鎌倉殿と北条氏
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
源実朝の悲劇で誕生した尼将軍と東国武士による幕府政権
鎌倉殿と北条氏(7)源実朝から北条政子・義時の時代へ
坂井孝一(創価大学文学部教授/博士(文学))
3代将軍・源実朝は『金塊和歌集』を編んだ天才歌人として名高いなど文化的イメージが強いだけに「北条氏の傀儡だろう」という説が唱えられたが、事実はそうではなかった。実朝は「将軍親裁」を実行し、それを支えたのが執権・北条義時であった。実朝は後継者に恵まれなかったため後鳥羽院との関係を利用して「親王将軍」を構想するが、右大臣拝賀の日に悲劇は訪れた。(全9話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分07秒
収録日:2021年11月8日
追加日:2022年2月20日
≪全文≫

●北条氏の傀儡ではなく、「将軍親裁」を実行する源実朝


坂井 源実朝は源頼家と対照的で、非常に文化的・平和主義的なところの強い人でしたから、北条政子と諍いを起こすこともあまりありませんでした。さらに朝廷との関係もどんどんよくしていきます。

 実朝に対しては「北条氏の傀儡だろう」などといわれたりしますが、実際には大きな間違いです。北条時政が権力を握っていた当時、実朝はまだ14歳ぐらいでした。その頃ならともかく、将軍家政所を開けるようになった18歳以降を見ていくと、「将軍親裁」といわれるように直接政治的な権力を握って、政策を実行に移していきます。

 「将軍家政所下文」というものも出されていますし、その前には「袖判下文」というものを出しています。これは源頼朝と全く同じで、父・頼朝も「将軍家政所下文」「袖判下文」を出しています。

 論者によっては、「それは単にハンコを捺すだけでしょう。内容としては北条氏が執り行っているのだから、それでは傀儡だ」と言いますが、では同じ形式のものを出した頼朝も同じだったのか、ということです。頼朝は政所を通じて自分の考えを伝えて行わせていたが、実朝は傀儡で単にハンコを捺していただけというのは論理的に矛盾があります(実際にはハンコも本人が捺すわけではありませんが)。

 実朝の場合、「将軍家政所下文」はもちろんのこと、それ以外にも「このような命令を下した」という事例がいくつも『吾妻鏡』の中に載っています。ですから、彼が権力を持たない傀儡だったなどということは、まずあり得ないのです。

 そもそも(実朝は)義時たちをも含めた御家人たちの主君であり、頼朝の子どもですから、この時期にそう簡単に傀儡化することなどできません。

 実朝の場合、非常に特徴的なのは、当時朝廷の最高権力者である後鳥羽院から「実朝」という元服後の名前をもらっていることです。また、御台所(正妻)としても後鳥羽院のいとこをもらいました。これらを考え合わせると、非常に強い権力を持つ後鳥羽院との関係、すなわち朝廷との関係をよくするには、実朝を立てるしかありません。

 そのような中、実朝はどんどんとリーダーシップを発揮していき、それを義時が支えていったということです。


●執権として源実朝の考えを実行する役割を担った北条義時


坂井 ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦