鎌倉殿と北条氏
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
貴種流離譚――源頼朝と八重が織りなす悲恋の物語とは
鎌倉殿と北条氏(2)流人の恋と貴種流離譚〈上〉
坂井孝一(創価大学文学部教授/博士(文学))
執権北条氏の始まりは、流人・源頼朝の恋多き資質と関係が深い。最初の事件は伊東祐親の末娘・八重との悲恋であり、その別れが北条政子との出会いへとつながっていく。そこには「貴種流離譚」という物語の型が重なるため、事実は見えにくくなっているが、貴種として京都で養われた頼朝の色好みが関東武士の常識を揺るがせたことがうかがえる。(全9話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分57秒
収録日:2021年11月8日
追加日:2022年1月16日
≪全文≫

●伊豆時代に起こした源頼朝の女性問題


―― 前回、北条政子の力が非常に大きかったというお話をうかがいました。源頼朝にとっても政子と結婚した意味は大きかったでしょうが、それ以前の頼朝のいわゆる女性問題がちょっと気がかりになっています。

 そもそも北条のところに来た時も、初めから政子と結婚しに来たのではなく、女性問題があって来たということでした。頼朝をめぐる女性問題ないし女性関係についてお聞きしたいと思いますが、最初はどういう経緯なのでしょうか。

坂井 はい。伊東祐親には娘が4人いるという話が、『曽我物語』や『平家物語』などの軍記物語に載っています。

―― 前回のお話にあった、もともと頼朝が配流先として行ったところですね。

坂井 流罪に処された土地ですね。今の伊東温泉のところです。

 伊東氏は平家の家人ですから、平家が隆盛を極めてくるにつれて非常に大きな力を持つようになっていきます。そこに4人の娘がいて、長女が北条時政の妻になっていたらしいのです。そして2番目から4番目と続く中、2番目も3番目もそれぞれ東国武士の妻になっています。

 ここで『曽我物語』や『平家物語』などの軍記物語について申し上げると、これらは流人時代の頼朝のことを書いたほぼ唯一の史料です。ところが、軍記物語は文学作品ですから、文学的脚色も入っているので、歴史的には注意して使わなければいけないということになります。

 それらによると、祐親の三女という記述が出てきますが、これはおそらく時政の妻になっていた長女を抜かしたためと思われます。本来なら次女、三女、四女がいて、そのうち次女と三女はすでに東国武士の妻になっている。そして、一番末の娘が相当な美しさを持っていた女性らしく、頼朝が思いを寄せてしまい、二人は結びつくのです。しかし、それは親の祐親がいない間のことだったという話になっています。

―― なるほど。


●監視者・伊東祐親の留守中に末娘と結びついた源頼朝


坂井 祐親は「大番役」で都に上っていました。当時、地方の武士たちは交代で都に上り、天皇や院の御所の警備をしなければなりませんでした。それも3年間、往復の費用も滞在費用も自腹を切って、つまり自費で行うことを課されていたのが平安時代末期という時代でした。そのため、祐親は3年間本拠地を留守にします。その間に頼朝は親の目を盗み、美しかった末娘...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保