●ベンチャーをめぐる日米中欧の差とは?
神藏 あと、日本のマーケットは、世界的に見るとどんどん縮んでいますよね。このなかでベンチャー企業がいくらやっても、ある程度の売上サイズにしかならない。だから、日本が再復活するためには、大企業がもう1回、再活性化できない限り難しい。ここはもう完全にサプライチェーンが違いますよね。
西川 人材の流通を見ていたとき、日本発の大きな会社がグローバルなサプライチェーンのなかである地位を占めていますから、それなりに仕事は国際的ですし、そのなかでキャリアを積んでいる日本人も海外のことはよく知っている。しかし、その中の人の動きが残念ながら、先ほど申し上げたように機能軸中心や経験中心なので、事業を運営するコンピテンシー(competency: 高い成果につながる行動特性)は、あまりリッチではないというわけです。
一方で、言われた通り、起業家精神のある皆さんがいろんな事業を立ち上げてやっておられるけれども、これは日本で立ち上げると相手は日本なので、マーケットは小さい。
世界中そうなのかと思ってみると、アメリカのベンチャーというのは、ベンチャーが大きくなってアップルになったりしているわけです。結局、彼らは枡(ます)が大きい。そこで立ち上げて、アメリカを相手にすることで大きな規模になれるから、そこから先、世界に打って出るのは簡単だったり、その過程でグローバルスタンダードの一部になっていたり、というようなことが起きるわけです。
人の動きを見るときにも、アメリカのなかでは、どちらかというと「そういう皆さんがどう動くか、どう出世するか」が中心になって、「トラディショナルな産業のなかでどう人が動くか」はあまり大きな問題にならない。むしろ、新しい産業やベンチャーで大きな流れができて、トラディショナルな産業もそちらに影響される状態になりつつあります。
ところが、日本の場合は逆で、トラディショナルな産業が従来型で動いているので、ベンチャー流の人のあり方や経験のしかたがなかなか日本全体を動かすような大きなトレンドの変化にならない。こっちはこっち、あっちはあっちという状態になりやすい。
これを見ると、アメリカもそうだし、これから中国も相手が大きいですから、ベンチャーの皆さんというのは同じように、かなり主流になっていく。それからヨーロッパというのは...