鎌倉殿と北条氏
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源実朝の悲劇で誕生した尼将軍と東国武士による幕府政権
鎌倉殿と北条氏(7)源実朝から北条政子・義時の時代へ
坂井孝一(創価大学文学部人間学科 教授)
3代将軍・源実朝は『金塊和歌集』を編んだ天才歌人として名高いなど文化的イメージが強いだけに「北条氏の傀儡だろう」という説が唱えられたが、事実はそうではなかった。実朝は「将軍親裁」を実行し、それを支えたのが執権・北条義時であった。実朝は後継者に恵まれなかったため後鳥羽院との関係を利用して「親王将軍」を構想するが、右大臣拝賀の日に悲劇は訪れた。(全9話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分07秒
収録日:2021年11月8日
追加日:2022年2月20日
≪全文≫

●北条氏の傀儡ではなく、「将軍親裁」を実行する源実朝


坂井 源実朝は源頼家と対照的で、非常に文化的・平和主義的なところの強い人でしたから、北条政子と諍いを起こすこともあまりありませんでした。さらに朝廷との関係もどんどんよくしていきます。

 実朝に対しては「北条氏の傀儡だろう」などといわれたりしますが、実際には大きな間違いです。北条時政が権力を握っていた当時、実朝はまだ14歳ぐらいでした。その頃ならともかく、将軍家政所を開けるようになった18歳以降を見ていくと、「将軍親裁」といわれるように直接政治的な権力を握って、政策を実行に移していきます。

 「将軍家政所下文」というものも出されていますし、その前には「袖判下文」というものを出しています。これは源頼朝と全く同じで、父・頼朝も「将軍家政所下文」「袖判下文」を出しています。

 論者によっては、「それは単にハンコを捺すだけでしょう。内容としては北条氏が執り行っているのだから、それでは傀儡だ」と言いますが、では同じ形式のものを出した頼朝も同じだったのか、ということです。頼朝は政所を通じて自分の考えを伝えて行わせていたが、実朝は傀儡で単にハンコを捺していただけというのは論理的に矛盾があります(実際にはハンコも本人が捺すわけではありませんが)。

 実朝の場合、「将軍家政所下文」はもちろんのこと、それ以外にも「このような命令を下した」という事例がいくつも『吾妻鏡』の中に載っています。ですから、彼が権力を持たない傀儡だったなどということは、まずあり得ないのです。

 そもそも(実朝は)義時たちをも含めた御家人たちの主君であり、頼朝の子どもですから、この時期にそう簡単に傀儡化することなどできません。

 実朝の場合、非常に特徴的なのは、当時朝廷の最高権力者である後鳥羽院から「実朝」という元服後の名前をもらっていることです。また、御台所(正妻)としても後鳥羽院のいとこをもらいました。これらを考え合わせると、非常に強い権力を持つ後鳥羽院との関係、すなわち朝廷との関係をよくするには、実朝を立てるしかありません。

 そのような中、実朝はどんどんとリーダーシップを発揮していき、それを義時が支えていったということです。


●執権として源実朝の考えを実行する役割を担った北条義時


坂井 ...

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