『「甘え」の構造』と現代日本
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
第2話へ進む
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
1971年に出版されてベストセラーとなった土居健郎氏の『「甘え」の構造』。初版の刊行以来、続編や増補版が編まれ、長く読み継がれている名著だが、そのメッセージには「甘え」に対する2つの誤解があるのではないかと與那覇氏は言う。その誤解を解き明かすとともに、本書を読み直す契機となった新型コロナウイルス禍における日本人の振る舞いを解説し、日本人にとって「甘え」とは何か、そして現在の日本社会の捉え方について考えたい。(全7話中第1話)
時間:13分26秒
収録日:2023年3月13日
追加日:2023年5月27日
≪全文≫

●「甘え」から日本人の本質をえぐり出したインパクト


 評論家の與那覇潤です。今回は、土居健郎さんの、ベストセラーにして戦後を代表する日本人論の1冊でもある『「甘え」の構造』を今、読み直すことで見えてくる日本社会の謎ということをテーマにお話しさせていただければ思っております。

 おそらく、一定の年齢以上の方だと名前は御記憶の方が多いのではないかと思うのが、この『「甘え」の構造』という本でして、著者の土居健郎さんの本業は精神科医です。この本は、1971年2月の出版ですから、まだ大学を中心に学生運動が盛んだった70年安保の熱気が残っていた時期に書かれて、大変なベストセラーになっております。

 ですので、私は『平成史―昨日の世界のすべて』(與那覇潤著、文藝春秋)という本で、この1970年から、実は広い意味で言う平成、今に続く時代は始まっていたのではないかと言うときにも、一つのシンボルとしてこの『「甘え」の構造』とあの学生運動の関係に触れたことがありました。

 実際にどれくらいヒットしたかというと、最新版がこちらの表紙なのですが、あまりにもヒットしたので、『続「甘え」の構造』など、著者の土居さんの本業は精神科医であるのに、この後同じ出版社から計5冊くらいの「甘え」がタイトルに入る関連書籍が出ているのです。それくらい大きなインパクトを当時の日本に与えた書物と言って良いのではないかと思います。

 ちなみに土居さんは、1971年の2月にこの『「甘え」の構造』の初版は出るのですが、ちょうどその年に聖路加国際病院から東京大学医学部に移っています。日本での精神医学や精神分析のパイオニアといえる方が書かれた本であるわけです。

 なぜここまで、関連書が5冊以上も出てしまうほどヒットしたのかというと、やはりこの「甘え」をキーワードとして日本人らしさのようなことを切り取ると、すごく日本人のポイントが見えてくるのではないかと思います。


●「甘え」についてだけ日本語で話したイギリス人女性からの示唆


 こういうネーミングの巧さがヒットの大きな要因ではなかったかと思うのですが、なぜ精神科医を本業としていらっしゃる土居さんが、甘えという切り口で日本人を語ってみようと思ったのでしょう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
生成AI「Round 2」への向き合い方(2)ハードで動くCopilot
Microsoft Copilotの革新性…想像がつかない世界に
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治