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中国の強制収容所で行われている洗脳プログラムとは

中国共産党と人権問題(4)洗脳プログラムと弾圧と腐敗

橋爪大三郎
社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授
概要・テキスト
中国が国際社会から批判される大きな要因の一つになっているのが、新疆ウイグル自治区にある強制収容施設の存在である。ここまで大きく取り上げられながら、なぜ中国は民族弾圧を止めようとしないのか。中国共産党が発展してきた歴史的経緯から明らかにする。(全6話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:34
収録日:2021/10/15
追加日:2022/01/14
タグ:
≪全文≫

●強制収容所で行われている洗脳プログラム


―― 最初の10分講義では(中国に)非常に強制的な収容所などがあるという話でしたが、例えば自国語や自国の文化を捨てなかった人をそういうところに入れてしまっているということですね。

橋爪 はい。なぜ暴行や虐殺が起こるかというと、これは心理的なダメージを与えるためです。

 例えば、現状に不満な人が100人いるとして、その人たちを無理やり連れてきて集団生活をさせて、「共産党、ありがとう」と大きな声で言わせるなど、いろいろなことをしています。そこにいた100人の内、3人でも、5人でも、10人でもいいのですが、適当に殴りつけたり独房に入れたりして、拷問します。本人に責任がなくてもいいのです。そして「ぎゃー」という声が他の人に聞こえる。中には運が悪くというか、意図的かどうかは分かりませんが殺されてしまう人もいます。そうすると、行方不明になって、どこかに埋められてしまったりします。

 それは、そうされていない残りの99人や95人の人たちにとって、とても強いプレッシャーになります。「もし今ここで抗議の声を上げたら、私もあのようになるに違いない。そうやって惨めにむごたらしく命を落としたとしても、家族は悲しみ、誰も喜ばない。自分のためにもならない。それなら大人しくして、命を長らえるしかないじゃないか」と誰もが考えるようになります。

 そして、初めのうちは内心の自由を守って、表面は大人しくするつもりです。そうすると、「君は最近なかなか大人しくなった。では中国共産党の素晴らしいところを原稿用紙10枚で書いてごらん」となって、「素晴らしいです」と1行書いただけでは怒られるので、素晴らしいところをいろいろ考えて書いていかないといけません。さらに、「よくできたな。では、次は20枚書いてごらん」ということをどんどんやったとすると、そういうことをやっている自分を認めないといけないので、だんだん頭の中が入れ替わっていくのです。

 これは洗脳プログラムですが、そういうことに2、3年かかります。それぐらいしたときには、自分が洗脳されたことを自分で拒否して(否定して)、「もとからこういう人でした」となる。そこから出ていかせるのがプログラムの目的であり、そういうことをやっているのです。そのため、拷問や虐殺などはこのプログラムの一部で、意図的にやっていることです。その他に...
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