鎌倉殿と北条氏
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
2代将軍・源頼家と「比企の乱」…政子の苦渋の決断とは
鎌倉殿と北条氏(6)源頼家と母・北条政子の関係と悲運
坂井孝一(創価大学文学部教授/博士(文学))
『吾妻鏡』によると、北条政子は息子である2代将軍・源頼家に対して冷酷な母だったとされるが、はたしてそうなのか。また近年、「鎌倉殿の13人」による合議制は頼家の将軍権力を補佐する制度だと考えられるようになったことなどもあり、『吾妻鏡』という史料に対するこれまでの見方を見直す必要がある。今回はその点も踏まえて、鎌倉幕府誕生の経緯を追いながら、源頼朝の思いとともに頼家と政子の実像について考えていく。(全9話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分19秒
収録日:2021年11月8日
追加日:2022年2月13日
≪全文≫

●源頼朝は描いていた死後の構想


―― もう一面、母として北条政子を見た場合、かなり厳しかったといえるでしょうか。源頼朝との間には息子が二人、源頼家と源実朝が生まれますが、二人とも非業の死を遂げることになります。

 このあたりは受け入れ方次第かと思いますが、政子がどのようにしてそういう局面に臨んでいくのか、ということについてはいかがでしょうか。

坂井 頼朝が遺言を残さず急死してしまったことが、一つの大きなポイントになりますね。

 最晩年の頼朝は、自分が死んだ後の方向性をある程度構想していました。例えば、大姫を後鳥羽天皇のお后にしようと画策したりします。これは、藤原氏などが行っていた「外戚」になることを目指しているのですが、貴種である頼朝はそういう考え方をします。東国生まれ・東国育ちの東国武士たちとは、根本的に考え方の違うところがあります。

 また、頼朝は普通の権力者と同じように、自分の地位は血筋で継がせようということも強烈に考えていたと思います。そこで頼家を嫡子として御家人たちに認めさせるための手をいくつも打っています。さらに、その次の代は自分の孫(頼家の子ども)に継がせるということまで、おそらく想定していただろうと考えられます。

 そのためには、頼家が子どもをつくらないといけない。頼朝が亡くなった時、頼家は18歳ですが、当時の権力者の息子であれば、その少し前の15~17歳ぐらいになると結婚して子づくりをするのは当たり前でした。そこで頼朝が妻を選びます。自由恋愛の時代ではありませんから、当然、頼朝が選ぶ形になります。


●源頼家には二人の妻と二人の子がいた


坂井 最初に選んだのは、頼家の「乳母夫(後見役)」に指名していた比企能員(よしかず)の娘でした。これはもう本当に身内で固めたような形です。

 ところが、それ以外に加茂重長(かもしげなが)の娘も頼家の妻に選んでいました。この娘は、頼朝の叔父にあたり豪傑として名高い源為朝の孫娘でした。つまり、源氏の一族です。また、父親は源平合戦の最初の頃、激しい戦だった「墨俣(すのまた)の合戦」で戦死してしまっていました。その後は一族の中で育てられてきたらしいですが、頼朝が鎌倉から京に上る中間地点の近くに本拠を持つ武士団の娘でもありました。

 そういうわけで、家系からいっても、鎌倉と京を結ぶ交通路という利点からい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(5)徳は孤ならず
敬天愛人…一人ひとりを大切にしながら宇宙を相手に生きる
田口佳史
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通