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プーチンは「ウクライナなくしてロシアなし」と考えている

ロシアのウクライナ侵攻と中国、イラン(4)プーチンの論理

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
概要・テキスト
山内昌之氏は、プーチンの行動の原点は、1991年のソ連の解体によって、ロシア帝国、あるいはソ連の栄光や威信がピリオドを打ったことに対する「トラウマ」にあるという。大国ロシアの歴史的役割を回復することが自分の仕事だとプーチンは考えているというのだ。それゆえプーチンは、「近い外国」にアメリカやNATOが浸透することは許さない。しかし独裁者の常として、プーチンは「オーバープレイ(強く出過ぎる)」に陥る問題を抱えるのである。(全5話中第4話)
時間:12:31
収録日:2022/02/15
追加日:2022/03/13
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≪全文≫

●ソ連解体の「トラウマ」が、すべての出発点


 皆さん、こんにちは。中東における中国のプレゼンスは、大変目立つ形で進行しております。
 
 いずれにしても、中国とロシアは、イランを陰に陽に助けているという現実があります。これらの2つの大国、ロシアと中国は、中東におけるアメリカの力を弱め、そして危うくさせるパートナーとして、イランを必要としているのです。

 バイデン政権に必要なのは、これに対抗する戦略です。この3つの国に対して戦略性を持たずに譲歩したり、あるいは妥協したりということはないはずですが、戦略というものがアメリカには感じられない。ロシア、中国、イランは、そこに対して、いわば遠慮会釈なく事実上の三国同盟によって切り込んできている。しかも、(中東における)アメリカの最大の同盟国であるサウジアラビアやUAEにさえ、入り込んでいるということです。

 ただ、三国同盟の中で一番脆弱(ぜいじゃく)なのは、やはりイランであることは間違いありません。従って、アメリカはまずイランを、中国から、あるいはロシアから引き離すにはどうしたらいいのかを考えなければならない。それが最大の戦略的な構図になるわけです。少なくとも考えうる選択として、トランプ政権が脱退した「ウィーン最終合意」のJCPOAへの復帰、あるいはその見直しぐらいから始めるという具体的なシナリオが挙げられるでしょう。

 いずれにせよ、三国同盟による中東政策は、大変巧妙にできておりますが、彼らの中東政策や中東への戦略的な接近が、比喩的に「備えあれば憂いなし」だとすれば、バイデン政権や、あるいは、もっとある意味で楽観的な日本政府などが、「備えあれば憂いなし」というよりは、「備えなければ憂いなし」というような状況にならないことを、私としては切に願っている次第です。

 こういう観点からプーチンの現在のウクライナ政策を、もう1回、中東も触れながら考えてみますと、2014年にプーチンクリミアに侵攻した後、当時のアメリカの(民主党政権の)国務長官のケリーは、「21世紀に、19世紀のようにでっち上げた、捏造(ねつぞう)した口実で他国を侵略する振る舞いは許さない」と語っていますが、許さないといってもそういうことには頓着せずにどんどん物事を進めていくのがロシア、とりわけプーチンのやり方です。

 こうしたプーチン、ひいてはロシアのある種の臆...
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