鎌倉殿と北条氏
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藤原定家『明月記』にも出てくる「和田合戦」とは何か
鎌倉殿と北条氏(8)御家人同士の主導権争いと和田合戦
歴史と社会
坂井孝一(創価大学文学部教授/博士(文学))
「承久の乱」という大きな歴史の流れに向かう一方、鎌倉幕府内部では北条氏が御家人の中心を占めるための地域紛争が連続していた。梶原景時、畠山重忠などの滅亡後、鎌倉幕府にとっても北条氏にとっても極めて重要な争いとなったのは「和田合戦」である。都にまで影響を与えたこの乱は藤原定家の『明月記』にも記され、「官軍対賊軍」の構図で描かれている。(全9話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分21秒
収録日:2021年11月8日
追加日:2022年2月27日
≪全文≫

●源頼朝の懐刀だった梶原景時の滅亡


―― (承久の乱から北条政権確立に向かう)大きな流れがある一方、鎌倉幕府の内部でも抗争があります。これまでに源頼家を支えるための13人が選ばれたという話がありましたが、そのメンバーが次々と粛清されていくことになります。

 頼家の最もそばについていた比企能員が、頼家が危篤になったときに立ち上がろうとして倒されてしまう「比企の乱」のお話もありました。これ以外の人たちも、それぞれに倒されていく過程があると思うのですが、これらはどういう理由で起きてくるのでしょうか。

坂井 最初に粛清というか、御家人同士の抗争で殺されたのは梶原景時です。景時は源頼朝の懐刀の役割をずっと担っていました。頼朝は当然、嫡子の頼家のもとで源氏を発展させようとしていましたから、景時は頼朝の遺志を継ぎ、頼家に近い立場を取っていました。ただ、この人は頭はいいのですが、性格が悪かったのか、人望がなさすぎました。それで、北条氏や比企氏など誰かの主導ということではなく、66名におよぶ御家人たちから糾弾されてしまいます。

―― なるほど。

坂井 これは、景時がよほど皆から憎まれていたということですね。

―― そうですね。

坂井 ですから、これは抗争というよりは、頼朝という支えがなくなって景時が自分の立場を失ってしまったことの現れだったと考えられます。

―― (頼朝在世時の他の御家人たちの)恨みが噴出したということですね。

坂井 そうですね。


●単なる地域紛争も北条氏にとってはライバルを打倒する大事な戦い


坂井 景時の滅亡は、この後、鎌倉幕府で起こってくる御家人の間の抗争の中では割と特殊なことです。

 北条氏は景時以外にも、自分たちの権力を得るためにいくつかの御家人たちをつぶしていきます。「族滅」(一族滅亡のこと)という言葉がよく使われます。ただ、一族滅亡といっても、女性や子どもまで殺してしまうわけではありません。主流の者たちだけが殺されてしまうのですが、歴史学では「族滅」といわれます。

 比企の乱とその後の畠山重忠、北条時政自身、さらに和田義盛という4つほどが大きな抗争でした。「血で血を洗う争い」などと激しい言い方がされますが、私にいわせると、これは日本全国の視点でみれば「地域紛争」にすぎません。鎌倉で地域紛争が起こっている時も、全国的にはなんら大きな波...

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