが、アメリカ流よりも統治のしかたがうまいのでしょうか。出てくる人たちが違うのではないでしょうか。

西川 持っているスタンスとして、それはあると思います。ただ、そういうなかにいい人がいます。「統治だけして、自分は部屋から出てこない」ような人は絶対に受け入れられないですね。ところが、「そういう統治スタイルも知っているけれども、自分は(部屋から)出ていく。これだけではない」と、自分は現場に行ってやる人もいる。統治を行う部分、距離をもってマネージをするポイントのようなものが文化的に分かっていても、「自分は現場に行く」ということをやっている人が強いです。

 そういう意味では、ペラタ氏などは、そういう人たちのいい部分と悪い部分を横目で見て、十分分かっているでしょう。それで自分は、アロガントな(arrogant: 横柄な、尊大な)部分は脇に置いて、マネジメントのポイントだけを取る。後は「自分はフロアに入ってやるのだ」という姿勢をもってやっているから、リーダーとして皆さんから尊敬されるのでしょうね。きっとそうだと思います。

―― なるほど、分かりやすいお話です。でも、アメリカはやはりマーケットが大きいし、大部分の人たちはあの国のなかで豊かになりたいと考えています。

西川 全体から見ても、アメリカはマーケットが大きい。これは...
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